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「がんづき」にまつわる長年の謎に迫る!


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:石川サチ子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
東北地方に「がんづき」というお菓子があります。
 
おやつとして、母親がよく作ってくれました。友だちの家に遊びに行っても、友だちのお母さんが作って出してくれました。
 
一般の家庭で作る「がんづき」は、茶色っぽくてトッピングにはゴマやクルミが使われています。
見た目はずっしりとして田舎っぽく、素朴なイメージですが、触るとフワフワしています。
蒸しパンのような姿をしていますが、食べると甘さの中に苦みが残る独特の味わいがあります。
 
食べると、お腹が膨張して、ゲップが出ます。
 
「がんづき」の独特の苦みは、ふくらし粉として使った重曹の味です。重曹の苦みを消すために酢を入れています。
 
母が言うには、「重曹のアルカリが酢を入れることで中和する」そうですが、それでもしっかり苦みは残ります。
 
更に、わが家の「がんづき」には、味噌が入っています。
 
しかし、味噌の味はしません。
 
私は、ずっと疑問に思ってきました。
 
なぜ、お菓子なのに、わざわざ味噌を入れているのか?
 
母は、明治生まれの祖母から教わったのですが「味噌を入れることで濃厚な味わいになる」と言われたそうです。
 
私は、重曹の苦みが強すぎて隠し味にもなっていないような気がしていました。
 
しかし、最近、この長年の謎がようやく解けました。
 
先日、味噌パンを作ろうとして、小麦粉と味噌と甘酒を合わせて練ったところで、イースト菌を切らしていたことに気づきました。仕方がないので、そのままソフトボールくらいの大きさに丸めて、ラップをかけて暖かい場所に放置。
 
数時間後、買ってきたイースト菌を入れようとして、ソフトボールくらいに丸めた生地を確認したら、ハンドボールくらいの大きさにふっくらと発酵していたのです。
 
なぜ、イースト菌を入れていないのに、膨らんだんだろう?
 
訳が分からぬまま、発酵した生地を蒸してみたら、ふわふわの蒸しパンになりました。
 
甘さは少ないですが、味噌の味は一切しません。
 
重曹もベーキングパウダーもイースト菌等のふくらし粉の類いを使わずに、発酵した理由を考えました。
 
考えるまでもなく、味噌が一番怪しいと睨みました。
 
というのも、味噌パンを作るために使った味噌は自家製。大豆とこうじと塩しか使わず、仕込んでから一年以上経っていました。
 
仕込んでから夏を二回経験。高温になっても腐ること無く無言で発酵し続け、時間とともに熟成していました。
 
自家製の味噌を使った味噌汁は、真夏、40度くらいになった台所に、一日中置いていても味は全く変わらず、腐りません。
 
発酵が腐敗を防いでいるからです。
 
一方、一般的にスーパーなどに出回っている味噌は、酒精という薬を入れて発酵を止めています。そのため、スーパーなどで買った味噌を使ってつくった味噌汁は、真夏に冷蔵庫に入れずに台所に出して置くと半日もしないうちに、異臭がして、味も酸っぱくなってダメになってしまいます。
 
発酵していないので、腐敗してしまうのです。
 
発酵する味噌、発酵しない味噌では、同じ味噌でも、その機能、役目は全く違うのですね。
 
やはり、何度か実験をした結果、発酵する味噌を使うと、重曹やベーキングパウダー、イースト菌など使わなくても、生地がしっかりと発酵して膨らみました。
 
この実験の副産物として、イースト菌を使わない「味噌パン」もできました。
 
「がんづき」に味噌を使っていたのは、味噌の発酵力を使って、膨らましていたからだったようです。
 
元祖「がんづき」ができた当初は、「発酵を止める」という発想はなく、発酵する味噌しか無かったから、重曹と酢など使う必要は無かったのではないでしょうか。
 
しかし、田舎でも、自家製の味噌を作る家は少なくなり、味噌を入れても発酵しない、または、発酵する味噌を使っても、発酵するまで待てない。だから重曹と酢を加えるようになったのではないか、と推測しました。
 
今となっては、その当時の記録も残っていませんし、当時を知る方もいませんから証明しようもありませんが、長年、頭の中にできた腫れ物が取れたような、すっきりした感じになりました。
 
参考までに、元祖「がんづき」のレシピをご紹介します。
 
材料は「小麦粉200グラム、甘酒100グラム、発酵する味噌、大さじ1~1,5、クルミ50グラム、ゴマ20グラムくらい」。
 
作り方は、材料を全部混ぜて、丸めて、ボールなどに入れてサランラップをかけ、8数時間くらい放置します。
生地が膨らんだら、30分くらい蒸すと、ふんわりした、元祖「がんづき」が出来上がります。
 
この元祖「がんづき」は、重曹を入れた「がんづき」と比べて、食べてもお腹が膨張しませんし、ゲップも出ません。
 
その代わり、お腹の調子が良くなって、元気になります。
 
重曹の力で膨らんだお菓子と発酵の力で膨らんだお菓子の違いです。
 
お菓子に味噌なんて、邪道だとか、脇役だとか思っていましたが、実は味噌は、重要な役割をしていました。
 
味噌という名前であれば、どの味噌も機能は、だいたい同じだと勘違いしていましたが、「がんづき」のおかげで、全く別物だということが分かりました。
 
同じ名前なのに、本来の役目をするものと、しないものが共存する、ややこしい世界に私たちは住んでいるんですね。
 
 
 
 
***
 
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2020-10-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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