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メディアグランプリ

マイフォトストリームは悲劇の始まり


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:中村 光昭(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
神田にある行きつけの小料理屋で働くバイト女子。彼女はアイドル並みのルックスの上、性格も社交的でとても明るい。昨年、地方から上京してきたばかりで気取らず純粋で素朴。そこがおじさん達のハートを掴む。彼女目当てに通う常連さんも多い。彼女のおかけでカウンターと2つのテーブル席しかない小さな小料理屋は憩いを求めるサラリーマンで満席だ。女将さんは良い子が入ってくれたと上機嫌で、たまにサービスしてくれる。
 
悲しいかなそんな彼女にもついに彼氏ができてしまった。彼氏は小料理屋に鮮魚を配達している青年で、魚屋のひとり息子だ。その魚屋は昔から代々続く老舗で都内の一等地にある。僕もその青年とは面識があるのだが、背が高く、爽やか系で好感度抜群。見た目もよく、玉の輿の彼なら彼女に選ばれるのは納得できる。最近はその彼氏との付き合い上の悩み話をこっそり聞くのがこの店に通う僕の楽しみの一つだ。彼女は見るからにモテそうな彼氏のことが心配で仕方ない。まあよくありがちな悩みである。
 
ある日のことである。「彼氏とうまくいっている?」と軽く聞く。こんなこと職場でやったらセクハラで一発アウトだが、小料理屋ではこれが彼女との社交辞令となっている。その日も恋の悩みを聞いて欲しかったらしく、待っていましたとばかりに話し始めた。ところがいつもと違って声のトーンがどことなく沈んでいる。
 
「それがですね。今ちょっと気まずい雰囲気なんですよ」「というか私が怒っているんですけどね」「呆れちゃって」
 
ちょっと前から同棲したことは聞いていた。地方から上京してきた女子の一人暮らしに転がり込むとは許せん奴だと思わないでもないが、まああの彼なら許してあげよう。彼女も幸せそうだった。しかしだ! その彼がどうも何かやらかしたらしい。
 
「え! 何かあったの?」
沈んでいた彼女は吹っ切れたのか、そこから怒涛のマシンガントークが始まった。
 
「写真を見てしまいました。ショックです」「男と行くと言っていたんですよ。それが嘘かもしれないんですよ」「もう信じられないです」
 
彼氏は男友達とキャンプに行ったはずであった。ところが女の子とツーショットの写真が見つかってしまったのだ。それも何枚も楽しそうに笑顔で写っている写真が……。
 
彼氏は彼女の部屋にiPadを持ち込んでいる。それでNetflixを2人で見ているそうだ。つまり「彼氏iPad」を彼女がいつでも自由に使える状態にある。
 
彼氏がキャンプから帰ってきてからのある日、彼女は「彼氏iPad」を使っていて、何気なしに写真を開いた。そしてその写真を見つけてしまったのだ。
 
「? このツーショットなに」彼氏と楽しそうに知らない女が映った写真を見て、彼女は彼氏に向かって呟いた。
 
「……」「いやそれは……」彼氏はうろたえる。
 
その後、彼氏は色々言い訳をしたそうだ。その修羅場の詳しい内容までは聞かなかったが、彼氏はなんとか言い繕ってその場はやり過ごしたらしい。ただ彼女の気持ちはまだもモヤモヤしている。そりゃそうだよな。モテキャラ彼氏がキャンプに行った日に知らない女と写真を撮っている。
 
今のところ別れる、別れないまでには至ってないが、ギクシャクはしているとのことで、今後の展開は予断を許さない状況だ。僕が下手なことは言って別れる事になっても責任は取れないので、聞き役に徹して彼女のうっぷんばらしに付き合った。一通り、事の顛末を吐き出して彼女はスッキリしたようだ。
 
さて、彼はiPadを外に持ち出してないし、そんな危ない写真を彼女の目に触れるかもしれないiPadに保存することはしてない。ではなぜ発覚したのか? アップル製品に詳しい人はすでにお気づきだと思うが、iPhoneとiPadなど違ったデバイスでも同一アカウントでログインしていると写真を共有して見られるマイフォトストリーム機能というものがある。スマホで撮った写真がタブレットでも見られてしまうのだ。彼氏はうかつにも両デバイスでこの機能をオンにしてあったのだ。当然、 iPhoneで撮った写真はiPadで見ることができてしまった。
 
その結果、彼氏の楽しい思い出は悪夢と変わった。まあ自業自得である。
 
ちょっとした不注意からばれてしまったのだが、これは誰でも落ち入りそうな話だ。世界中でこのような悲劇に見舞われた人はかなりいるのではないか? また、意図的にこっそりと機能をオンにしている彼女、妻もいるかもしれない。機械音痴の彼氏、旦那は何も知らずにこのトラップにかかってしまう。男女逆のパターンもあるでしょう。気軽に撮った写真が証拠写真として水戸黄門の印籠ばりに目の前に突き出される。逃げようがない。「は、はー」と土下座して御用になるしかない。
 
アップルも罪ですね。いや正義の味方か。
 
この機能は知らなかった。これを読んで知ったので試してみたい。そう思ったあなた。もし、何か起きても当方は一切の責任を負いませんので悪しからず。
 
 
 
 
***
 
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2020-11-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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