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メディアグランプリ

終わらない物語の終わり


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記事:Atsu(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「また延期だって。もう見るの面倒臭くなっちゃった」
「どうせ引き延ばし続けるんでしょ」
心無い言葉がネット中で飛び交う。
かく言う私もうんざりしていた。一時期は待ちきれず完全に興味を失った。いつまでも終わらない。アニメ界のサグラダ・ファミリア。
 
直近の劇場版から既に8年以上が経過していた。社会人1年目だった私も今ではすっかり中堅になろうとしている。月日の経過とはむごい。最新作が上映されると聞いても、まず本作品を好きだったことを思い出す作業から始まった。
 
初めての出会いは高校1年生。
カラオケに行くたびに友人と歌ったあの神曲。アニソンだから歌っている最中、アニメ映像が流れる。激しい戦闘、流血、眩い光線、走馬灯のように映っては消えていくキャラクター。ガンダム系は全くの門外漢であったから、歌い切ったらアニメはスルーだ。こういう訳の分からんものとは付き合わないでおこう。アニメより小説読まないと。歌い終わってマイクを置くと、友人の顔が迫っていた。
「綾波とアスカどっち派? 」
 
友人は頼んでもいないのに綾波レイと惣流・アスカ・ラングレーという女性キャラの特徴や魅力について滔々と語りだした。これが愛に飢えた男子校の末路か。
友人が携帯で調べた画像にはカラオケ映像でよく見かける青髪ショートカットの幸薄そうな女子とオレンジのロングヘアーの勝気そうな女子が写っている。きっと性格も対極なのだろう。よくある手法だ。でも二人とも可愛いな、ダブルヒロインか。
その時、綾波のうつろな視線と目が合った。これが男子校の末路か。
 
新世紀エヴァンゲリオン。物語は序盤、意外にも分かりやすい。内気な中学二年生・碇シンジは父の組織が作り出した決戦兵器・エヴァンゲリオンに乗って、人類を滅ぼすために現れる怪物・使徒をやっつけていく。前述の綾波やアスカもシンジと同じパイロットの一人だ。思春期の真っただ中のシンジ達は人間関係の悩みや葛藤を吐露し、人間ドラマの側面もある。
 
もう一つ解説すると、エヴァンゲリオンは正確に言うと機械ではなく人造人間だ。カラオケの映像でも流れるように滑らかな獣のような動きをし、意思もある。人間がコントロールしきれない兵器。少し異質なヒーロー像を楽しみつつ、話は進む。そして物語は徐々に複雑になり、エヴァンゲリオンだけでなく、物語そのものも誰にもコントロールが効かなくなっていく。
 
可愛いヒロイン、緻密な心理描写、そして、後半の混沌とした世界観に私はすっかり魅了されていた。作中にはキリスト教に関連する用語が多数登場する。授業ではろくに読みもしなかった聖書を取り出して、創世記やヨハネの黙示録の部分を読み漁った。友人と物語の解釈について激論を交わし、考察本を熟読した。
だが、物語の謎はそれだけでは解決しなかった。複雑怪奇を極めた最後の2話はついに全く理解できず、私はハマりきったエヴァの沼に取り残された。
 
最終話に対する消化不良、ファンに対する説明責任、そして社会現象とも呼ばれた空前のブームにより旧劇場版が上映された。一度物語は完結したかに見えたが10年後、物語をもう一度再構築した新劇場版の映画が製作されることになった。エヴァが終わらないアニメと言われる所以である。
そして、ようやくその新劇場版シリーズが今春フィナーレを迎えるというのである。
 
幸運にも動画配信サービスで今までのアニメや映画の復習ができた。耳から離れなくなった「残酷な天使のテーゼ」は毎朝の出勤の主題歌になった。夜ベッドに入ってからも今までの謎を頭の中で総ざらいし、一人で考察にふけった。
 
もう限界だ。居ても立っても居られない。
公開3日目、劇場へと足を運ぶ。
新宿バルト9はエヴァ一色にデコレートされ、エレベーターの内装には使徒が、ロビーにはエヴァンゲリオン初号機と綾波レイがいた。記念撮影しつつ、綾波に心の中で話しかける。
「綾波、エヴァついに完結しちゃうんだね」
綾波は何も答えない。高校時代、カラオケルームで出会った時と同じうつろな目でじっと私を見てくる。
「さようなら」
そう言われた気がした。もうこんな風にエヴァに一喜一憂する事もなくなるのか。悲しみが込み上げてくる。チケットを見つめる。これ見たら終わりなのか。終わってしまうのか。劇場を去りたくなった。でも、逃げちゃだめだ。
 
長いエンドロール。26年間かけたシリーズの総決算はこんなにも多くの人の手で作られていたのか。そしてそれはスタッフだけではなく、スクリーンの向かい側にいる完結も待ち望んだ観客の力でもある。アニメ放送当初から見ている人、私のように途中から入った人、新劇場版シリーズからの人。それぞれ始まりは違うけれど、今はその終わりを共に見届けている。
ふと高校時代の友人を思い出す。熱く語り合った彼も見届けたのであろうか。ふとファンのそれぞれの青春が本作を通じて、自分にも共有された気がした。本編では我慢していた涙がすっと流れていった。まさかエヴァで泣くとは。
 
劇場を出ると、ひんやりとした夜風が心地いい。足取りは軽やかだ。浸かっていた沼から抜け出し、また明日からアニメではなく現実を生きていこうと思った。
 
 
 
 
***
 
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2021-04-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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