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ランプの宿


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:ダンノハラ ケイイチ(ライティングゼミ・日曜コース)
 
 
「ここ、すごいな…… 電気もガスもないのか…… 本当にランプの光だけなんだな」
 
「すごいだろ、お父さんが若い頃来たときはもっと寂れた山小屋って感じだったんだぜ……」
 
私は10月の土日を利用して、父親と宮城県のくりこま高原駅から車で1時間半ほどの栗駒山の登山口近くにある「湯浜温泉」というところに来ていた。
 
元々、父親が若い頃に来たことがあった場所で、話には聞いていたのだ。
 
「電波も繋がらない」
 
「電気もガスもない」
 
「周りに民家は一つもない」
 
「あるのは最高の温泉とランプだけ」
 
この話を父親から聞かされていて、前々から絶対にいきたいと思っていた温泉宿なのである。
実際に来てみると、その話は本当で、「電気もガスもないし、携帯の電波など一切繋がらない」という、まさに外界と遮断された秘境中の秘境であった。
 
宿に着くと、登山届提出窓口というところがあった。なるほど、ここから栗駒山に登ることができるようだ。要は宿というよりは山小屋に近いのかなと思った。
また、宿の中には昔ながらのかんじきや藁で作られた外套のようなものがあり、歴史を感じさせられる。
 
昔から栗駒山の登山者やマタギの人たちの休憩場所にもなっていたようだ。
 
そして、しばらく経つとさっきまで晴れていたのに急に土砂降りの雨が降ってきた。山の中の天気は変わりやすいというがここまでなのだろうか。
 
宿のご主人に話を聞くと、秋田と宮城のちょうど真ん中にあるから、天気予報も秋田側の天気予報と宮城側の天気予報そして、その下にある鳴子地域の天気予報の3つを確認して天気を判断しないといけないとのこと。
 
どうやら、地方の普通の温泉地とは全く違う温泉に来てしまったようだ。まさに非日常的な場所だと思った。
 
ご飯を食べ終わった後、部屋に戻る。日はすっかり暮れ、あたりは真っ暗だ。しかし、部屋の中は、ランプが灯っている。暖かな光だ。
 
電気の光とは全く違っていた。電気の光は、暗いところでいきなりつけると「眩しさ」だったり、「目への刺激感」を感じるがランプの光はそんな攻撃的ではなかった。
初めてランプの光を見て、そう感じたのだった。
 
例えていうならば、焚き火のような明るさといえば良いだろうか。見ているだけでリラックスするような、そんな感じだ。
 
そして、暗さに目が慣れてきた時、もう一点気づいたことがあった。それは、「月の光の明るさ」だ。
 
窓から差し込む光が想像以上に明るい。
 
よく日本史の教科書や歴史の本の中で、
 
「ある偉人は月の光で勉強をしていた」
 
なんて話を聞いたことはないだろうか。
 
今までの私は、いくらなんでもそんなことがあるだろうか。月の光だけでなんて絶対に文字を読んだりできるはずがないと思っていた。
 
しかし、この窓から差し込むとても明るい月の光を目の当たりにしてそれが本当のことだったというのを実感した。
 
試しに、宿でもらった周辺地域のパンフレットを見てみると余裕で読めてしまう。
 
そうこうしているうちに、段々と眠くなってきた。時間はまだ8時である。普段の生活であれば全く眠くなんてならないのにもうとても眠い。
 
布団に入ると、いろいろと考えが浮かんで来た。
 
「本来の人間の生活はこんな感じだったんだろうなあ……」
 
「昔の人々はこの明かりでどのように生活を営んでいたのだろうか……」
 
とかそんな考えが沢山浮かんで来た。
 
まるで大学の授業を受けた後の感じだ。講義の中で新たな知識をインプットした後、様々な考え浮かんでくる。その感じと全く似ていた。
 
私は大学では民俗学を学んでいた。遥か昔の市井の人々がどのように生きていたのかを文献や民具から読み取り、研究をする。
 
所属していた研究室では、飛騨の合掌集落に赴き、実際に使用されていた農具や民具の整理を行なっていた。そこで手にとった道具達を見て、触ることで昔の人々がどのように生活を営んでいたのか、様々な考えが浮かんで来たのだ。
 
「この農具は持ち主だけが使用するのではなく、周りの人達と共用して使っていたのかな」
 
「民具が沢山ある家は、きっとその集落のリーダー的な存在だったのかな」
 
とかそんな風に沢山の考えが浮かび上がってくる。今のこの状況と同じように。しかも、この宿は、携帯の電波もないし、テレビもないから余計な情報が入ってこないで集中して自分の考えを整理する事が出来るのだ。
 
そんな事を考えていたら、いつの間にか寝てしまっていたようだ。すでに外は明るい。
 
起きてみると妙にスッキリしている。きっと温泉と早く寝た事で疲れが取れたからに違いない。
 
普通の旅館も確かに、リラックス効果はあって、体は癒されるが今回のこのランプの宿は今まで一番リラックスが出来た宿かもしれなかった。
何もないから余計な情報に気を取られる事もなく、休むことに集中出来たからだと思う。
 
電気もガスも電波もない、ランプの宿。人間本来の生活を取り戻せる唯一の宿だ。仕事で疲れたみなさんにぜひ泊まっていただくことをお勧めしたい。
 
 
 
 
***
 
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2020-11-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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