メディアグランプリ

心に響いた軽くて重い言葉の思い出


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:エリイ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
他者からの言葉で、生涯忘れられないものはいくつあるだろうか。
大切にしている言葉の中でも、不特定多数に向けられた歌や詩、演説の一節ではなくて、
直接人から自分へ送られたり、見聞きしたりした言葉たちは特に自分の意識にガツンと横入りしてきて、跡を残して行く。
 
多くの人が、人生の節目に思い出したり、精神的な支柱として大事にしている「言葉」があると思う。
そして、同じように私にもある。
 
それは、今の私という人となりを形成するきっかけになったものもあれば、
時にふと思い出し、クスッと笑ってしまうようなどうでもいい言葉もある。
 
表面だけ捉えると箸にも棒にもかからないレベルなのだけど、印象深いの言葉が2つある。
 
一つが、
「あなたは、サランラップ派なんだね」
 
これは、食品用ラップの話の中で、無意識に商品名を言っていた時のこと。
絆創膏を「バンドエイド」というのと同じ現象である。
もちろん、今だってメーカーに特別こだわりがあるわけではないのは変わらずなのだが、
この言葉によって、
自分が気づいていない他人から見た自分が在ることを初めて認識した。
だからとても良く覚えている。
 
些細な会話から出た印象的な言葉がもう一つ。
「小指にほくろあるよね」
 
これは私の左手小指の話だ。
所詮160cmの体のうちの2mm規模の話だが、
これは出会って20年、高校の同級生に言われたのである。
昨年にお茶をしていた時のことで、
友人はその時に気づいたのではなく、実は学生の頃からほくろの存在を知っていたというから驚いた。
こんな小さいことまで知っているのか、という気恥ずかしさと彼女と私の友情の深さや長さを感じた瞬間だった。
 
発せられた言葉の奥行きや意味の理解が重なると、突然にその言葉に重みが増す。
とても不思議だ。
 
もちろん、もっと真面目な話もある。
学生の頃、友人の知り合いの人から言われた今の自分の芯となっている言葉だ。
その人は、確か当時の私より15〜20歳くらい年上の、若者に世話焼きなおじさんだった。
 
その人は、優しくこう言った。
「褒め言葉を花束だと思いなさい」と。
 
花束を差し出されて、あなたは受け取りを拒否しますか。しないよね。
褒め言葉を、お花だと思って、笑顔で「ありがとう」と素直に受け取りなさい。
そうするとね、あなたの笑顔を見た人がまたあなたを褒めたいと思うんだよ。
 
今も自己肯定感が高いとは言えない私だが、
学生の頃はもっと自分の殻に閉じこもり、人からの評価を拒否し続けていた時の話で、
見かねたその人が私の殻の中に光を届けてくれた。
 
この言葉を授かってから、何かから解放された気がして、
作り笑顔でも、相手から褒めてもらったことを受け止める練習を始めた。
それからというもの、褒めてくれた人が次に会った時もそういった言葉をかけてくれるようになった。
自然と良い言葉をかけてもらえる回数や人が増えた。
間違いなく、自分を変えてくれた言葉である。
 
自分の知らない面にはっと気づいたり、大事な人との絆を改めて感じたり、卑下しがちな自分を見つめ直したり。
過去と他人は変えられないなんて言うけれど、私は他者の言葉で自分が変わることを体感した。
言葉は、十分重いのだ。
 
自分の心にタックルしてくるほど重い言葉は、自分ひとりに面と向かって言われているもの限定だと思っていた。
しかし、そんなことも無いということが最近わかった。
 
先日、休日にお昼ご飯を食べている時の出来事だ。
同年代の女性2名の会話を耳にし、ドキッとした。心が悪い方に揺さぶられたのだ。
 
昼と夕方の間の時間で、少し早めの一杯をやっていたのだろうか、大きな声でその二人は話していた。
自分たちのことを「おばさん」と呼び、最近の体調や美容についてや仕事の話などなんやかんやしていた。
 
その後も会話と声量はヒートアップし、
学生時代の同級生のSNSを見て、当時成績が良くなかったとか、異性に好かれる容姿じゃないのに結婚している! という品のない内容ばかりで、
ランチの味がボソボソと落ちていく気がした。
 
気が滅入ったのは彼女たちが下品なのではなく、
私もお酒が入って、気が大きくなった時にこんなことを言っているかもしれない。とハッとしたからだ。
そして即時、人の振り見て我が振り直さねば! と心に刻んだ。
 
こんな出来事を通して、
直接自分に言われたことでも、間接的に聞いたことでも、
受け取り解釈する事によって、
些細な一言でも、充分に人への影響があるんだと気づかされた。
 
いつもは丁寧に単語を並べて伝えることや発することができていたとしても、
疲れていて端折ってしまうこともあるかもしれない。
他にも、
テキストでのコミュニケーションが主となるリモートワーク化では、上手に伝えられていない場面も増えているかもしれない。
 
明日の自分は今日の食べ物で作られているというけど、
自分の唇を震わせて外に出た言葉たちは、もしかしたら自分という人間の根底を表しているのかもしれない。
だから、軽い気持ちで発した言葉も、人に影響を与えることができる(かもしれない)という
少し図々しい意識をしながら、私は私の言葉にきちんと責任を持っていきたい。
そう、襟正す気持ちになった。
 
そして欲を言うなら、
自分の言葉を聞いた人がぽっと暖かく、優しく、前向きな気持ちなるとといいなとも思った。
これまで、私に声をかけてくれた人たちや無論ランチをご一緒した彼女たちには、
大切なことに気づかせてくれてありがとうと伝えたい。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

 

 
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325


■天狼院書店「シアターカフェ天狼院」

〒170-0013 東京都豊島区東池袋1丁目8-1 WACCA池袋 4F
営業時間:
平日 11:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
電話:03−6812−1984


2020-11-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事