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メディアグランプリ

人生という線を紡いでいく


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:畑澤直希(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「あなたと別れたい理由は3点あります」
1ヶ月だけ付き合った彼女の言葉は、プレゼンテーションの冒頭のようで妙に印象に残っている。
 
その日は仕事のイベント開催前日の夜であった。明日から始まるイベントの成功を祈りつつ、ワクワクと緊張に押し潰されそうな夜であった。憂鬱な気持ちで寝ようとすると、彼女から電話がかかってきた。
 
「実は話したいことがあるんだ」
たわいもない話をしていると、急に言葉のトーンが変わる。この時点で、何かを察した自分の脳のシナプスが繋がる感覚がした。そして、話を逸らそうとしたが、最後まで切り替えることはできず、嫌いな理由3点を告げられて別れることになった。
 
それから一睡もできずにイベント本番を迎えた。幸いにも皮肉にも、そのイベントはかなりバタバタしたことで考える暇がなく、別れた実感がなかった。が、終わった後にイベントの燃え尽きとともに虚無感が襲ってきた。季節は9月。シーズンでもなんでもないインフルエンザにかかり、1週間寝込むことになったことを忘れもしない。
 
失恋のあとの気持ちには、2つのパターンがあると思う。別れる準備ができているか、できていないかだ。前者は、飛行機の離発着に似ている。心当たりがある分、ゆっくりと腑に落ちていく。一方で後者はまるで、エレベーターに乗っていたらそこが突然抜けるような感覚。突然のことに、予想外のショックを受ける。真っ逆さまに落ちていくイメージ。そして、心の中に急に空白ができる。大きな穴は、急に埋めることはできない。
 
私はここで言う後者であったため、ショックをずいぶん引きずることになった。何を食べても味がしない。人の話なんて耳に入ってこない。どうにか前に進もうと思っても前に進めそうにないため、一度心を無にして、たそがれることにした。向かったのは大桟橋だ。
 
桜木町にある大桟橋は、定番のデートスポット。日が出ている時間帯から夜まで、カップルが屯ろする場所だ。これからどうすれば幸せになれるのか真剣に考えていた私は、幸せの形を他人から学ぼうと、カップルを観察することでヒントを得ようとした。そして、独りデートの聖地に腰を下ろした。
 
日中から夜までベンチで独り過ごす。幸せそうなカップルたち。とてつもなく虚しい気持ちになったが、普段風景の一部であった彼らを観察してみる。すると、当たり前だけれど、それぞれのカップルごとにデートの雰囲気も会話も異なることが分かった。
 
あるカップルは、片方が野獣のような男性で、片方が可憐な女性だ。どうして彼らが惹かれあったのか分からないが、きっと何かロマンチックなストーリーがあったのだろう。
 
あるカップルは、会話をしていない。夜景を見ながら沈黙している。言葉によるコミュニケーションではなく、空気を共有することに楽しみを見いだしているように見える。
 
そしてある若いカップルは、ずっと笑顔で会話が絶えない。付き合いたてなのだろうか、繋ぐ手が初々しく見える。
 
一通り観察をした後、ふと当たり前のことに気づく。それは、彼らは元々付き合っていなかったということだ。別々の人生を送りながら、たまたま出会い、一緒に時間を重ねている。今目の前でデートしているカップルも、お互いの家族、友人がいて、それぞれの生活を謳歌している。住んでいる場所も境遇も違う。そんな通常重ならない線が偶然に交わり、今目の前にカップルとして存在している。そんな奇跡に、急に感動を覚えた。
 
人生は一本の線のようだ。生まれてから死ぬまで、みんなそれぞれ一本の線を紡いでいく。経験が、線をいろんな形にする。そして、人が出会うときに、線が交わる。そして重なったまま、ほころびあいながら伸びていく。その線が徐々に離れてくと、文字通り別れる。線は時に重なり、時に綻び、時に離れる。一期一会の人生の中で、交わってきた線はどれほどあっただろうか。
 
普通に人生を歩んでいたら出会わなかった人。その人と一瞬でも交叉することは、偶然でもあるし奇跡なのだ。結果として離れてしまっても、交叉した奇跡に感謝するべきなのではないか。そして、時間を重ねていけることは、きっと本当に滅多にないのだろう。今までの出会いも、当たり前のことではない。きっと、もともと重なるはずがなかったのだ。
 
そう考えると、出逢いについても見直さなければならない。自宅と職場の往復を一本の線に例えるなら、その線の上でしか出会いはない。線の幅を広げたり、線をうねらせたりしなければ、規定のルート以外で出会うことはありえない。行動の幅を広げることで、自分に合う線に出会う確率を上げなければならないと感じた。
 
線と線が結びついて輪なるイメージ。それが友人関係だ。その輪が小さければ強固に結びつき、大きければ解けやすいかもしれないけど世界が広がる。人生を線に例えるとき、これまで出会ってきた友人と紡いできた輪が、自分の世界を広げているような気がした。広げた先には、自分では交叉できなかった出会いがあるかもしれない。
 
そんなことを考えていると、いつの間にか周りに人がいないことに気づく。よし、そろそろ帰ろうと、気持ちを新たに立ち上がる。心の穴は、紡いだ思考で塞がっていた。ネオンで光る観覧車の装飾が、水面に照らされて輝いている。その日は、普段通らない道を通って帰ることにした。まだ見ぬパートナーはどこにいるのだろうか。出会いに想いを馳せながら、人生という線を紡いでいく。
 
 
 
 
***
 
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2020-10-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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