メディアグランプリ

冬の宝石箱


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:石川まみ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
年末、屋久島の山岳部の雪景色の写真が、山岳ガイドさんたちから続々とSNSにアップされた。縄文杉も雪の中にたたずみ幻想的な姿を見せている。
 
かたや里では、ひまわりやハイビスカス、ブーゲンビリアなどの南国色豊かな花が咲いている。
 
島の中央には標高1936mの九州で一番高い山がそびえ、1800m級の山が連なっている。
 
さまざまな気候の土地があって山頂と里では温度差が平均15℃~20℃程度も違うのだ。
 
屋久島が世界自然遺産になった大きな理由は、ひとつの島の中で亜熱帯から冷温帯まで様々な植生を見ることができること。
 
冬は植物に詳しくない私にも、それが一番目に見えて分かる季節だ。
 
以前クリスマスシーズンに移住準備のために屋久島を訪れた時のことだ。
 
どこもかしこもクリスマスイルミネーションに彩られた東京から到着した私たちは、あまりの装飾の無さにびっくりした。
 
飾りといえば空港のカウンターに小さなクリスマスツリーがぽつんと置かれていただけ。
 
レンタカーの助手席でぼんやり外を眺めていると、沿道のあちらこちらで高さ2~3mほどの木に咲く、真っ赤な花に目が止まった。
 
「あの大きな赤い花はなんだろう。花の赤と濃いグリーンの葉とのコントラストがクリスマスカラーで、きれいだね」
 
群生地を見つけて車を降り、その木に近づくと、それはポインセチアだった。花だと思ったのは苞(ほう)だった。
 
高さ4mを超えるような木も有った。こんなに巨大なポインセチアが有るなんて! 今まで鉢植えでしか見たことが無かったので、それは不思議な光景だった。
 
ポインセチアの花言葉は「祝福する」「聖なる願い」「私の心は燃えている」
 
そんな屋久島流のクリスマスの祝福と美しさが素敵だと思った。
 
「屋久島のベストシーズンはいつ?」
 
屋久島に移住した私を訪ねて来てくれる友人、知人から一番聞かれる質問だ。
 
「何がしたいかによるよね」と言うと、初めて来る人の大半が「縄文杉を見に行きたい」と答える。
 
次に多いのは、もののけ姫の舞台とも言われる「白谷雲水峡」のトレッキング。
 
屋久島 = 縄文杉&もののけ姫の森。そんなイメージが強すぎるのかもしれない。
 
確かにそれらは素晴らしい場所ではあるけれど、それだけではあまりにもったいない!
 
昨年末に、ジュエリーデザインの勉強をしている友人から「来年こそ屋久島に行きたい」
 
「もう、コロナ自粛も限界! 創作意欲も湧かなくて。マスクを外して森の中で思いっきり深呼吸したい!」とメッセージが届き、オンライン飲み会をすることになった。
 
やはり、縄文杉には会いに行ってみたいという。
 
私は、雪の中にたたずむ縄文杉の写真を画面にかざしながら
 
「今、山は雪が積もってるから、両方ともそれなりの装備が必要だよ」と言った。
 
「えー! 屋久島で雪! じゃあ、私にはトレッキングは無理ね」
 
「いやいや、低地にもかえって冬の方が気持ちよく歩ける森が沢山あるよ。虫も少ないしね。うちの近くでは、ひまわり祭りも開催してる」
 
それから私は冬の楽しみ方を色々話した。
 
海辺の温泉にゆっくりつかりながら夕陽や星空を眺める素晴らしさ。運が良ければ温泉からクジラを見ることもできる。滝めぐり、カヤック、陶芸、釣りetc.
 
「なんだか頭が混乱しつつも聞いてるだけで癒されてきた!」と彼女の声は弾んでいる。
 
「里めぐりも中々いいよ」と私は言った。
 
暮らしてみると屋久島の冬は本当に過ごしやすい。朝晩のひんやりした空気が気持ちよくて犬の散歩も自然と距離が延びて、あちこちと歩き回れば、観光で来ていた時とはまた違う景色も見えてくる。
 
農道脇に続く黄色いつわぶきの花、古い民家の石垣に実っているかわいらしいパイナップル。まだ田植えが始まらない田んぼのピンクのレンゲ、そこに飛び交うミツバチたち。ひまわり畑を抜けて坂道を登れば見渡すかきりのポンカン、タンカン畑が大海原をバックに広がりオレンジ色の実がつやつやと輝いている。振り返れば近くの山は常緑樹の緑に赤や黄色の紅葉が、ぽつり、ぽつりと彩りを添えている。遠くの山は雪化粧だ。
 
「冬の屋久島の景色を想像すると、まるで宝石箱のようだね」と彼女は言った。
 
「そうそう、それそそれ! 宝石箱。さすがジュエリーデザイナーだね!」
 
「緊急事態宣言が出なければ、なるべく早く行きたいな!」彼女は最初よりだいぶ笑顔になった。
 
東京で勤めていた会社の後輩から年始にSNSにメッセージが届いた。
 
「屋久島へ行くならいつ頃がいいですか? おすすめの季節はありますか?」
 
「何がしたいかによるよ」と返信
 
「美味しい焼酎が飲みたいです! えへっ」
 
「えー、それなら、いつでもええやん!」私は思わず関西弁でつっこんだ。
 
窓辺で宝石箱のような景色を眺めながら懐かしい人たちと焼酎のグラスをただただ傾ける。そんな冬も悪くないなと心の中で呟いて、私は思わず笑顔になった。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
 

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

 

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325


■天狼院書店「シアターカフェ天狼院」

〒170-0013 東京都豊島区東池袋1丁目8-1 WACCA池袋 4F
営業時間:
平日 11:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
電話:03−6812−1984


2021-01-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事