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全身ユニクロおばさんが「うさとの服」に呼ばれた話


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:國井江美子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「うさとの服」をご存知だろうか?
多分、きっと、いや絶対……に限りなく近い確率で大半の人はご存じないはず。
 
なぜなら、「うさとの服」は京都にある本店以外で、店舗での販売を行っていないのだ。
昨年の6月に、コロナ禍でうさとファン待望のネット販売が開始されたものの、商品はかなり限定されている。
他の販路は、「うさとの服」のコーディネーター資格を持つ人が、全国各地の会場で「展示会」を開き、手売りされているのみだ。
つまり「うさとの服」は、市場に流通していない。
 
だが、その服の価値をわかる一部の限られたコアな人たちの間で、とても人気のある服なのだ。
 
わたしが「うさとの服」の存在を知ったのは、10年以上も前になる。
 
とある都内のビルで、たまたまエレベーターに乗り合わせた女性が、なんだか格式高そうな、しかし一風変わった“民族衣装”のような服を着ていたのだ。
その人にはすごく似合っていたので、
 
『素敵な服ですね!』と、思わず声をかけてしまったのだ。
 
『ありがとうございます。これは“波動が上がる”服なんですよ~』
 
『えっ? “波動が上がる”服?!』
 
『はい。“自然のいのちを着る”服なんで』
 
……いやいや、ちょっと待ってくれよ。
波動が上がる服? 自然のいのちを着る?
 
『“うさとの服”っていうんです。よかったらネットで見てみてください』
 
そう言い残し、その女性は閉まる扉の向こうに消えていった。
 
“う・さ・と”……の服。
 
ふだん非常ーーーに物覚えの悪いわたしだが、うさぎ年生まれだったことも関係したのか、不思議とその3文字はスッと頭にインプットできた。
 
しかし、だ。
気にならないと言ったら嘘になるが、現実的に考えて自分が着るわけがないな、と思った。
平素、ユニクロと無印良品で間に合っていたからだ。
それに……着こなせる自信もなかった。
 
とはいえ、調べるのはタダである。
「うさとの服」にまつわるストーリーは、大変に興味深いものだった。
 
“うさと”の創設者は、さとううさぶろう(佐藤卯三郎)さんだ。
元々うさぶろうさんは、日本で商業デザイナーをしていた。
紆余曲折を経てベルギーの首都、ブリュッセルでオートクチュール(高級注文服)の製作に携わるようになる。
 
華やかな世界に身を置いていた彼に転機が訪れた。
ある日突然に“見えざる者からの声”が聞こえる、という神秘体験をしたのだ。
その“声の主”との「問答」のなかで、『このままでは地球がもたない』というメッセージをもらう。
 
うさぶろうさんは〈自分にできることは何か?〉を真剣に模索し始めた。
考えれば考えるほど〈自分には服を作ることしかない〉思った。
彼が辿り着いた答えは【いのちのかたまりのような服を作りたい】だった。
 
自然を破壊しない、自然素材で作られた、自然に還る服。
 
【いのちのかたまりのような服】とは、わたしたち人間の生命を生かしてくれる仕組みである「自然」を「まとう」ような服だった。
 
うさぶろうさんは【いのちのかたまりのような服】を作るにふさわしい“エネルギーの高い布”を求めて世界各国を探し歩いた。
 
探し求めていた“いのちの布”は、タイのチェンマイで「ウサブロウ・サトウ」が現れるのを静かに待っていた。
 
「うさとの服」の“いのちの布”は、すべてオーガニックの綿・麻・絹だ。
徹底的に天然素材にこだわっている。
化学農薬や肥料、化学染料は使わない。
決してケミカルなものを混ぜない。
手紡ぎ、手織り、草木のエキスを凝縮した手染め……手作業にもこだわり、妥協しない。
 
