メディアグランプリ

日本のリトルアジアとして復興した街


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:しげG(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「いくら?」
「50元ね」
 
中国にいるわけではない。
筆者が訪れた日本の中華料理店での話である。
 
「元? どうやって払うの?」
「はい、ペイペイね」
 
なるほど、電子マネーか。
しかし現金しか持っていない。
当たり前だが日本円だ。
 
「円しか持ってないよ」
「だいじょぶ。計算するから」
 
店員はカシャカシャと計算機で日本円に換算してくれた。
 
ここは「西川口」という街だ。
東京駅から京浜東北線で北上し、約30分ほどで西川口駅に到着する。
筆者が生まれ育った街でもある。
 
西川口にはアジア系の飲食店が多い。
しかも日本人相手ではなく、日本に住んでいる自国の人々だけを対象にしている店もある。
だから決済も「円」ではなく「元」などの現地通貨になってしまうのだ。
 
なぜこのような街になったのか。
少し振り返ってみたい。
 
西川口は20年ほど前、全国的に有名な歓楽街であった。
しかし2005年頃から、行政による街の浄化運動が行われ、300店以上あったナイトサービスの店は90%以上が消えてしまった。
その店で働く人々や通う客も激減し、影響を受けた飲食店などの商業施設も消えていった。
 
駅周辺のビルは軒並み「テナント募集」の張り紙が貼られ、居住用の賃貸物件も「空室」だらけになってしまったのである。
 
西川口はゴーストタウンと呼ばれるようになった。
 
地元の商店街や商工会などが協力して、町おこしを試みたことがあった。
B級グルメタウンとして「安くて美味しい」をコンセプトにした飲食店を誘致したのである。
しかしこれはうまくいかなかった。
「西川口はもう終わった」という風評が流れていて、訪れようとする人がいなかったのである。
 
そんな不毛な時代が10年近く続いただろうか。
不動産の空き物件に、外国人が住むようになった。
飲食店やバーで働く中国やフィリピンの人たちだ。
 
外国人にとって、日本の不動産の賃貸契約は簡単なものではない。
家賃も高いし、日本人の保証人が必要だったり、物件によっては「外国人入居お断り」をしているケースも多い。
 
しかし当時の西川口では、賃貸物件にそんな悠長な条件を付けている場合ではなかった。
家賃は安くてもいい。
入居条件も緩くする。
とにかく部屋を借りてくれる人が欲しかったのである。
 
結果、外国人にとって西川口の不動産物件は、「家賃が安い」「条件が厳しくない」「都心から近い」という好条件が揃ったものとなった。
 
外国人が住むようになった理由がもうひとつある。
日本政府が掲げた「留学生30万人計画」だ。
2014年頃から、日本語を学びに来るアジア諸国出身の留学生が激増した。
東京都心の学校へ通う彼らにとっても、西川口の賃貸物件は魅力的なものだったのである。
 
こうして西川口はリトルアジアと化していった。
 
駅の改札前で待ち合わせをする人々は、その半数近くが外国人だ。
街を歩いていても、異国の言葉が耳に飛び込んでくる。
コンビニや居酒屋のアルバイトも、外国人留学生が多い。
西川口は日常にアジアが浸透しているのである。
 
これだけ外国人が増加すると、当然彼らの胃袋を満たす飲食店が繁盛する。
西川口駅周辺には、中国、韓国、台湾、インド、ネパール、タイ、そしてベトナム料理店が林立している。
筆者のようなアジアンフード愛好家にとっては嬉しいかぎりだ。
 
こうして西川口は再び活気を取り戻したのである。
 
せっかくなので、いくつかオススメの店を紹介しよう。
 
まずはタイ料理だ。
西川口駅西口から歩いて2分ほどのところに「カウケン」というタイ屋台料理店がある。
カウンターだけの店で、6人ほどで満席になる。
おすすめは「パッタイ」というタイ風焼きそばだ。
筆者はタイへよく旅行に行くが、現地のものと比べても遜色なくウマい。
マスターは気さくなタイ人で、来店客もタイ人が多い。
近くにタイ伝統の格闘技「ムエタイ」のジムがあり、タイ人のトレーナーと思われる人たちもよく食事をしている。
コロナ禍で渡タイができない今、現地の雰囲気も味わいたい方にはオススメである。
予算は食事一品とドリンク一杯で、1000円から1500円ほどだ。
 
続いてインド料理にいこう。
同じく西川口駅西口から徒歩2分くらいにある「グレイト・カルカッタ」だ。
ここはセットがお得だ。
ランチもディナーもセットが注文できる。
好きなカレー2品とナンと飲み物で1000円前後。
カレーはキーマエッグとバターチキンがおすすめだ。
筆者はパスタにカレーをかけてもらうという裏メニューをオーダーしている。
パスタは「固め」で頼んでおこう。
何も言わないと、やや柔らかく水っぽくなってしまうからだ。
遠慮は無用。
裏メニューもパスタの茹で加減も、快く引き受けてくれる。
 
最後はベトナム料理だ。
同じく西川口駅西口徒歩1分の「トックティー&ファストフード」である。
カフェ風のこの店では、代表的なベトナム料理である「バインミー」が味わえる。
こんがり焼いたフランスパンに、肉や野菜をサンドしたものだ。
タピオカミルクティーとのセットで1000円前後である。
店主はベトナム人の夫婦だろうか。
客層も若いベトナム人が多い。
テレビモニターには、ベトナムの人気アイドルらしきグループのミュージックビデオが流れている。
店の片隅で、ベトナム人の女学生が、日本人にベトナム語のプライベートレッスンをしていることもある。
通って顔見知りになれば、ベトナムの若者との交流も楽しめそうだ。
 
ひとつ注意が必要だ。
アジア諸国を旅したことがある方はご経験があるかと思うが、日本の飲食店のような丁寧な接客はない。
どちらかというと「不愛想」だ。
だが不機嫌なわけではない。
前述のように、裏メニューや調理加減も遠慮なく注文できる。
 
最近では飲食店だけでなく、アジアンフード専門のスーパーも繁盛している。
筆者も何度か利用しているが、海外の旅先でしか買えないような食材も買うことができる。
 
西川口はぶらぶらと買い物をしてまったりと過ごせる街ではないが、ランチやティータイム、ディナーなどに目的を絞れば、充分楽しめる。
アジア好きな方ならきっと気に入るだろう。
 
食べ物のことを書いていたらお腹がすいてきた。
そういえば駅の近くに最近話題の「中国蘭州牛肉ラーメン」店がオープンしたらしい。
さっそく食べに行ってみるとしよう。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

 

 
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325


■天狼院書店「シアターカフェ天狼院」

〒170-0013 東京都豊島区東池袋1丁目8-1 WACCA池袋 4F
営業時間:
平日 11:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
電話:03−6812−1984


2020-11-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事