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ワクチン接種のジレンマ


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記事:岩槻まなみ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「あなたはワクチン接種の権利が廻ってきたら打ちますか?」
 
テレビで新型コロナ「ワクチン接種」のニュースを見るたび、私の心はチクチク痛くなる。
今の私なら「打ちます」と即答できるし、家族や友人知人、世界中の人に「ワクチン、皆で打ちましょう!」って言える。
 
でも、10年前の私は決断できなかった。ワクチン接種にジレンマを抱えたのだ。
娘たちが中学生の時だった。
あの頃、子宮頸がんワクチンの推奨CMが毎日のようにテレビから流れていた。女優の仁科さん親子が出演して「子宮頸がんを予防できるワクチン」として大々的に国が接種を薦めていた。
 
だが、それと同時に、子宮頸がんワクチンによる副反応かもしれないという全身麻痺や学習機能低下の女の子たちがマスコミで毎日のように報道された。昨日まで元気いっぱいに学校に通っていたのにワクチンを接種したばかりに車椅子の生活になった、と泣いている少女がテレビ画面いっぱいに映し出された。本当にショッキングな映像だった。
 
今の時期にしか打つことができない大事なワクチンだと分っているし、どんなワクチンにだって何らかの副反応が起こる可能性があることも知っている。
 
今までだって、乳幼児期の予防接種は疑問も持たずに受けてきた。
もし、子宮頸がんワクチンもポリオやBCGのように、みんなが必ず受けるものなら疑問を持たずに打つことができたのだろうか。
分らない。どうしても親として答えが出せない。
国があれほど薦めるワクチンなのだし、打った方が良いに決まっている。でも万が一、万が一にも我が子があの車椅子の女の子のようになってしまったらと、思考が止まってしまった。
 
一応、中学生の娘たちと話し合ってみた。
娘たちは打ちたくないと言う。予想通りの返事だ。すでに打った友達からめちゃくちゃ痛い注射を3回も打つと、リアルの情報を収集済みのようだ。
「打ちたくない人は打たなくていい権利がある」と大人のように主張しているが、いやいや、これは親の考え方、親の決断がどうかの問題だよね。
 
必死に情報をネットでかき集めてみても決断できない。あれほどテレビCMで薦めておきながら、自治体のページを開くと「対象の方は無料で受けることはできますが、厚生労働省の勧告に基づき、子宮頸がん予防ワクチンの接種を積極的にはお勧めしていません」と記載されている。なぜ、こんな書き方なのかも疑問が残った。
 
モヤモヤしたまま時間ばかりが過ぎ、結局、迷って決められない状態のままタイミングを逃してしまったのだ。
 
「なぜ打たせてくれなかったの?」
 
大人になった娘たちから、そう言われる日が来るのではないか。親を責める気持ちを持つ日が来るのではないか。今さらどうすることも出来ないが、決断できなかったことを深く後悔している。
 
「親が自分の子どもに間違った処方をしてしまうことの恐怖は何にも代えがたいことだから、迷うのは当然だよ」と自分で自分を慰めてみた。ても、迷って決められないまま逃してしまった現実は変えられない。
大事なのは、マスコミやネットを見るのではなく、検証されたデータや事実を見ることなのだと分っていたはずなのに、親の心はジレンマに陥る。
 
「客観的には起こる確率の非常に小さいことが,主観的に過大評価されることがある」
 
後で分った事だが、私と同じようにジレンマを抱え、接種のタイミングを逃してしまった親は多かったと聞いた。
これは、人の心理として誰もが持っている思考の偏り(バイアス)だそうだ。
例えば、「子宮頸がんワクチン接種を受けた人のうち99.993%の方は重篤な副反応などなく,健康に暮らしている」という事実データを知ったとしても、それでも親のモヤモヤは解消されない。「0.007%の人は重篤な副反応が出るのだ」という不安の方を感じてしまう。
つまり、「ワクチンを受けて将来の心配を減らすこと」よりも、「ワクチンを打つことで何かが生じること」の方が怖いと思ってしまう。人には、そんな思考の偏り(バイアス)があるのだ。
 
子宮頸がんワクチンは思春期の女の子を対象に打つ初めてのワクチンである。
元々、この年代の女の子に見られる不安定さや学習障害や身体表現性障害が、ワクチンを打った後にたまたま起きてクローズアップされた、と言うことが事実らしい。
 
「100人に1人が子宮頸がんになるリスクがあり、ワクチン接種することで避けられる」と言われても、0.007%の中の一人 “あの全身麻痺の女の子”の映像が頭にこびりついて離れないのは当たり前なのだ。だからといって、親の勝手な思考の偏り(バイアス)で、または感情的な理由で、適切な医療かもしれない方法を捨ててしまうリスクを抱えてはいけない。
 
子宮頸がんワクチンだけではなく、今回の新型コロナのワクチン接種も同じだと思う。
「打たなければいけない」と強要しているのではない。当然、選択の自由はある。
ワクチン接種の権利が廻ってきた時、自分はどうしたいか、自分の子どもには、大切な友人だったらと、一人一人が思考を止めず偏りを無くして判断する問題なのだ。
 
 
 
 
***
 
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2021-02-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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