メディアグランプリ

「パパ、いや! 」と言われたときに、思い出してほしい事


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記事:冨田裕子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「パパはいや!」「おかあさんがいい!」子供のそんな言葉に傷付いているお父さんは、少なくないと思います。おそらく、私の夫もその一人。
私がやりたいことができるようにと、寝かしつけを買って出たのに、寝室から「おとうさんはきちゃだめ。おかあさんがいいの」と締め出されたり、お風呂に誘ったのに「おかあさんとはいりたい」と断られたり。ある朝、私が家族よりも早く起きて選択の準備をしていると、寝室から、目覚めた子どもがぐずる声が聞こえてきました。大丈夫かしらと手を止めると、続いて「いやだ~きたない」と叫ぶ声。寝室を除くと、隣の布団で寝ている夫が、寝ぼけながら一生懸命手を伸ばして、子どもの身体をさすっているのでした。
ああ、なんて気の毒……
子どもを想う気持ちは変わらないのに、子どもからの扱いは、この有様。
 
子どもにしてみたら、母親とそれ以外の人は、まったく違う存在なのでしょう。小さな卵からなんとなくヒトの形になって、この世で最初に感じるものは、母親の体温であり、母親の心臓の音、血液が流れる音、胎内に響く母親の声。そこはあたたかく、空腹になることもなく、いつもやわらかく抱きしめられていて、完全に平和です。世界はこの母の胎内と思って過ごした半年を経て、突然外の世界に生まれてきます。身包みをはがされ、空気にさらされ、初めての空腹は耐え難い恐怖かもしれません。母親に抱かれ、母乳やミルクをもらえる時間は、あの平和だった胎内が想い起こされ、不安だらけの世界で最も安心できるひとときなのでしょう。
父親が生まれる前から一生懸命話しかける声も、もちろんお腹の中で聞いています。でも、それは「世界」の外にあるもの。胎内に響く母親の声とは、全く違う意味の音です。
 
幼い子供が母親だけを求めるのは、ヒトが誕生するシステム上当然の事であり、決して父親が母親に劣っているのでもなく、その父親の努力や力量不足でもないと思うのです。それどころか、父親にしかできないことがあります。久しく父親は、「一家の大黒柱」と言われてきましたが、私は、父親は「一家の基礎である」と感じています。
 
基礎は、建物(家)と地盤を固定するもの。その上に、建物と基礎を繋ぐ土台があり、ようやく家が建ちます。父親はその基礎。母親は、その土台なのではないかと。
 
母と子は繋がっていると言われています。母親が悲しければ悲しくなり、悪いことをしてしまったような気持ちになることも、自分だけ幸せになってはいけないと思う事もあるそうです。母親が緊張していたり、イライラしていると、子どもの免疫力が下がり、実際に小児科では、進学や進級のある春先に風邪の受診が増えるそうです。父親がイライラしていても、母親がどっしり安定していれば子どもは問題ないですが、母親のメンタルが崩れると、父親が太陽のようであっても、子どもは風邪を引きやすくなるそうです。
 
では、父親のコンディションは、どうでもよいのか。
いいえ、違います。
 
父親が太陽のようでいてくれると、母親は救われます。それは、家事や子育てを分担する事とまた違った次元で、どんな時も温かいまなざしで受け止めてくれること。慣れないことも、一生懸命やってみようとしてくれること。子どもにどれだけ傷つけられようと、同じように愛情をもって接してくれること。それは、表情や言葉では伝えないかもしれませんが、母親を安心させてくれます。
母は強しと言われますが、子どもを産んだからといって、急に悟りを開くわけでもありません。特に一人目の子どもであれば、わからないことだらけで、いつも「これでいいのだろうか」と不安でいっぱいです。
かつて、私の子どもがようやく首が座った頃。夫は毎日深夜帰宅で、私は子どもを寝かしつけてから、インターネットで育児情報を読み漁るのが日課でした。時々子どもが泣いて起きては、授乳してまた寝かしつけ。ある日、授乳してもなかなか子どもが寝付かず疲れ果てていたところに夫が帰宅し、「大丈夫?」と寝室を覗きにきたのですが、イライラのバケツがあと1滴で溢れる状態だった私は、「うるさい! あっちいって!!」と、彼にとっては理不尽極まりない怒りの言葉をぶつけて追い払ってしまいました。追い払った瞬間、ほっとした自分を感じました。私は、安心して甘えられる相手に飢えていたのでした。理不尽に怒鳴っても、黙ってお風呂に入っていった夫。もっと家にいてくれたらいいのに……と思いながら、その時は素直に言えませんでしたが、少し子どもに手がかからなくなって余裕ができた今、振り返ると、その存在が大きな支えになっていたのだとわかります。
 
子どもにとって母親は、自分の土台となる存在です。でも、その土台は、基礎に強く支えられています。それは建物とは接していないかもしれませんが、建物にとってなくてはならない存在であり、大きくなって家の建て方を学んだ時に、その存在は深く感謝されることでしょう。
「パパ、いや」と言われたとき。まだ基礎の存在を知らないのだな、と思い、子どもが日々元気に過ごす土台を支えていることに、自信と誇りを持って頂けたらと思います。
 
 
 
 
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2020-10-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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