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「ごちそうさまでした」は「はじめまして」という意味

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:古田綾子(ライディング・ゼミ平日コース)
 
 
弟がロシア人の彼女とスカイプで話していたとき、画面の端に映った私を見つけて、「お姉さんにあいさつしたい」と言ってくれた。
 
彼女の話は聞いていたし、写真も見せてもらっていたけど、直接話すのは初めて。
 
もしかしたら、将来、妹になるかもしれない。
 
えっーと、最初は何て言えばいいかな。第一印象は大事だよね。親しみやすい、明るい感じがいいかな……
 
「ハイ! ハロー!」
 
弟のうしろから両手を振りながら、とっておきのスマイルを決める。
 
画面の向こうの彼女は、背筋をぴんと伸ばし、息をすっと吸い込んでこう言った。
 
「ごちそうさまでした」
 
「!!」
 
「それは、ご飯を食べた後にいう言葉だよ」と弟が訂正していたが、彼女の初めてのあいさつ、日本語の「ごちそうさまでした」は、私の心にやさしく着地した。
 
もちろん、本当に伝えたかった言葉は、「はじめまして」だろう。相手に正しくメッセージを伝えるなら、”Nice to meet you.”と英語で話しかけてもよかったはずだ。それでも、日本語であいさつすることを選んだのは、正確に伝えることよりも大事なことがあったんだと思う。
 
実際に、彼女の「ごちそうさまでした」からは、たくさんのことが伝わった。
 
最近、日本語を勉強し始めたこと。彼氏の家族に丁寧な言葉であいさつしたいという気持ち。相手の母国語で話しかけることで、言葉を心まで届けようとする姿勢。
 
彼女の思い描く未来には、きっと私たち家族も含まれているのだろう。
 
そう考えると、あの「ごちそうさまでした」は、「はじめまして」という意味になる。
 
もし、”Nice to meet you.”と言われていたらどうなっていただろう?
 
伝えたいメッセージは正しく伝わったはずだ。でも、それ以上のものが伝わることは、なかったかもしれない。心の距離は、少し違っていたかもしれない。
 
そんなことを考えていたとき、「まさにこれだ!」という言葉に出会った。
 
「相手が理解できる言葉で話せば、相手の頭に届き、相手の母国語で話せば、心に届く」
 
(If you talk to a man in a language he understands, that goes to his head. If you talk to him in his language, that goes to his heart.)
 
南アフリカ初の黒人大統領だったネルソン・マンデラ氏の言葉だ。
 
本当にその通りだ!
 
彼女の「ごちそうさまでした」は、確かに、私の心に届いた。
 
相手の心まで言葉を届けることは、日本語でもなかなか難しい。話す言葉が違う相手なら、なおさらだ。でも、反対に、相手の母国語で話しかければ、少しでも心に近いところまで言葉が届くかもしれない。それなら、簡単なあいさつくらいはロシア語でできるようになりたい。いつか、彼女のご両親と話す機会があるかもしれない。
 
その「いつか」が、やってきた。あのあと、二人は結婚し、アメリカに住んでいる。今年のお正月、義妹がロシアに一時帰国したタイミングで、弟のいるアメリカと、義妹とご両親がいるロシア、私と両親がいる日本の3か所をZoomでつなぎ、両家が初めて顔を合わせることになった。
 
「最初のあいさつは、絶対にロシア語でしよう」
 
ロシア語で自分の名前を紹介するのは、とても簡単だ。「私はタロウです」なら、「ヤー、タロウ」でいい。それを母親に教えると、すぐに練習を始めた。
 
Zoomが始まると、まず、弟が自分の家族を紹介。それが終わると、義妹が自分の両親を紹介した。次は、日本チームの番だ。
 
まずは、私が先陣を切る。「ミーニャ ザヴート アヤコ」(私の名前はアヤコです)
 
次に、母親がたたみかける。「ヤー 〇〇」(私は〇〇です)
 
ロシア側から大きな歓声が上がった。3人とも満面の笑みを浮かべている。
 
私たちのロシア語は、心まで届いたのかもしれない。
 
すると義妹が日本語で、「お母さんから伝えたいことがあります」と言った。
 
私たちは神経を集中して耳を傾ける。
 
「ヨイオトシオ」
 
ん? あっ、わかった。
 
「よいお年を」って言ってくれたよと両親に伝えると、二人は、こぼれんばかりの笑顔になった。
 
まさかここで日本語が来るとは思っていなかった。同時に、お互いが相手の母国語でメッセージを伝えようとしていたことがわかり、心が温かくなった。同じ気持ちで、同じ思いを大切にしている。
 
その後は、日本語と英語とロシア語がまぜこぜになって、会話が進んだが、最初の言葉が心に届いたおかげで、そのあとは、相手の母国語でなくても、うまく話せなくても、心まで言葉が届いているように感じた。
 
一から十まで「相手の母国語で話す」のは、難しい。やろうと思ったら並大抵の努力では足りないだろう。でも、最初の一言だけでも話すことができれば、その言葉は相手の心に届く。
 
 
 
 
***
 
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2021-02-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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