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インド人は「嘘つき」か


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記事:いのあけ(ライティング・ゼミ集中コース)
 
 
「プーネ?」
浅黒い顔のインド人男性はギョロリとした目で私を見て、大きな声で聞き返した。
 
「ノー! ルーネ!」
鳴り響くリクシャのエンジン音やクラクションに負けないよう、腹の底からありったけの声で繰り返す。インドの路上はともかくうるさい。
 
彼はしばらく沈黙したのち、黙って、左後ろの大通りを指差した。どうやら、「私の行きたい場所に行くにはそっちの方向だ」と示してくれているらしい。
 
「センキュー」とお礼を告げて彼の教えてくれた道に歩みを進めたが、2時間歩き続けても結局、目的地にはたどりつかなかった。ちょっと隣町まで買い物に出かけたはずだったのに、自宅に帰れなくなった私は、その晩、どこだかよくわからないホテルに泊まるはめになった。今となっては懐かしい、インドで暮らし始めたばかりの時の思い出だ。
 
私は縁あって、インドの現地企業で1年間、働いていたことがある。もう10年以上前の話だけれど、今でもインドのことは大好きだ。もっと多くの人にあの国と、あの国に住まう人の魅力を伝えたいと思い、これを書いている。
 
「インドという国を一言で表現しなさい」と言われたら、とりあえず「強烈」というキーワードをあげたい。匂い・光景・熱気・食べ物、数え上げればキリがないが、すべての刺激が日本人にとっては強すぎるのだ。そして、その強烈さをいっそうパーフェクトなものにしているのが「インド人」である。
 
日本人の感覚からすると、インド人はおおよそ考えられないような行動をとる。なかでも現地に行った多くの日本人が困惑させられるのが「インド人の嘘」についてだ。
 
「インド人は嘘つきだ」という話を、現地で暮らす日本人から何度聞かされたかわからない。
 
詳しく聞くと、だいたいトラブルは路上で起こっていた。要約するとこんな感じである。
 
道に迷った日本人が、そのへんのインド人に道を聞く。そうすると「ここからすぐだよ」と言われたけれど、30分歩いてもつかない。後からわかったけれど、実際には目的地まで10キロ以上離れていた。また、「あの道をいけばいい」と言われたけれど、本当は真逆の方向だった、というパターンも多かった。
 
そして冒頭でご紹介した通り、私自身もそういう経験をしている。
 
これはもう、インド人は嘘つきだ、と言われても仕方ないかもしれない。「インド人に騙される」とか「インドなんかに気安く行っては危険だ」と考える人もいるかもしれない。
 
だけど、インドに1年住んだ私が導き出した答えは、真逆である。インド人はたぶん、世界で1、2をあらそうレベルの優しさと強い親切心を持っている。
 
インド人はとても優しい。優しいがゆえに、路上で困っている異国の人を見かけたら、手を差し伸べずにはいられない。
だから、道を尋ねられたインド人は、必ず応えてあげようとする。たとえ、それが自分のよく知らない場所であったとしても、黙って首を振ったりはしない。わからないから、という理由で、突き放してしまうのはあまりにもかわいそうだからだ。したがって、彼らの辞書に「道を聞かれてNoと言う」は存在しない。
 
目の前の旅人がどこに行きたいかよくわからなかったとしても、一生懸命考えて、私たちに道を教えてくれる。「あなたの行きたい場所は、多分あっちの方だよ」くらいの感覚で。そして時にはそれが、真逆の方向だったり、10キロ以上離れた場所だったりする。それが「インド人は嘘つきだ」の真相ではないだろうか。
 
このように書くと「インド人を贔屓目に見過ぎだ」と言われそうだけれど、本当に彼らは親切だ。それが証拠に、インド人に道を尋ねたとき、無視されたことは一度もなかった。誰もが、必ず立ち止まって私の言葉に耳を傾けてくれる。私が、彼らにとって理解不能な言語で話しかけているにもかかわらず、だ。
 
私は地図が読めないので、インドであろうが日本であろうが容赦なく道に迷う。通行人に道を教えてもらうしかないのだが、日本で道を尋ねるときは、慎重にターゲットを選んでいる。通行人をよくよく観察して、親切そうでかつ暇そうな人に狙いをつけるのだ。「この人にはやめといた方がいいだろうな」という直感で、話しかけない人もずいぶんいる。
 
だけど、インドではそんな配慮は一切不要だった。誰も、嫌そうな顔をしなかったからだ。私の中で、「話しかけること」へのハードルがずいぶん下がった。誰にでも、いくらでも道を訊けた。これは結構すごいことだったと、今でも思っている。
 
インドの「強烈」を構成する代表的な要素はインド人だ。彼らは愛想笑いはしないし、映画館では国歌を歌うし、日本人の感覚からしたら刺激が強いのは事実だろう。だけど同時に、とても心優しく親切で、もちろん「嘘つき」なんかではない。
 
彼らのことを思い出していると、久しぶりにインドに行きたくなってきた。次は絶対、Google マップを持っていくけど、やっぱり話しかけたくて、道を訊いてしまうんだろうなぁ。
 
 
 
 
***
 
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2020-11-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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