メディアグランプリ

集中力の凧とBGMの風


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記事:北川 瞳(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
よく一度集中すると何も聞こえなくなる人がいるけど、私は昔からずっとそういう人たちが心底羨ましいと思っていた。そういった人たちはどうやって集中力をコントロールしているのか、ずっと不思議でしょうがなかった。
 
作業をしていると、ふとした瞬間に集中が切れてしまう時がある。家にいても、家の外でやっていても、どこかでその集中が、風がいきなり無くなった凧のようにいきなり落ちてしまう。
集中が切れるのには色んな理由がある。単に作業に飽きたというくらいなら家だとちょっと中断して休むなり、席を立って気分転換をしてまた始めることもできる。だけど、それだけだとどうにもならないケースもある。特に外出して作業をしているときなんかはそうだ。私は自分に関係ない話でも耳がそれを拾ってしまうせいで他人の話し声が聞こえる環境が本当に苦手だった。
 
例えば私がお茶を飲みながら本を読んでいて、近くの人が私の苦手なゴシップ話に花を咲かせている時も似たような感じで、やっぱりそっちに気を取られてしまう。こっちは目の前の本に集中したいのに、目で追っている文字より他人の声が頭に入ってくる結果になる。こうなると頭の中がグチャグチャして、飲みかけのカップを残してでも席を立ってしまいたくなる。私は予期していない刺激を受けると頭の中がその刺激に振り回されて疲れてしまうことがよくある。特に外にいると他人ばかりだからなおさら刺激を受けやすい。
 
また別の時、外のカフェで作業をしているとしよう。私は仕事用の薄いパソコンを取り出し、エディタを開き、さあ書くぞとキーボードを叩く……と、ここで近くの人が会話をしだした。私自身は集中が切れるのが嫌であまり耳に入れたくはないと頭では思っていても、そう思えば思うほど、私の耳は残念なことに会話が長くなればなるほどその声を拾おうとする。ここで集中が切れてしまうと、カップを置く音、食事を食べる音、店員の声……集中することで頭に入っていなかった音が、まるで突風のように一気に脳内に刺激として入り込んでくる。
こうなるともう、私はその「声」に精神を振り回されてる状態になる。強風に煽られる凧のように心はあっちこっちブンブン飛び回り、最終的に上手く制御できなくなって落ちてしまう。凧揚げの時に吹く風を制御できる人なんていないように(そんなことができたら人じゃなくて神様かなんかだ)こっちから外部に働きかけて刺激を減らそうなんていうのは無茶な話だ。人の話を自分の都合だけで遮る権利なんて誰も持っていないし、外部の音に敏感なのは小さいときからよくあったことで、今更どうしようもない。それなら自分で集中できる環境をこしらえるしか道はない。そう思った私は、強風は抑え込めないけど、強風の中でも上手く凧を飛ばすコツはあるはずだと信じて。
 
よくライフハック系のブログなんかを読んでいると、集中を切らさないためのテクニックとして「机の周りや視界に入る場所に不必要な物を置かない」ことが真っ先に挙げられている。作業に関係ない物が視界の中にあるとそっちに気をとられてしまうので、誘惑の原因になる物は視界から外して視覚の刺激を最小限に減らすといいですよ、という理屈だ。おまけに最低限視界に入る分だけ片付ければいいんだから、すぐに実行できる。
 
これを読んで「それなら聴覚も入ってくる刺激を最小限にすれば、私も外で集中できるようになるんじゃ……?」と思った私は、作業する時にBGMに使えそうな動画や音楽をインターネットで漁り(インターネットに一番感謝したくなる瞬間だ)、気に入ったものを大量にリストアップした。私の場合は音そのものより「人が会話している内容」が刺激になっていたので、ヘッドホンを使って「刺激を自分にとって心地いいものに上書きする」作戦でいくことにした。
耳栓やイヤーマフみたい「刺激を無くす」方向に向かわなかったのは、音を遮断するとかえって集中するのが難しかったことと、長い時間使うと圧迫感で耳が痛くなるのがどうにも苦手だったからだ。吹く風は強すぎても弱すぎても、私の凧は上手く上がらなかった。
 
今、私はまさにヘッドホンで音楽を聞きながらコワーキングスペースでこの文章を書いているけれど、刺激を無くすのではなく弱める方向にしたおかげで、その時の気分でBGMを選べる楽しさもあるし「この動画が終わるまでに作業を片付けるぞ!」と、作業の目標代わりにもなる。外からの刺激を上手く弱める術を覚えたことで、私の脳内に吹く刺激の風はやっと丁度いい風になり、私の凧は上手く上がるようになったのだ。
 
 
 
 
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2021-01-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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