メディアグランプリ

思春期で反抗期で病み期だった私の心に効いた処方箋


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記事:佐倉咲良(リーディング・ライティング講座)
 
 
「どうしてこんなに何もかも上手くいかないんだろう」
思春期で反抗期で病み期だった14歳の私の精神状態は、どん底に落ちていた。成績が上がらない、部活でのスランプ、友達とのいざこざ。学校での生活が全てだった当時中学生の私にとって、上記に列挙した出来事は心にくるものがあった。常に5教科合計で400点以上取っていて、今回も頑張って勉強したのに取れなかった。所属していたソフトボール部で、こんなに素振りの練習をしているのに一向にボールに当たらず、このままではレギュラー争いから漏れてしまうかも。仲良しグループのある子が違う子の悪口を言い始めて、私は間に挟まれて「どっちの味方なの!?」って詰め寄られた。まじで八方塞がり。私はどうすればいいの?「泣きっ面に蜂」なんて表現があるが、そんなもんじゃない。泣きっ面に蜂にムカデに毛虫。腫れまくった私の心に処方箋が欲しい。しかしそんなものは、どんなに泣いても出てはこなかった。
 
処方箋のない状態で、その虫刺されはどんどん私を蝕んでいく。私が馬鹿だから、あの子と比べて点数が出ないのかな。私は運動神経が悪いから、あの子と比べて打率が悪いのかな。私は要領が悪いから、あの子と比べて友人関係で上手く立ち回れないのかな。「他人と自分を比べる」ということは大人になってもついついしてしまうが、やはり思春期ほど人の目を気にして他人と比べてしまう時期はないと思う。当時反抗期でもあり親との関係もうまくいってなかったこともマイナスの方向に働いて、私は病み期に突入した。人生で最初で最後のリストカットをしたのもこの時だった。なんで私の人生は人と比べて、こんなに上手くいかないんだろう。
 
もはや泣きっ面に蜂にムカデに毛虫どころではなかった。泣きっ面に蜂にムカデに毛虫にアブにダニにアリ。どんどん内に引きこもっていって、思考の負のループから抜け出せない。泣きすぎて、もう涙も出ないよ。この世界に私の味方なんていない。どうしてこの世界で生きるということがこんなにしんどいものであると知っておきながら、親は私をこの世界に産み落としたのだろう。もうどうしていいかわからない。誰か、助けて。誰か、私に処方箋をちょうだい。
 
リビングに行くと、一冊の真っ黄色の文庫本がたまたま机の上に置いてあった。題名は「カラフル」。表紙の可愛い字体と絵に惹かれて、なんとなく読んでみることにした。
 
読み始めたら、止まらなくなってしまった。心を病んでいる時こそ、また成長期こそ早寝早起きが大事であることは周知の事実だが、この本が面白すぎて夜更かしをしてしまっていた。難しい漢字や単語は一切使われていなくて、心にそっと寄り添ってくれるような優しい文調で読みやすい。人生何もかも上手くいかない中学3年生の主人公に自分を重ねながら、私はこの本のメッセージにたどり着いた。それは244ページと245ページの見開きページに書いてあった。
 
「人生は、ホームステイだと思えばいいのです」
「与えられたステイ先で、誰もが好きに過ごせばいいのです」
 
このページを読み終わった後、私は泣いていた。震えていたかもしれない。当時中学生の私はまだそこまで感受性が豊かではなくて、本や映画で泣くことなどそれまではなかった。しかしこの本はそんな私を人生で初めて泣かせた本だった。「私って、本で泣けるんだ」と自分の新しい一面に気づかせてくれた。そして思った。やっと処方箋を見つけた、と。
 
私は今、私という魂がこの身体にホームステイしている状態なんだ。今更ステイ先なんて変えられないし、私は他人と比べずに、与えられたものを大事にして精一杯頑張ればいいんだ。せいぜい数十年の人生、ホームステイだと思って気楽に過ごせばいいんだ。今まで背負っていたものを全ておろして、心が軽くなっていくのが分かった。朝の日の光、授業中にシャーペンをノートに滑らせる音、誰もいなくなった放課後の教室、グラウンドの土のにおい。何気ない日常の全てが美しく、また「カラフル」に見えた。私の心の腫れた部分に、処方された塗り薬が丁寧に塗られていくのが分かった。本の末尾にある阿川佐和子の解説までしっかりと読んだ。
 
私は病み期でも重い足を引きずって学校には行っていたが、現在、日本では不登校状態にある小中学生は14万人以上いて、その数は年々増えているらしい。その年代にとっては学校生活が人生の全てで、また同調圧力や集団行動が苦手で学校に行けなくなる子も多いのだという。そのような学校に行けなくて辛い子に、かつての私の様な学校生活に病んでいる子に、そして思春期で反抗期で病み期な年代の子に、ぜひ手に取って読んでもらいたい一冊である。大丈夫。人生上手くいかなくても気に病むことはないし、ホームステイだと思って気楽に生きればいいんだから。
 
 
 
 
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2020-11-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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