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宝石が宝石たる所以


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記事:みき(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「自分の石を持ってきてくださいね」
久しぶりに連絡を取った生徒さんとお茶をすることになった時、彼女からこう言われた。石?石ってパワーストーンみたいなもの?ジュエリーとか?と聞いてみると、何でもいいらしい。彼女は石と会話ができるようになったので、練習をしたいとのことだった。
 
私は、石が好きなので、家のあちこちに水晶やアメジストなど、さまざまな石を置いている。物によっては、光にあたるとレインボーが見えたりするので、たまに持ち上げて光にかざすこともある。私が持ち出したのは、レインボーが見える直径8センチくらいの水晶玉、シングルポイントと言われる六角形で先が剣のように尖っているレムリアンクオーツ、そして、数年前、仕事をキッカケに出会ったスフェーンのペンダントだった。
 
この最後のスフェーンに出会った仕事は、宝石から選ぶオーダージュエリーのカタログを作るプロジェクトだった。カタログを作るにあたって、インタビューもするし、実際に撮影する石も見せてもらうのだが、その石たちがすごいのだ。すごくすごくクオリティの高いものなので、ケースに入っていても威厳さえ感じる。キラキラときれいなだけでなく、賢そうな石、気品のある石、男性的な石と、その個性も見える。
「出して、手に乗せてもいいですよ」
え、本当にいいんですか、と言いながらも、触ってみたい。そういう石を手に乗せるとどうなるかわかるだろうか。例えば、これまで一番高価だった婚約指輪の場合は、既にリングになっていて、石だけを手に乗せるという経験はない。そして、その婚約指輪よりも高価な石たち。ドキドキしながら、控えめに、小さな石を手の平に乗せてもらったら、その瞬間、フワーっと熱を感じる。そして、驚くなかれ、手の平に汗をかくのか、手の平がキラキラと輝き始めたのだ。何だこれ。あれも触ってみたい、これも触ってみたい。その時、私が仕事のことを忘れたのは言うまでもない。手の平から幸せを感じる経験なんてなかった。正気に戻って、ひとつひとつ撮影を始める。不思議だったのは、既にジュエリーとして完成しているクライアント所有のものは、とてもとても美しいのだけれど、触っても、手の平がキラキラするようなことはなかった。多分、それはクライアントに同調しているから、私に反応する訳ない、という感じだったのかもしれない。撮影は無事終わり、その後、カタログも完成し、納品。無事に終わったことにホッとしていたのだけれど、心のどこかで、あの時見た石が忘れられない。いやいや、私が買えるようなものではない。
 
それからどれくらい経っただろうか、そのクライアントさんにお会いした時「あの石、まだ誰の手元にも行ってませんよ」と言われて、とっさに「あの石はおいくらですか」と聞いてしまっていた。デザイン費や台座の制作だけでも20万円で、あの石自体は軽く100万円を超えていた。ぐるぐるぐるぐると、あの石のことばかり考えてしまう。貯金がない訳ではないけれど、私が、あの高価なものを身につけてもいいのかどうかわからない。浮いてしまわないか。ある意味で無駄遣いになってしまわないか。
 
そんな時、姉に会ったので相談したら「いーじゃーん。ママの遺してくれたお金があるから、それで買って、ママに買ってもらったと思えばいいよ」と。急に飛んできた変化球だったけど、まあいいか。縁だ。私は、清水の舞台から飛び降りた。
 
ここで、最初の話に戻るのだか、私が清水の舞台から飛び降りて手に入れた石を見てもらったのだ。彼女は、手の平に乗せた途端「これ、なんかすごいですね」はい、清水から飛び降りて買いました。「そういう石ってすごいんですねぇ。でも、最初に石が言うこと言っていいですか」はい、もちろん。「この石の浄化はどうされていますか。なんか頻繁ではないので我慢しているけど、変えてほしいって言ってます。きついんだそうです。できれば、自然で優しいものにして欲しいと」何でそんなことわかるのー。実は、購入した時に中性洗剤を垂らした水に一晩漬けて洗浄して下さい、と言われて守っていたのだけれど、勧められた洗剤は、少々洗浄力強めのものだったのだ。
 
もう、彼女から聞く“石からのメッセージ”を信じない訳にはいかない。その後のメッセージは、この石は、これから私を、今の私が想像できないくらいステップアップしたところまで押し上げてくれること、そのためにここ一年くらいを迷宮にしたこと、そして、そろそろ新しい扉を見せてくれること、だった。信じようと決めた途端、ワクワクする事ばかり。実際、一年前、友人と作った会社からの卒業を決めて、こっそり仕事はしても、少し影を潜めていた。そこから抜け出すキッカケがわからないままだった私に、この石は、メッセージを伝えるために、石のメッセージを聞ける彼女に、久々に会う機会を作ってくれたのかもしれない。石のパワーというのは計り知れない。昔々、ルパンのような怪盗たちが宝石を狙ったのは、それが高価だからではなく、石のパワーに魅せられたからだったんだな、と今更ながら納得した。
 
 
 
 
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2021-04-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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