メディアグランプリ

読書の凄さを3歳児に教えられた話


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記事:荒巻瓶太(ライティング・ゼミ集中コース)
 
 
私には3歳になる息子がいる。
子育て界隈では「魔の2歳児」とか「悪魔の3歳児」という言葉があり、とにかく子育てに苦労して疲弊し、消耗する時期だと言われている。何が苦労の種かというと、話が通じないことがストレスフルなのだ。後で冷静になってみれば、幼児に対して話が通じないなんて当然だよね、と理解できるのだが、当事者はそんな客観視できる心のゆとりなどあるわけもなく、ただひたすら裏切りと絶望と自己嫌悪と戦う毎日なのだ。
でも子育てはそんなにつらいことばかりだろうか? もし本当につらいことしかないのであれば、人間という種族はとうに滅びていただろう。つまりそんな絶望的なつらさを凌駕する喜びが確実に存在している。子供の破壊的にかわいい笑顔やしぐさ、というのも疲れが吹っ飛ぶ瞬間であることは間違いない。しかし私が思うに、「子育ての最大の喜びは、人の成長を目の当たりにできること」だと確信している。もう本当に、1日単位、下手すると時間単位で成長するのだ、子供というやつは。
さっきできなかったことが、親が瞬きしている間に、もうできるようになっている。これは大げさではなく、共感してくれる人も多いだろう。ちょっと目を離した隙に、振り返ったらできるようになっているみたいなミラクルが乱発する。その成長を目の当たりにし、できなかった頃を思い出し噛み締めると、あらら自然と胸の奥から熱いものがこみ上げてしまうのだ。
そう、子供ができてからというもの、圧倒的に感受性が豊かになったし、圧倒的に涙腺が緩くなった。私の知り合いなんて、子供とドラえもんの映画を一緒に観て泣くことを繰り返しているうちに、ドラえもんの映画の宣伝をふと見た時に、一緒に映画館に行くのを想像しただけで涙腺が崩壊するようになってしまったらしい。
 
さてある日、いつものように息子と登園のため手をつないで歩いていた時、息子が不意に立ち止まり「ねえパパ」と顔を上げ、質問を始めた。
「ねえパパ、今日はスモモを3つ食べる?」
息子の唐突な質問に面食らったが、はっ、と質問内容を理解し、私はこう答えた。
「そうだね、今日はスモモじゃなくて、イチゴを4つ食べる日だね」
「そうかぁ、じゃあ次はオレンジを5つ食べる?」
「その通りだね、オレンジを5つ食べたら、その次はパパもママもお仕事お休み、保育園もお休みだね」
「そうかぁ、やったぁ!」
これが何を言っているのか、わかる人とわからない人がはっきり分かれるだろう。これはきっと誰もが一度は目にしたことがある、全世界で3,000万部を発売するベストセラー絵本「はらぺこあおむし」のメインエピソードである。毎日何かを食べてもなかなかおなかがいっぱいにならない主人公のあおむしが、曜日ごとにフルーツを食べていくのだ。
月曜日にリンゴを1つ食べ、火曜日にナシを2つ食べ、水曜日にスモモを3つ食べ、木曜日にイチゴを4つ食べ、金曜日にオレンジを5つ食べる。それでもはらぺこなので、土曜日はいろんなものを食べておなかを壊すのだが、つまり息子が言うところの、今日はスモモを3つ食べる日なのかという確認は「今日は水曜日なのか?」という質問を意図しており、私の回答は別に本当にイチゴを4つ食べるわけではなく「今日は木曜日だよ」と回答をしているのだ。
 
この時私は冷静を装っていたが、実は膝から崩れ落ちそうなほど感動をしていた。
 
うちの3歳児が時間の概念を理解するのはまだ難しいらしく、「今日」は理解できるが「明日」といった未来の概念を理解できておらず、また今日よりも古い出来事は全て「昨日」になってしまっている。そんなレベルの息子が、まさかの「はらぺこあおむし」から曜日感覚を身に着けていたのだ。
絵本の読み聞かせは、最初は本人が求めてくるが、読み聞かせを始めると途中で飽きてしまい、集中力が切れて別のことに興味が移ってしまってハイおしまい、の連続だ。それでも不思議と絵本を読んでくれとせがんでくるのは、かわいい姿でもあり、やるせない気になるものだった。でもどうだ、すべて伝わっていたじゃないか。聞いていないようで、すべて聞いていたじゃないか。
 
時々保育園に行きたくない、とごねる朝がある。それでも最後はちゃんと登園をするのだが、行きたくない理由が実は保育園で何か嫌なことがあったのではないかとか、いじわるされているんじゃないかとか、ぐるぐると悪い思考が回り、登園を促して本当によかったのかと葛藤する時もある。しかし本人に話を聞くと「もっとおうちで遊びたい」というのが一番の理由だった。うちは夫婦共に平日勤務、土日休みの会社員なのだが、親だけでなく、息子にとっても週末が待ち遠しいものだったのだ。
オレンジを5つ食べたら、次の日はママもパパも保育園もお休みで、3人でたくさん一緒に遊べる。それを待ち遠しいと思ってくれている息子。とにかく毎日が成長物語であり、片時も目が離せない。
 
 
 
 
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2020-10-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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