メディアグランプリ

メッセージを瓶に入れて


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:大隈真波(ライティング・ゼミ集中コース)
 
 
「子どもが生まれてから『どのカメラを買えばいいですか?』って聞いてくるやつが多いんだよ」
 
赤ちゃんが生まれたら、毎日毎日、写真をたくさん撮るんだろうな、と子どものいないわたしでも、想像がつく。そしてそのうち、スマートフォンで撮ったものより、もっとよい写真を撮って残したいと思うのは、親心というやつだろうと思う。
 
だから、わたしもきっと子どもが生まれたら、「どのカメラを買えばいいですか?」と聞きたくなるだろう。
 
ふーっとタバコの煙を吐きながら、知人は続けた。
 
「だいたいさ、そういうことを聞く人間が、買ってすぐにカメラを使いこなせるはずがないでしょ? 生まれるのがわかったら、なんでもいいからすぐにカメラを買って。生まれる前に練習しておかないと、間に合わないんだよなあ」
 
吸った煙をさっきよりも長く大きく吐き出して、知人はタバコの先を灰皿に押し付けた。この話はこれでおしまい、というふうに。
 
たしかに間違いない。
 
「どのカメラが良いか」を聞くということは、カメラに詳しい部類のひとではないだろう。そんなひとが、買ったばかりのカメラを使いこなせるとは、わたしにも到底思えない。
 
もちろん、オートモードで撮って、簡易なフィルター加工をするというのであれば、それで良いのかもしれない。
 
であれば、いまとなっては趣味性の高いカメラをわざわざ購入するよりも、内蔵カメラの性能の良いスマートフォンを買うほうが、お財布にも労力的にも、よほどやさしいのではないか。
 
ここでいうカメラは、スマートフォンよりも良い画像が取れるカメラ、つまり一眼レフカメラを指す。となると、レンズも揃えなければならない。本当に高価なものを揃えるのであれば、カメラを保管する除湿庫も必要になる。カメラの世界は沼のようで、魅力的ではあるが、ハマればハマるほど、どんどんお金が溶けていく。
 
どのレベルのカメラを、どのレンズをどれくらい買うのか? 何をとって、何を妥協するか? 予算はもちろんのこと、「背景をきれいにぼかしたい」とか、「手ブレ補正は絶対必要」といった、明確なポリシーがないと、カメラやレンズを選ぶのが難しい。
 
選択肢が多すぎて困るのだ。選ぶ本人も困るが、相談される方も困る。
 
そして。
 
以前メディアの企画で「子どもを可愛く撮る方法」を特集したことがある。現場では、プロのカメラマンが、何度も何度もシャッターを押していた。動き回り、目線をくれるとも限らない子どもの一瞬一瞬を、イメージどおりに写真に残すのは、かなり骨の折れることだと思う。そして、大量に撮った写真から、どれを選ぶか、そういった作業があることも忘れてはいけない。
 
ほとんど取材時や、記録のためにしか使っていないスマートフォンの写真を整理するのも面倒なのだから、毎日成長するとはいえ、カメラロールを肌色で埋め尽くす、大量の乳児写真を整理するのは、想像するだに恐ろしい。
 
どんな写真を残すのか、あるいはすべてを残すのであれば、どのようにバックアップするのか。データが散逸しないよう、あらかじめルールを作っておかないと、日々の仕事や生活に加え、新たにはじまった育児の忙しさに押し流されて、そこまで手が回らなくなるだろう。
 
そう、生まれてからでは遅いのだ。
 
デジタルカメラなんで存在しなかった、フィルムカメラで撮ってもらったわたしの写真アルバムでさえ、両親は途中から投げ出し気味になり、最後には現像された写真を封筒ごと、アルバムに挟んでいる始末だった。
 
さきほど書いた知人の話を聞いてから、おめでたの話題を耳にすると「カメラを買うならいますぐに、そしてちゃんと練習をしてください」「データ保存の仕方をきちんと検討してください」といったアドバイスをしたくて仕方がなくなる。
 
とはいえ、わたしはカメラに詳しいわけではない。仕事でカメラを使うことがあるが、できれば自分では撮影をしたくない。いまのWebメディアでは、どちらもできることを前提に取材依頼されることが多いので、なんとか頑張ってカメラを使っている。しかし、予算に余裕のある企画であれば、カメラマンに依頼をして撮ってもらうほうが、気持ちが楽だ。
 
そういうわけで、写真をメインの仕事にしていないわたしからアドバイスをするのも、なんだかおかしなことになる。
 
「直接話すには、ちょっとおせっかいかもしれない」という話題を、わたしは記事や企画のネタにしている。想定している「アドバイスを届けたいひと」は、たったひとりかもしれない。しかし、同じような状況のひとは、きっと日本中にたくさんいるし、これからも現れる。
 
だから、アドバイスをしたいひとに直接届かなくとも、記事や企画としてインターネット上に公開することで、わたしは自分自信の「他人にアドバイスしたい欲」を満たしている。
 
書くためのネタが見つからない、という方は、ぜひこの方法を試してみてほしい。友人や知人、具体的な誰かに教えてあげたいこと、そして自分が知りたくて調べたこと。「あのとき、これを知っていたらよかったのに」という内容を公開することで、後悔の気持ちも供養できるかもしれない。
 
ちょうど、誰にともなく書いたメッセージを瓶に詰め、海に流すように、どうか気軽に。
 
 
 
 
***

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2020-11-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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