『人はみな自然の一部だから、それを思い出す服として作った』
と、うさぶろうさんは言う。
 
《……うわっ、着てみたい。
でもなぁ、いい値段するだろうし、まぁ、いずれ……》
そこは根っからの貧乏性&めんどくさがり屋のわたしである。
「うさとの服」は「キープ案件」となった。
 
が、時は巡り2021年。
わたしは天狼院書店のライティング・ゼミの受講生となった。
毎週「人に読まれる」2000文字の投稿をすることが課題だ。
当然ながら、毎週ともなると“ネタ”も尽きてくる。
《あーーぁ、次の“ネタ”どうするよ?》
と、ひとりボヤいていたところ、ふと頭に浮かんだのは「う・さ・と」の3文字だった。
 
『いついくの? 今でしょ!』
心の中の林修先生に背中を押されたわたしは、最寄りの「うさと展示会」まで駆けつけた。
 
全身ユニクロに身を包んだわたしが、緊張しないわけがない。
肩身の狭い思いで会場に足を踏み入れた。
 
『どうぞ気になるものがあったら、どんどん試着してくださいね~』
 
うさとのコーディネーターらしき女性が、笑顔で温かく迎え入れてくれた。
もちろん彼女は、全身「うさとの服」をお召しである。
 
彼女は、わたしに似合いそうな服をあれやこれやと、すすめてくれた。
わたしは、言われるがまま「うさとの服」をたくさん着させていただいた。
 
どの服も見事な織りで、自然の出す色味に驚いた。
袖を通すと、渇いた心がゆっくりと潤っていくような、満たされていくような気がした。
 
選択肢が多いと、人は決断力が著しく鈍るらしい。
ご多分に漏れず、わたしもその中のひとりだった。
 
何も買わずに展示会場を出る、という実に「しょっぱい」いや「喉の奥まで塩辛い」結論を出した。
 
そして、展示会場の近くにあった喫茶店にトボトボと入った。
 
《“うさと”は諦めて、別の“ネタ”でも考えるか~》と、思った。
 
けれども、打ち消せども打ち消せども「あの服」が頭から離れない。
 
「あの服」は、会場に入った瞬間に“パッ”と目に飛び込んできた。
窓際の淡い陽の光をうけて、美しい布がうっすらと透けて見えていた。
《綺麗な布……!》それが、いちばん最初に「触れた」うさとの服だった。
わたしがまじまじと眺めていると、
 
『それ“名人織り”っていうんですよ。
一回の展示会でも、入ってくるのは一枚か、二枚か。
まったく入ってこないときもあります』と、例の彼女が丁寧に説明してくれた。
 
『いやーー本当に、綺麗ですね』
 
『でしょ?  でも、その布を織れる人が、どんどん減ってるんです。
高い技術が必要で、ごく限られた人しか織れないんですよ。
だから“名人織り”なんです』
 
彼女との会話を思い出す。
なんだか頭がクラクラする。
 
「あの服」を着た瞬間の感覚がよみがえった。
 
どの「うさとの服」もそれぞれに素晴らしかったのだが「あの服」を着たときの感覚は、他のどの服とも“明らかに違った”のだ。
 
みぞおち辺りがじわっと温かくなるような、今までに味わったことのない、不思議な感覚。
 
恥ずかしながら白状すると《これはわたしの服だ》と、一瞬、ほんの一瞬だけ、なぜかそう“感じた”のだ。
 
直後、いつものわたしが、すぐに現実に連れ戻した。
《何の“名人”でもないくせに、“名人織り”なんて着る資格あるんか?笑わせるな 》と。
 
だが、わたしは腹を決めた。
 
どうしても「あの服」に“呼ばれて”いる気がしてならなかった。
いや、わたしが“呼んで”いるのかも知れなかった。
 
展示会の終了時刻まで、あと20分。
 
《まだ、あるかな? 急がねば……!》
 
わたしは今、「名人織り」を身にまとい、この記事を書いている。
 
 
 
 
***
 
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2021-04-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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