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私が成長しないのは、仕事が楽しいからだった


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:射手座右聴き (ライティング・ゼミ 超通信コース)
 
 
困った。本当に困った。
今本当に悩んでいる。
誰かに助けてほしい。
 
正直に言おう。
何年やっても仕事が楽しいのだ。
私は広告制作の仕事をしている。
新卒で広告会社に入り20年。
会社を辞めてからフリーランスで10年。
 
TVCMの企画を考えたり、キャッチコピーを書いたりという仕事を
ずっとしている。
 
そんなに目立つものを作っているわけではないが、
毎日が楽しくて仕方ないのだ。
 
自分で考える作業。
お客様にプレゼンをして、採用される瞬間。
制作して、世にでたとき。
商品が売れた時。
 
そんな瞬間がたまらなく楽しいのだ。
とにかく、達成感がすごい。
自分一人の達成感、そして仲間と一緒にやったという達成感も。
毎回が文化祭のような感じだ。
 
自分たちが考えたことが形になって、人が喜んでくれる時の嬉しさは
何事にもかえがたいものがある。
 
しかし、同時にそれは悩みでもあった。
楽しくて楽しくて、辞められない。でも、これでいいのだろうか。
 
悩みのきっかけは年齢のことだった。
ふと気づけば、企画の現場でも撮影の現場でも最年長になりつつあった。
クライアントさんは歳下になり、一緒に仕事をする広告会社や制作会社の方々も、どんどん歳下になった。
 
いつしか、同世代は管理職、あるいは役員になった。
先輩たちなどは定年を迎えている!
 
え? なんで。どうして。
自分だけが取り残されている気がした。
若い方々とご一緒できるのは嬉しいし、ありがたいことだ。
と思う一方で、いつも不安が頭にあった。
 
何歳までこの仕事ができるんだろう。
という疑問だった。
 
このままで自分はいいのだろうか。
という思いだった。
 
この仕事でいいのだろうか。
という迷いだった。
 
漠然としたこの不安への答えが見つかったのは
仕事の中で聞いた、何気ない一言だった。
ある日、お世話になっている会社の社長さんがこう言った。
 
「我々の業界では、仕事を覚えたら、人に渡していくものなんですよ」
 
「え? どういうことですか」
思わず聞き返した。
 
「ある人が仕事を覚えたら、次に、同じ仕事をできる人がもう一人増えるとします。そうすると、二人その仕事をできるようになります」
 
「そうですね」
ちょっとわかりにくいな、と思いながら相槌を打つ。
 
「二人覚えたら、二人が一人ずつ教える。そしたら、四人できるようになります」
 
「はい」
 
「つまり、同じ仕事ができる人をたくさん作っていけば、組織ができる。
組織ができれば、いろんなお客さんとつきあえる。いろんなお客さんとつきあえば売り上げがあがる」
 
「そうですね。どんどん増えますね」
 
「それで、組織ができたら、今度は管理職を作る。管理職の下に、仕事を覚える部下がどんどん増える。管理職が部門をまとめた部門が、さらに利益を生み出す。そうやって、会社を大きくしていくんですよ。仕事を手放すと、どんどん会社が成長するんです」
 
「そうか。同じ仕事をできる人を増やしていくと、結果的に会社は大きくなるんですね」
 
「そうなんです。なんでこんな風にするか、わかりますか」
 
私は答えられなかった。
 
社長さんは言った。
「株式会社だからですよ」
 
私は聞き返した。
「株式会社だから、ですか」
 
社長さんは、続けた。
「株式会社は、株主に利益をもたらさなければならないのです。そのためには、会社の価値をあげていかなければならない。しかも、安定的に成長していくことが株主の利益になりますよね。では、それを実現するには、何が必要でしょうか」
 
「さあ」
私は答えられなかった。
 
「山本さんはクリエイターだから、あまり経営のことは考えたことないかもしれませんね」
 
「あ、はい。恥ずかしながらそうです」
 
「お客様に安定的にサービスを提供できる体制が必要です。つまり、同じ技術やサービスを提供できる社員がたくさんいれば、誰かがやめても、何かあっても、大丈夫ということです。逆に言えば、サービスの質を安定させることが、それが株主への責任なのです。特化した社員よりも、同じことができる社員、そして、仕事をどんどん人に渡して、新しいことを覚える社員がいい社員なのです」
 
「なるほどです」
初めて私は納得した。
 
「ところで、山本さん(私の本名) はなんで株式会社にしたのですか」
 
私は、答えに詰まった。
 
「そ、それは売り上げが増えたから、だけで」
 
しどろもどろになった。
 
「山本さんのお仕事は、山本さんの名前と技術だけで価値を生み出している。
それは株式会社にふさわしくないと私は思います」
 
「え、どういうことですか」
 
「株主の立場で考えてみてください。山本さんに何かあったら、あなたの会社は価値がなくなります。一人に価値が集中する会社は、株式会社ではありませんよ。本当のことを言えば」
 
なんということだ。
 
「仕組み化できていない会社は、会社ではありません」
 
ガーン。
 
成長中の会社の社長さんからこれを言われて、私は、強いショックを受けた。
と同時に、目が覚めた気がした。
 
私は成長していなかったのだ。
ただただ、仕事が楽しい。それだけでやってきた。
しかし、自分の技術を追い求めていただけで、
組織を作る、とか、仕組み化する、など考えたこともなかった。
 
ドラマにありがちな老刑事みたいだ。
「現場が好きなんだよなー」
と言いながら、ひたすら聞き込みをしているような。
 
まるで、退任が近い刑事みたいだな。
何歳になっても現場にこだわり続けるような。
 
そして、自分の周りを想像してみた。
お仕事でご一緒しているクライアントさんも、制作会社さんも、
みんな仕組みの中にいた。
ご自身の仕事を人に渡しながら、
役職が上がったり、次の世代の成長を促したりしている。
 
あれ、私だけだ。私だけが、
この成長する仕組みから取り残されているのではないか。
 
いままで私は、
広告のアイデアを考え、形にすることをクリエイティブと思っていた。
 
しかし、ちょっと待て。
それだけがクリエイティブだろうか。
 
仕組みを作ることもまた、クリエイティブではないか。
仕事を、組織をクリエイティブすることではないか。
 
「やっと気づいたか」
頭の中で、声がした。社長ではなく、株主としての私の声だった。
 
「少しは株主のことも考えてくれよ。
いつまでも自分自身がプレイヤーじゃ、投資する方も不安だよ」
 
そうだ。この株式会社をクリエイティブに運営していくことだってできる。
 
仕事が楽しい、ということに安住してはいないか。
楽しさ、を捨てたら、新しい楽しさを見つけるチャンスではないか。
 
私のような、一人会社に何の仕組みが作れるのか、わからない。
でも、わからないことから、楽しみを見つけるが、成長につながると思うのだ。
 
 
 
 
***
 
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2021-04-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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