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ウニと月面へ行く


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:秋田梨沙(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
あぁ、やっぱりあの時「理系」に行けば良かった。
 
家族で回転寿司をつまみながら、私はずっとぐるぐる後悔をしていた。
何度この後悔をしたかわからない。36年の人生の中で、5本の指に入るくらいの失敗だと思っている。今の文系ど真ん中な生活も不自由ない。けれど、事あるごとにグジグジと浮かび上がってくるのである。
 
あぁ、「理系」に行けば良かった……と。
 
今回のグジグジの理由はハッキリしている。
「13年ぶりに宇宙飛行士を募集!」というニュースを見たからだ。しかも、今回採用されると日本人初の月面ウォーカーになれるかもしれない。かっこよすぎる……。月行きたい。
 
もちろん宇宙飛行士の募集要項には様々な条件があるのだが、その上から2つ目に
「大学(自然科学系)卒業以上である事」
というものがある。具体的には理学部・工学部・医学部・歯学部・薬学部・農学部などがそれにあたる。そう、「文系」では全くお話にならない。
 
わかっている。「理系」に行っただけで、私が宇宙飛行士の器なのか? ということくらい。けれどこの門前払い感が、ただただ寂しいのである。悲しいのである。
 
だって、「文系」に進むことは自分で決めたからだ。
 
私が通っていた高校では2年生から、文系コースか理系コースかが分かれていた。つまり、1年生の秋頃には希望調査があって、大雑把にでも将来を決めねばならなかった。進路指導の先生は、なりたい職業だとか、得意な科目だとか、そういったものを熟慮して自分で決めなさいと口を酸っぱくして言った。間違っても友達がいるからとか安易な理由で決めないように、と。
 
国語と日本史と化学が好きで、英語と数学は苦手。
どちらでも行けそうだし、どちらでも苦労しそうだ。そんな私は大いに悩んだ。たまたま、仲の良い友人たちは大半が理系に進んだ。スッパリと進路を選択する友人たちを尻目に、いつまでも決めきれない自分はなんだか中途半端だなと思った。
 
自分の好きなことだとか、薄ぼんやりと浮かんだ将来なりたい職業だとかを天秤にかけて、やっとの思いで決断した時、母も担任も驚いていた。てっきり理系を選ぶんだと思ったと。キッパリと決めたつもりだったのに、そう言われた瞬間、もう後悔していた。まだ回答は翻せたのかもしれない。なのに思春期の私は意地になって「文系」に進んだ。
 
2年生になり、クラスが分かれた。休み時間に廊下の窓からみえる「理系」のクラスが眩しくて、後悔した。
「あー、理系に行けば良かった……」
何度も心に浮かんできた。プライドが邪魔をして母には言えなかったし、同じ文系の友人にはどこか失礼な気がして打ち明けられなかった。
 
今思えば、私は「心の声」より「頭の声」に従って進路を決めたのだと思う。
 
例えば目の前を通ってゆくこのお寿司。
心の声は言う。「このウニ美味しいそう! 食べたい!」
頭の声は言う。「いったいいくらか見てごらんよ。2皿分だよ?」
葛藤して、隣の100円のエビを手に取る。美味しい。でも、また1周してウニが帰ってくるのだ。すると途端に後悔する。何周もウニが回ってくるたびに、グジグジする。2皿もそうでもないネタを食べるくらいなら、さっき素直に食べればよかった。
 
進路の選択をする時、私の心は「理系」に行った方が楽しそうだと思っていた。それはもう直感だった。ワクワクする「心の声」だった。しばらくすると後からムクムク頭の声が湧いてきて、どんどん迷子になってしまった。真面目に考えての決断だったけれど、心は欺けないものらしい。未練がましく引きずっている。
 
大なり小なり、なにか決断を迫られた時、あなたはどうやって決めているだろう。
その決断は「心の声」ですか? 「頭の声」ですか?
 
どうか一度「心の声」に素直に耳を傾けて欲しい。あなたの心は意外な事を言うかもしれない。でも、一度は受け止めてあげて欲しい。人はついつい「頭の声」を大きくして、その小さな声を掻き消してしまうものだから。
 
私は1度間違えた。
でも、案外楽しいこの「文系」人生には、まだまだ後悔していない。したくもない。
だから日々「心の声」に耳を澄ませるようにしている。完璧にはできないけれど、たくさんの声が拾えるように。チャンスが現れた時、頭の重力を無視して、高く高くジャンプできるように。もう、グジグジするのはごめんだ。
 
もう1周チャンスが回ってきた。
今度は「心の声」をしっかり聞く。素早く1皿取った。
 
口いっぱいにお寿司をもごもごさせながら、私は私の月面を目指すのだ! とウニに誓った。
 
 
 
 
***
 
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2020-10-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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