メディアグランプリ

小鉢1つ分くらいの差別問題


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記事:鈴木麻未(ライティング・ゼミ集中コース)
 
 
赤らさまな差別はNGという時代的にとてつもなく恵まれた社会に自分はいると思う。いろいろな問題はあれど、日本で暮らしている人の多くはそれを享受している。女性であっても長男でなくとも誰の所有物でもなくて、就職をしたり仕事をして報酬を得ることができる。
 
私もそうだ。就職は氷河期と言われる時代だったけれど、夫と子育てをしながら仕事を続けることができている。
 
そんな素晴らしき令和ではあるけれど、私は女性差別を感じることがある。何をいまさらと言われるかもしれない。あからさまなハラスメントももちろんある。でもそちらについては、表向きNGなので、注意することができる。けれど、違うのだ。とても自然で空気のような差別。訴えることはむつかしい。例えるならば、私が注文した定食のお盆に小鉢が一つ足りないような差別なのだから。
残念ながらこれは、本人しか気づくことがでない。
 
上司や男性の同僚にもしも「私のお盆に、小鉢がないようだ」と言ったとすると、こう言われることが予測できてしまう。
「僕の定食にはついているから、気のせいではないか」
「気の持ちよう、受け取り方の問題ではないか」
「成果も出していないのに、権利だけ主張しない方がいいよ」
「君も実力が認められたら、小鉢がもらえるようになるよ」
「そうならないようにするには、君にはコミュニケーションに課題があるね」
「そういうのもうまくかわせるようにならなくては」
 
悪意は全くない、なんなら善意の意見でこう言われる。実は小鉢をくれない人自身も無意識だったりする。ごくごく自然に小鉢がもらえない現実がそこにある。そしてこれを主張すること自体が、リスクになるから言えない、言わない人が多い。私もそうだ。
 
隣のお盆とは言え、小鉢に気づかないはずがないという人もいるかもしれない。
 
こんなことがあった。しばらく前に定年退職したAさんはとてもユーモアのセンスのある楽しい人でその人との雑談は職場を盛り上げるものだったけれど、時々、女性の年齢を揶揄したり容姿について触れる人だった。時々私が「それ以上はアウトですよー」と指摘することがあってAさんは「はーいすみません」とやめてくれる人だった。そのAさんが退職したときに、男性の同僚が「Aさんならそういうこと言っても許される人だったからほんとすごいよね!」と言っていて驚いた。「許されてないし、アウトだって気づいてなかったんだ!」と。
 
そんなものである。アウトなものでも人によっては気づかない世界で、小鉢が気づかれるはずもない。
 
そんな、もらえなくて当然の世界で、当然のようにくれない相手に「ください」と言う気になるだろうか?別にいらない、もらえなくて当然と思う方が、ラク。空気も悪くしないし、めんどうくさい人と思われないし。差別なんてないよね、と言われる世界。
 
そうですね、と言う方がどれだけラクだろう。
 
でも、
私が小鉢をもらえなくてもいいや、とやり過ごしたら、後ろに並ぶこの列のみんなが、小鉢をもらえない列になってしまったらどうしよう?
さらには私の中学生の娘が大人になるころに、この小鉢のもらえない世界が待っているかもしれない。
 
そんな考えの中にいて、すっかりどこに向かってよいか分からなくなってしまった。
小鉢がもらえない、という受け身な自分に飽き飽きした。怒るのも戦うのも今はやる気にならない、でもこのままでもいたくない。どういうスタンスでいていいか分からない。
 
そうだ、こういう時には、ひっくり返してみるのがいい。いっそ、もらう側じゃなくてあげる側になったらどう?と考えてみた。私はそもそも、自分が足りない分じゃなくて、自分が持っている分に目を向けたり、誰かが足りないことがないかという視点で、隣のお盆を見ていたっけ?
 
確かに私のお盆には小鉢が一つ足りないけれど、隣の人のお盆にないプリンが乗っているかもしれない。
 
それに気づいたら、私はこう言えるだろうか?
「私のお盆にはプリンがありますが、この人にはないのであげてください!」
「ほら、これはあなたの分ですよ」
「次からももらえるので、欲しかったらもらうようにしてね」
「もらえないときは、伝えていいのですよ」
 
そう思ったら、ずいぶんラクになった。
 
そうやって、受け身ではない考えにたってみると、小鉢のもらえない列にこだわっていた自分がばからしくなった。列なんかじゃなくて、小鉢だろうか、プリンだろうか、定食だろうが、もらう側ではなくて、あげる側になったらいい。
 
確かに自分のお盆に意識を向けることは大切だ。きちんと主張することの大事さも、重々分かっている。でも、やり方はいくつもあっていいと思う。持っているものに目を向けて、あげる側になったら、きっともっといい世界を作ることができる気がする。
 
 
 
 
***
 
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2020-11-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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