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挨拶は誰のため?


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:鎌田良子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「ハイ!」「ハイ!」「保育士!」「医師!」「弁護士!」「消防士!」「税理士!」「公認会計士!」「行政書士!」……1月のある日、今日は「働くことについて」の出前授業。中学校を訪問、社会科授業の1コマである。コロナ禍であってもリアルに訪問する事が出来た喜び。沢山の手が上がり、発言する中学校3年生の生徒達。「士がつく職業で聞いたことがある仕事がある人〜」の質問に、残念ながら社会保険労務士の認知度は0%であった。
 
その日は青空。そして、実は密かに緊張していた。風が冷たく、待ち合わせで身体は冷え切ってしまったが、玄関から入ると、そこは気持ちの良い挨拶の嵐だった。廊下でも階段でも、出会う生徒全員が目を合わせて挨拶をしてくれる。驚いた。恥ずかしくなるお年頃のはず。つい最近まで中学生だった娘の中学とは、まるで違う光景だった。
 
なぜ私は緊張していたのか。その日私は出前授業のデビュー戦だった。3クラス、4時間目から6時間目の社会の授業。役割としては補助。なのに、なぜ緊張する必要があるのか。最近は、小学校でも中学校でも、先生からの一方的な授業ばかりでなく、ワークやディスカッションを取り入れて、双方向で行う事も多いそうだ。そこで私達も、クイズや寸劇、話し合う時間を十分に取り入れた。寸劇の内容は、上司が社員を認め、社員もお客様に対して気持ちの良い対応をするプラスのスパイラル的「やりがいデパート」と、社員がスマホをいじりながら上司に悪態をついた上、お客様に雑な対応をするマイナスのスパイラル的「暗闇百貨店」との比較を通して、「働くこと」や「社会保障など」について考えてもらう。よりによって、私の役は、雑な対応をする「暗闇百貨店」の社員黒○さんだった。
 
上司役の先輩が、待ち時間に練習に付き合ってくれた。「これくらい大袈裟に言っちゃって大丈夫だよ」と妙にアドリブをけしかける。頭が真っ白になり、セリフが飛んだり入れ替わったりした。
 
4時間目は、タイムキーパーや写真撮影などに徹し、先輩達の演技も観察。また緊張が始まり、お昼ご飯は食べた気がしなかった。それでも5時間目、あまり緊張せず、我ながら良く出来たと思った。飛び入りのお客様役の生徒達の演技もあって、盛り上がったはず。感想の場面。当然「やりがいデパートの方が社員の事を考えているし、社員も幸せそう。」という意見が多かった。しかし、「暗闇百貨店の方が自由で楽しそうだと思った」という意見も出たのである。1グループだけだったが、背筋が凍りついた。これは失敗ではないか。私が自由すぎる演技をしてしまったのか。責任を感じた。
でも、そんな事はなかった。クラスの雰囲気は自由な発言が活発で、朗らかだった。ひょうきんな子だったのでウケ狙いだったのかもしれないし、本当にそう思ったのかはわからない。確かに、上司にタメ口をきくのは決して褒められたものではないが、ある意味ではリラックスした状態とも言える。先生も笑っていた。そして、講師達も「そういう意見もあるね、ここでも多様性?」と微笑んでいた。
 
承認という言葉は聞いた事があると思う。私達も評価制度の運用支援で、上司と部下の面談などをフォローする時がある。承認が大切ですと説明する。「結果承認」も大切だけれども、「経過承認」も大切。もっと言うと、「存在承認」がその土台であると。口で言うのは簡単である。
 
挨拶は誰の為にするのだろうか。彼らは私達の為にしてくれた。つまり、相手の為にする事のように思う。存在承認の入り口は、挨拶ではないだろうか。
 
私はこの日の授業を通して、3つの承認を存分に味わった。生徒達から、アイコンタクト付きの挨拶という存在承認のシャワーを存分に浴びた。これは簡単なようで簡単ではない。授業が始まってから、社会科の先生が、全員がよく劇が見えるよう、席を変えていた。そして、「社会の先生も労働者です」という説明の時、先生がニヤリと生徒にした姿を見て、精神的な距離がとても近かった。若さもあるかもしれないが、日頃の取り組みが生きているように感じた。
そして、初めて参加した学校研究会で、私は居場所のようなものを感じた。新米の私の為に、「もっとこうしたら良いかも」と経過承認をしてもらえ、生徒達は沢山笑ってくれた。「もう黒○さん役の後任は鎌田さんに任せたわ」と「結果承認」まで頂けた。
 
帰り道、上司役の先輩から、前職の話や趣味のゴルフの話も聞いた。海外を渡り歩いていたそうだ。今月は2回小学校に訪問する。近所のおばさんのような人や年配の人を承認する事は、ジェネレーションギャップを超えて、将来彼らの役に立つ事を心から願う。中学生は可能性のかたまりで、想像以上にまぶしかった。
 
山本五十六の名言が好きだ。その中でも、「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず」が好きである。中学生達の未来に幸あれ。
 
 
 
 
***
 
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2021-02-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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