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惚れてまうやろーーーー!


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記事:ぴぼなっち(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
「ママーーーー。4$@#&!*@#+/?g*&(8」
 
弟夫婦は3ヶ月に一度、子供たち2人(兄妹)を連れて実家にやってくる。同じ都府県に住んでいて片道1時間もかからないから来やすいというものあるだろうし、私の両親も孫たちの顔を見ると元気になるからか、こちらの予定を無視した突然の来訪でも大歓迎している。
 
実家の二階の部屋を間借りしている私のところにも、この春小学校2年生になる甥っ子がいつも「たくちゃん、ご飯だよ〜」と呼びに来てくれるのだが、昨日は違った。寝起きの私が布団からひょいっと顔を出すと、そこには天使がにっこり微笑んでいたのだ。
 
彼女は今、1歳10ヶ月になったばかり。ママの心配をよそに、お兄ちゃんのうしろをよちよち歩きで階段を登ってきたのだ。実家の階段、けっこう急なんだけどな……。
 
年明けに会ったときはまだハイハイして動き回っていたから、あれからほんの3ヶ月ほどでこれほど歩き回れるようになるなんて、少なくても私や両親は予想していなかったわけで、布団の中から寝起きで見た彼女の微笑みはまさに天使のようだった。慌てて眼鏡をかけて、まじまじと天使の微笑みを見つめてしまった。
 
人の心にズカズカと入り込んで、愛らしい笑顔で人の心をめろめろに破壊していく。「惚れてまうやろーーーー!」とは、まさにこのことである。
 
幼児が歩き始めると親は大変だという声をよく耳にする。行動範囲が一気に広がり、好奇心旺盛に心が赴くままに目を離すとすぐにいなくなってしまうからだろう。生憎の雨模様だった週末、この小さな天使が家の中を歩き回った。急な階段を登ってきたかと思うと、隣の部屋でお兄ちゃんが組み立てていたピタゴラスイッチに興味を示し、レール代りに使っていた筒をママに「はい!」と嬉しそうに持っていってしまう。
 
イライラしたお兄ちゃんに部屋から閉め出されてしまうと、今度はパパが焼いているたこ焼きに興味を示し、あっという間に生のタコを口の中へ。そして、たったかたーと軽快な足音を残して次の獲物を探しに行くのである。
 
おじさんが歩くとドタドタした鈍い音が鳴り響くのに、なぜ姪っ子が走り回る足音は軽快なリズムを刻むのだろうか。ふだん子育てに携わらない第三者の私には、パパ・ママの気苦労をよそ目にすべてが愛らしく見えてしまうから不思議だ。
 
以前、押し入れにしまってあった私の卒園アルバムを開いたことがある。
そこには父の几帳面で丁寧な字で、
 
「仕事から疲れて帰ってきても、キミに『やぁ』ってやられると、すべて吹き飛んでしまうんだ」
 
と書かれていた。
 
おそらく、私も「天使」だったのだ。
すべての大人が、かつては「天使」だったのだ。
 
独身の私にはまだ知るよしもないが、日々の仕事や家事・育児が大変な中でも、ふとした仕草で癒される、子供ってそういう存在なのだろう。久しぶりに、結婚して子育ても良いなと思った。それほど、心を撃ち抜かれたのだ。
 
だが残念なことに、今の日本社会には余裕がないのかもしれない。
Twitterのようなソーシャル・ネットワークが発達した現在では、
 
「電車の中でベビーカーを蹴られた」
「子供がうるさいと罵られた」
「(保育園で)子供たちの歌声に苦情の連絡がくる」
 
といった、小さな子供や子連れの若いお母さんたちへの口撃・攻撃情報が後を絶たない。子供が生きづらい世界は、今の子供たちが大人になって子育てをする頃には、もっと生きづらい社会になっているような気がする。なにせ、生き生きとした子供時代を阻害され、天使のような愛されるべき存在が認めてもらえない世代が親になるのだから。
 
若い世代が子育てをできない社会に未来はないのではないか。
すべての大人に子供時代があったわけで、社会に迷惑をかけながら大きくなったはずなのに。
 
ひょっとすると、私の姪っ子のような天使に出会ったことがないのだろうか。だとすれば、これほど勿体無いことはない。保育士が足りないということも叫ばれているし、近所の地域コミュニティ活動の一環として年配の方々が携わっている小学生の通学サポートのように、保育園のサポートスタッフをボランティア募集してみたらどうだろうか。
 
天使の世代との交流が促進されれば、日本の未来を担う子供たちに優しい社会ができるのではないだろうか。なんてことを、姪っ子の天使のような微笑みを見ながら考えてしまった。
 
「ちーちゃん、どうしたの?え?お部屋の中にちょうちょさんがいたの?かわいいねーーー」
 
冒頭の解読不明な姪っ子の発した小鳥がさえずるような言葉は、ママにしか解読できない暗号だった。こういうのは、パパ・ママの特権だよなぁ。こうして、パパ・ママは束の間の休息を、甥っ子、姪っ子たちはジジ・ババに存分に遊んでもらって、嵐のように帰って行った。
 
次はいつ来るのかな。今から楽しみで仕方がない。
天使たちのためにも、もう少し余裕のある社会にならないかな。
彼らが、存分に遊び回れる世の中に。
 
 
 
 
****

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2021-03-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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