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私は何のために吹くのか?


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:和田清美(ライティング・ゼミ7月開講通信限定コース)
 
 
出掛ける時にマスクを着ける。
それが、この数か月の間に当たり前の生活スタイルになった。
先日、都心の百貨店に立ち寄った時、服飾売り場に色とりどりのマスクが陳列されており、ファッション小物として定着しているのか、と妙に感心してしまった。
 
用途別マスクのバリエーションも増えている。
スポーツ用のマスクは、早い段階で街のあちこちで見かけていたし、7,8月頃から、音楽用のマスクも販売され始めた。
合唱用マスクは、息のしやすさと顎が動かしやすいように、口元に広い空間が取られている。
そうはいっても、管楽器演奏でマスク着用とか無理でしょ、と思っていたら、それ用のマスクが登場していてびっくりした。
マスク以外にも、楽器用の新型コロナウイルス感染予防グッズが続々販売されるらしい。
音楽活動の再開に向けて、音楽業界や関係団体が様々な情報を発信してくれるのが、とても嬉しい。
 
私は、趣味でフルートを吹いている。
中学校の吹奏楽部で始めて、途中止めたり復活したりを繰り返し約30年、演奏活動している。
現在所属するアマチュアオーケストラは、年2回定期演奏会を行っているが、今年3月7月の2回共、コロナ禍で例外なく中止になった。
 
3月の中止は、本番まであと3週間を切った直前の決定だった。
当時は、中止になって残念というより、正直ホッとした。
演者同士の感染も怖いし、観客への感染も怖い。未知のウイルスへの恐怖が大きかった。
 
不要不急の外出を控えて、と繰り返し報道される度に
「あぁ、アマチュアの演奏活動なんて正に不要不急だよな」と思った。
利益を生み出すわけでもない。
ただ音楽が好きで演奏したい人達が集まって、その集まりを聴きに来てくれる家族や友人、楽団のファンがいて。
密に集まっちゃいけない、と言われたらコンサートなんて完全アウトである。
 
社会人音楽愛好家の活動は、練習時間と練習場所の確保が大変だ。
仕事をしていると練習時間は足りないし、楽器によっては練習場所が限られる。
やっと時間と場所が確保できても、疲れていたり気力が無ければ、良い練習にならない。
 
ないない尽くしの中、どうやって音楽に関わる時間を確保するか。
私の場合、さらに、個人的な悩みも加わっている。
ここ数年、自分の吹奏レベルに全く納得がいかず、思うように音が出せていない。
それなのに、練習すべき曲は次々とやってきて、惰性で楽器を続けているだけではなかろうか? と疑問に思うこともあった。
不要不急であるこの活動を、続けていく意味があるのだろうか? と。
 
だから、コロナ禍で演奏活動が止まった3月以降、注意深く自分を観察した。
私にとって楽器を吹くとは何なのだろう?
私は、これからも今まで通り楽器をやっていきたいのだろうか?
自宅で細々と基礎練習を行いながら、考え続けた。
 
私は、決して上手くなければ器用でもない。
だから、演奏会に立つとなると、すごく時間をかけないとならない。
楽譜を渡されたら、音源を探す。
音源を聞きながら譜読みをする。
曲解説を読んで、背景を理解する。
楽器を持って練習を開始する。時間によっては音出しをせずに指だけの練習。
実際の合奏が始まったら、躓いたところを持ち帰って練習。
本番まで、ひたすら練習練習。
合奏で、ダメ出しされる。
コテンパンに怒られることもある。
自分が情けなくて、落ち込んで一週間ほど声に力が入らなかったこともある。
練習をしたのに、本番で失敗して悔しい思いをすることもある。
そんな思いをしてまで、何故、楽器を吹くのか?
 
緊急事態宣言下の自粛期間中、オーケストラの練習も、個人レッスンも無くなり、ただマイペースに一人で楽器を吹く。
ただただルーティーンとして、音を出し続けた。
本番があるから練習する、イベントがないから練習しない、という区別はなく、気の向くままに練習する。ただそれだけだった。それだけで楽しかった。
楽器で出来ることを増やしていく楽しみ、その時間をたっぷり取ることが出来たことは、単純に嬉しかった。
あぁ、私はただただ楽器を楽しく吹きたいんだな、と淡々と実感した。
 
まずは、自分が吹くことを楽しむ。一人で楽しむという原点の先に、教わる楽しさを知るフルートレッスンがある。
さらに数人で吹く楽しさのアンサンブルがあり、さらにその先に合奏があった。
 
人が集まる団に所属していると、色々な問題が浮上してくる。
演奏面で上手くいかない、人間関係や運営上での行き違い。
それでも練習時や本番でピタッと音が合わさった時の嬉しさ、音が広がった時の喜び。
成功や失敗、アクシデント。全部含めて味わえる、本番という非日常が、私にとって楽器を続ける楽しさなのだろう。
自分を表現するための、インプットとアウトプット。
本番の度に何らかの成果を得て、フィードバックを得る。
それを次につなげる。
上達したいという気持ちがなくならない限り、ずっと続いていくのだ。
周りに左右されるのではなく、まず自分がどうしたいのか? どこで吹いていたいのか? それが一番大切なのだと思い至った。
 
旅行や飲食のGO TOが展開されている今でも、音楽活動は縮小、制限されていて、まだ予断を許さない状況だ。
 
そんな中、今月ようやく所属オーケストラの練習が再開する。
社会人の楽団は、学生の部活動と違って、年齢もバックボーンもレベルも様々。
入団も退団も個人の自由意志だ。
そんな中、このコロナ禍で、各人楽器や所属団体について、立ち止まざるを得なかった時間は、とても大きな意味を持つ。
長年続けてきた活動の形が、強制的に中止になったのだ。
今まで通りという訳にはいかないだろう。
メンバーや活動方針が大きく変化するかもしれない。
それに動揺することなく、自粛期間に見つけた問いと答えを大事に持っていたいと思う。
 
今、私はここで吹きたいのか? はい、成長しながら楽しく吹きたい。
 
 
 
 
***
 
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2020-10-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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