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読んだ人を、確実にお店へと運ばせてしまう本がある。


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記事:河瀬佳代子 (リーディング・ライティング講座)
 
 
まだ行ったことがなかった時は、ベルクのことが、少しだけ怖かった。
 
どうして? と真正面から訊かれたら、何と答えようかと一瞬考える。言葉を選びながら答えるとするならば「闘っている店ってどんな感じなんだろう? ということが言葉だけでは伝わりにくいから」だ。じゃあ、試しに行ってみたらいいじゃない? 自分の中でもそんな声がないこともなかったけど、そこまでする勇気がなかった。
 
テナントから立ち退き要求をされながらも、ベルクが多くの人々からの支持を得てそれを撥ねのけたことは知っていた。巨大資本を相手にしながら果敢に交渉し、世論を巻き込んで勝ち取った権利。SNSでも盛んに展開されたその経緯を知る人も多いことだろう。
その強さは尊敬に値するものだ。だがその強さ故に、少しだけ畏怖の念もあった。
そして喫煙のカフェが苦手なことも相まって、ベルクになかなか足を運べずにいた。
 
何年も前から知っていて、いつかは行こうかと思っているうちに時が過ぎていたその店を訪れようと決心させたのは、紛れもなくその本だった。
 
井野朋也著『新宿駅最後の小さなお店ベルク』(筑摩書房、2014)という本があることは知っていた。いくつかの書店を巡っても目につくところに置いてあることが多く、興味を引く書名でもある。いつも視界に入っては前を通り過ぎていたけど、読んでみようと思ったのは書店員の勧めだった。
 
「この本は、何かを自分で作り出そうとしたいのならば絶対に読んでおいた方がいいですよ」
 
何かを自分で作り出す。
 
どうしてもこれを作りたい! という強烈な欲求がある訳ではないけど、自分の書く文章がもっと良くなってほしいということも「作る」ことのうちに入るのかな。ぼんやりとそう思い、ついにその本を読んでみることにした。
 
本を読み始める。
ベルクがどうして、日本一の利便性を誇る新宿駅に出店したのか。
どのようにして価格上昇をなるべく抑えながら利益を確保しているのか。
お客様に対して、スタッフに対して、どう向き合っているか。
その全てが、とても詳しく書かれている。
そしてどの項目も、とても丁寧だ。
 
「到底敵うわけがない」と闘う前から諦めるような相手に勝ったお店だから、きっと強気な調子の文章なんじゃないか? と、読む前は勝手に想像していた。それがいい意味で裏切られる。実際は真逆だった。井野氏の語り口はどこまでも細やかである。そしてどこまでも「お客様第一」である。
 
「自分たちが毎日食べられるもの」を商品として開発する。至極当たり前のように聞こえるが、これを実践できている店はどのくらいあるだろうか。
毎日食べるものは、当然として身体にいいものであってほしい。材料も吟味して味もよくあってほしい。お客として、もしどこかの店に行くのならそれが理想だと思う。ベルクはそんな「お客様の当たり前」に真剣に向き合っていることがわかる。
 
コーヒー1つ取っても、マシーン選びからいい加減にしない。単に豆との相性や、抽出の具合だけでなく、壊れてしまった時のメンテナンスまで考えたらどのマシーンが一番店にフィットするのか。そこまで考えて選び抜く姿勢は、どこまでもお客様に対して真っすぐだ。
 
パン選び、コーヒー選び、ウインナー選び、食器選び、客席のレイアウト選び……。ベルクには実に様々な「選ぶ」が存在している。そのどれを取っても、深いのだ。自分たちの店だったらこれがベストだと決めるまでの過程は、まさに「熟考」という言葉こそがふさわしい。
 
読んでいるうちに、やはりこの店には行っておかねばならない、そして何かをお店で食べてみたいという気持ちに強烈に掻き立てられる。新宿は通勤・通学・レジャーと、お世話にならない日がないくらいの場所なのに、そしてこんなにも心づくしのお店らしいのに、行かないことはあり得ない。折しも店内は禁煙になったと風の便りで聞いたので、行ってみることにした。
 
平日の朝、少し早起きをしてベルクに入る。7時台のベルクは既に活気がみなぎっていた。店内のお客さんの回転もいい。カウンターで注文をして、その場で手早くできるモーニングプレートをいただきながら、これがベルクなのかと改めて思う。そこは本の通りの、細やかで、お客様とともに歩む温かい場所だった。次、時間があるときにまた寄りたいと、熱烈に支持される理由がわかる。
 
読んだ人を、確実にお店へと運ばせてしまう本。それが『新宿駅最後の小さなお店ベルク』だ。店主が教えてくれる、ありったけのよもやま話は全て奥深い。試行錯誤の上に作り上げた店はどんなこだわりでできているのか、どうして多くの人を惹きつけるのか。何度でも読み返して、自分の作り上げたいものに対するヒントとしても、取り入れたくなってしまうのだ。
 
 
 
 
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2020-11-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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