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異なることを再認識して―お歯黒とコサックダンスにハラスメント問題-

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:岩井さとり(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「パワハラ・セクハラ問題に関する講義を実施しますので、関係者は予定をしてください」
 
昨年(2020年)6月にパワハラ防止法が施行されたことに伴い、会社では最近やたらとそんな社員教育が行われるようになった。
 
会社自身ももっぱら次のようなスローガン、「社員全員が働きやすいストレスフリーな職場環境を目指す」なんていうものを掲げており、その一環として、こちらハラスメント問題にまつわる講義も必須教育となっている。
 
ご多分にもれず、社員のひとりである私もこの半年間で数回にわたり同様の講義を受けることとなったのだが、業務中、忙しい最中に拘束される数時間……なかなかのストレスだ。
 
何はともあれ、大ハラスメント時代の到来はすぐそこのようで、聞いたところによると世の中にはコクハラ、新型パワハラ、ズムハラ、エイハラ、ブラハラetc……と多彩なラインナップで様々なハラスメントが存在しているとのことなのだ。
 
もはや何か2文字(〇〇)に+ハラをすれば、とりあえず世の中大抵のことはハラスメントになるのではなかろうかとも思う。なんと生きづらい社会となったものか。
 
しかし思うに、人間同士が関われば時に行き違いは起こり、ストレスを感じたり、不快な思いをすることは残念ながらあるもの。それが時に法的な解決が必要となる大きな問題にまで発展してしまう不幸が、昨今世間で騒がれているハラスメント問題なのだろうが。
 
回避のためには、やはり、結局のところは基本に立ち戻り、相手を如何に思いやれるかに尽きるのではなかろうか。
 
幼稚園時代であればお友達が嫌だということはやっちゃだめよ、と言ったレベル……。
 
しかし時に事態はこじれてしまう。
 
そこで、いっそのこと言葉の通じないロシア人と仕切りのない一部屋で生活するものだと思いつつ日々生きてみるのはいかがだろうか。
 
かつて私は北京にて1年間の語学留学をしたことがあり、その際に数カ月にわたりルームメイトがロシア人だった時期があった。
 
ロシアで中等教育を終えた直後に訪中した彼女は当時、確か16歳くらいだったと思う。
 
グリーンがかったブラウンの髪や瞳を持っていてとても綺麗だと思った。
 
ちなみに同室になった初日の夜はお互い微笑み合うことしかできなかった。
 
なぜなら彼女は一言も中国語を知らないどころか、英語も全くできない状態で単独シベリア鉄道に乗って北京の地にやって来ていたのだ。
 
何とかコミュニケーションを試みるが、彼女の口から発されるのはこれまで聞いたことのないロシア語。私の耳にはシュパシュパと言った音にしか感じられず、まさに絶望。
 
しかし、そんな絶望状態でスタートした彼女との共同生活だったが、初日の夜の不安とは裏腹に、振り返ってみると不快な思いをした記憶が全くと言っていいほどない。
 
その後、彼女がすごい勢いで生活に必要な中国語を習得していったこともあるが、とはいえ、お互い習いたての拙い中国語を駆使して何とか意思疎通を図っていたあの日々、特段問題が起こらず、精神的苦痛もなかったのは何故だったのか。
 
言葉が単なるツールであり、かつそのスペックが著しく低かったあの状況下、要するに私たちは無意識かつ必然的に他の情報に基づき判断し、相手をよく見て、思いやって生活していたのだ。更にもう一つ、その根底には相手を全くの『異な存在』と位置付けしていたこともあるように思う。
 
多少言葉が通じるようになったある日、最初に出会った夜に私に向けてシュパシュパ言っていた言葉は何であったのか、彼女に問い合わせてみた。
 
「あなたは日本人ですか? 歯が白いから独身ですか?」
 
との質問を繰り返し投げかけていたそうだ。
 
どこの国から来たのか問われることは理解できるが、はて、歯が白いと独身であるとはどういうことか!?
 
え? それってもしや「お歯黒」のこと!? ……いつの時代の話なんだ!?
 
とはいえ、私もロシアと言えば、ボルシチにピロシキ、寒さはウォッカで吹き飛ばす。みんなコサックダンス踊れるんでしょ!? くらいのイメージしかなかった。
 
要するに何も知らなかった。
 
しかし、知らないからこそ、目の前にいるグリーンブラウンの瞳の人物に対し、何もかもが違う『異な存在』であると至極当然の概念がスムーズに、かつなんとも強烈に自分の中に構築されていたとも感じた。そして自分の中に出来上がっていたその感覚がベースとなり、共同生活において彼女に対し自分を押しつけるようなコミュニケーションを取ることも一切なかったのだ。それは相手もしかり。
 
だって違うんだもん。じゃぁ、しょうがない。でも共に生活して行こう。
 
と大抵のことは受け入れつつ、狭い部屋で二人仲良く過ごしていたものである。
 
留学という非日常の日々においては勿論当たり前の光景ではあるが、昨今のハラスメント問題に当てはめると逆にその非日常の中に問題解決につながるヒントというか、問題解決に向けて思考を切り替えるポイントのようなものがあるとも感じた。
 
相手を思いやり、相手を尊重する行為はその前提としてその相手が全く自分とは違う存在であるということも再認識することが重要ではなかろうか!? しかし、その感覚は同じ日本人だとか、会社だとか、同性だとが、さまざまな理由で日常の中では境界線があいまいになりがちだ。ふと気づくと目の前の人物に対し、同じ気持ちでいてくれるだろう、同じ考えでいるのではないかなどと変な思い込みに捉われていたりはしないか。時にその思い込みからミスコミュニケーションが生まれ、双方に誤解を与えたり、分かり合えないと衝突が生まれたりもする。
 
これは日常に潜んでいるトラップではないだろうか。
 
しかし彼女との日々はいとも簡単に相手を『異な存在』であると強烈に認識し、その上で双方を尊重して過ごすことができていたのだ。しかもその共同生活の中に〇〇+ハラになるような双方を不快にする要素は全く見当たらない。
 
そしてこの経験の中、自身の内側にあった当時の感覚を思い出すことは、うっかり陥ってしまっている思い込みの状態から自分を引き戻すにとても有効的であるとも気付いた。
 
そうだ、私は引き続き心の部屋にシュパシュパ言っているロシア人を住まわせよう。
 
目の前の人物は『異な存在』であることを再認識、その当たり前に立ち戻った上で相手を尊重して日常を進めていこうではないか。
 
そんな思いに達しつつ、彼女のグリーンがかったブラウンの瞳を思い出してみた。
 
 
 
 
***
 
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2021-02-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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