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いい子ちゃんはやめよう


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:すみれ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
これは今から20年ほど前の話だ。
私は父親の仕事の異動の都合で、小さい頃、引っ越すことが多くあった。海の見える町や、のどかな山の中にも住んだ。引っ越して住んだ場所の1つに、毎冬1メートルを優に超える積雪量がある場所があった。
 
その場所に住んでいた時は1日が朝の雪かきから始まった。
 
朝起きて外を見れば一面真っ白なのだ。
 
この文章を読んでいる方は雪かきをした事の無い方が多いような気がするのだが、雪は湿っていてとても重いものだ。雪はさらさらふわふわ綺麗なイメージがあるかもしれないが、そんな綺麗なものではない。
雪かきが終わればみんな汗だくだ。
 
社宅のアパートに住んでいる人達全員で協力し、皆各々スコップを持ちだして毎朝雪かきをしていた。
 
父親が雪についてこんなふうに言っていたのを覚えている。
 
「雪なんてただの水なのにね。はあ。大変だ」
 
アパートに住んでいる皆で協力して雪かきした雪は、敷地の端に高く積もった。
一生懸命雪かきをしても、明日にはまた新しい雪が積もる。
今日1日が終わってまた明日になったら、元通り。辺り一面真っ白だ。また雪かきをしないといけない。
 
雪かきをしないと車は出せないし、社宅の外から出ることができない。 田舎なので車なしでは生きていけない。
小学生たちは皆、学校へ行くまでの長い道のりを一列に並んで雪の中を進んだ。
 
その頃私が作った詩がある。
もう詳しくどんな詩だったか、ちゃんとは覚えていない。
 
確か、要約すると、私も妹みたいに雪かきの時遊んでいたかったなあ、親にいい顔して雪かきをしないといけないのはなんでなんだろう、私も妹と一緒に遊びたかったなあ、というような内容である。
 
あの頃から20年経って、さっぱり雪の積もらない、親からも遠く離れた場所に住んでいる。職場の同僚と雪についての話になって雪かきがどれだけ大変かという話をした時にこの詩のことがふっと頭をかすめた。
 
私が今住んでいる場所は 雪が積もったとしても10 cmくらい。50 cmも積もれば車が出せず、みんな会社に出て来られなくなり大変なことになったそうだ。
 
私はずっと雪はドカドカ降るものだと思っていたので、綺麗にハラハラと舞う雪をはじめて見て、なんて、綺麗なのだろうと思った。
雪の降り始めを見てとてもびっくりした。雪がふんわり舞っていた。
 
あの頃から20年経ち、これだけ違う場所に住んで、心も体も大きくなったはずなのに、あの詩を思い出して、いい子ちゃんでいてしまう私はあんまり変わってないのではないかということに気づいた。
 
いい顔をしすぎて、大人になってからは頭痛、帯状疱疹、胃の荒れ、謎の湿疹と身体中に様々な異常が出た。
 
思い起こせば、小さい頃私はものすごくお腹が弱くて、子供のくせに毎日頭痛がしていた。これはいい顔をし続けたストレスが原因だったのではないだろうか。
 
確かあの20年前くらいに書いたあの詩は、小学校の文集に選ばれた。それを選んだ先生や親から良い評価をもらったような気がする。
こんな詩に良い評価を与える人もちょっとどうかと今では思う。
家族はときどき、あんな詩を書いていたね、と私に言った。それはどういう意味だったんだろう。
 
私に、「親にいい顔する必要はないのだ、もっと自分の思う通りに自由に生きていいのだよ」と言ってくれる人はいなかったのだろうか。
言ってもらったのに忘れているだけだろうか。
 
日本の義務教育の世界とはそういうものだろうか。
 
私は今まで生きてきていい子ちゃんでいなくてはいけないと意識したことは一度もない。
 
なんだか何かが私をそうさせるのだ。
 
良い子でいなさいという祖父母の言いつけを忠実に守れる私は、ある種の才能を持っているのだろうか。
持っていてもあまり意味のない才能を。
 
小学生だった頃、クラスの同級生が先生に大いに歯向かう姿を見て、「この人達はどうしてこんなエネルギーが出てくるのだろう?」ととても不思議に思った。
従順にしていれば大人に歯向かうエネルギーは必要ないし、大きな声を出さなくても済む。先生から叩かれなくて済むし、ぎゃあぎゃあ怒られない。
 
私の周りにある何かや誰かが、歯向かうエネルギーを吸い取っていたのだろうか。
それとも、わたしは元々そういう性質なのだろうか。
 
あんな風にぎゃあぎゃあと歯向かって社会的に問題がないのは子供の時だけだ。
 
私の心の中には今でもその歯向かえなかった小さい頃の私が住んでいる。
私の外側は大きくなって、心の中の小さい私は、時々無駄に何かに歯向かうとする時がある。
 
そういう時は心の中の小さい私をよしよしとあやす。
 
大人になって、いい子ちゃんでいる必要はないということにやっと気づいて、そして、親から遠く離れることができて、私の体調はどんどん良くなってきている。頭痛も治った。
今までで今が一番楽しい。
 
自分のために生きているのだから。
いい子ちゃんはもうやめよう。
 
 
 
 
***
 
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2021-02-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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