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メディアグランプリ

手のひらの星屑


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:永久保宏代(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「これって、ダイヤモンドじゃない?!」「わ〜!きれ〜い!」「キラキラしている〜!」
額を寄せた仲良し女子3人は、細かい光を反射する手のひらに置いた小石を見て、目を輝かせました。
 
そこはセメント工場の石置き場。採掘された白い石灰石はどれも直径30センチほどでしたが、中にはそれより大きなもの、小さなものもあり、積み上げられた大小様々な石は、子供の背丈をはるかに越えた山になっていました。
私たち3人は、ゴツゴツしたその石の上を、注意深くバランスを取りながら移動して、各々が「コレ!」という一推しの欠片を探していました。
当時、確か小学4〜5年生で、化石や地層について学んだばかりだったと思います。そんなわけで、私たちの探す一推しの欠片とは、貝が付着していたり、異なる石質が合わさったような石でした。
実際、一つひとつを注意深く見てみると、貝殻の跡がついていたり、白と薄茶色の層が合わさったようなものもありました。
「この中で最高の石を選んで先生に持って行こうよ!」 と、盛り上がったのが私たちの石探しの始まりでした。
 
それまで、通学路近くのその石置き場が気になったことは、ただの一度も無かったのに、化石や地層が見つかるかも知れないと思うと、宝の山に見えるから不思議です。
放課後のそこでの時間は、手に取った石の表情から堆積当時の環境や地球について想像し、地質調査気分を味わえる、とてもワクワクする時間でした。
額の汗を拭いながら夢中になって探していると、3人とも手や顔、服に靴、赤いランドセルまでも石灰石の粉でいつの間にか白くなっていたのでした。
 
数日間、立て続けに石置き場に通っていた私たちでしたが、それまで無人だったその場に突如セメント工場のおじさんが現れて、危ないから入ってはいけないとひどく怒られてしまいました。
怒られた私たちは、その日を最後に地質調査隊を解散し、石に夢中になった日々もいつの間にか忘れてしまいました。
あの時、もし私にもう少し探究心があったなら、後にその道へ進み、今頃は地質に関係した仕事に就いていたのかもしれませんが、残念ながらその方面は全く擦りもしない人生を送ってきました。
 
それでも、あの頃の記憶は残っていたのでしょう。大人になって国内・海外へ出かけるようになり、ドーバー海峡の白い崖や、グランドキャニオンなどの地層、マグマが冷えてできた柱状節理などを目にしては周りの誰よりも感動している私がいましたし、石造りの遺跡から当時の人々の生活を、石畳や城壁、石垣から石工の仕事を想像したりしていました。
ここ数年は、旅先で気になる小石を持ち帰ってはネットで検索したり、親しくさせていただいている地質の専門家からお話しを伺っては、広く深い知識に触れてその世界を楽しんでいます。
 
ちなみに、冒頭のキラキラと輝いていた小石ですが、結晶質石灰岩といって、石灰岩の炭酸カルシウムが再結晶化したもので、いわゆる大理石として分類されるものであると、何十年も後に分かりました。
 
そもそも石や地質に対して自分がなぜこんなに興味を抱くのか、その理由を改めて考えた時、やはり何と言っても、それらが時空を越えて、その地の成り立ちや歴史を私たちに伝えてくれる点だと思います。
 
かつて、そこが砂地だったのか、泥地だったのか、海底から隆起したのか、マグマが流れたのか、どのような生物が住んでいたのか。更には、住んでいた人々の暮らしぶりはどうだったのか、そんな情報まで伝えてくれるからだと思います。
加えて、今日地上に生きる私たちも、今、一つの層を作っているということを考えた時、環境に対して重い責任も感じ、後世へのメッセージを刻んでいるということに思いを巡らせることもできます。
 
気が遠くなるほど太古の昔から、膨大な時間を経て、道や壁、または小さな欠片となって出会うその時まで、それらが地球と人の営みを見てきたこと、これからもそれが続いていくことを想像すると、何かこう、感慨深い思いになるのです。
 
先日、たまたま仕事でこのような出来事がありました。地球鉱物を分析・研究している若い研究者とお話した時のこと。研究がどのような分野に繋がっていくのかを伺ったところ、
「地球や地球環境について掘り下げるだけでなく、地球鉱物の分析結果を、隕石や他の惑星から持ち帰った鉱物の分析結果と照合することで、地球以外の星の成り立ちを知る手がかりを得ることができます」と、とてもイキイキとした表情で話してくれました。
実はだいぶ前に、「考えてみれば、石は地球という星の欠片だ……!」と独り静かに感動しことがあった私。その方のお話を伺っているうちに、私が感動したことの裏付けをいただけたような思いで嬉しくなり、それをお伝えしたところ、共感して下さって話が盛り上がりました。
 
手のひらの小石は地球という輝く星の欠片。
 
そう考えると、ただの石が今までと違ったものに見えてきませんか。
夜空にキラキラと光る星にロマンを感じるように、小さな石にもキラキラとしたロマンを感じるのでした。
 
 
 
 
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2021-04-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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