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「できないことから逃げる達人」が変わった言葉


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記事:寺島 まきこ (ライティング・ゼミ超通信コース)
 
 
「今日はやめておく!」
 
小学生になる長男は少し前まで「できないことから逃げる達人」だった。
 
彼の苦手なこととは縄跳び。
同級生のほとんどが前跳び、後ろ跳び、交差跳びができ、中には二重跳びまで跳べる子もいる。
 
学校では学年別になわとび大会が開催される。そこでは、できる子もできない子もレベルに関係なく背の順に並べられ、みんなの前で跳ばなければいけない。
しかも回数を数えられて、順位までつけられることもある。
できない子にとっては恥さらしの時間でしかない。
 
それがわかっていても絶対に縄跳びの練習はしない。
できないことを目の当たりにするのが嫌らしい。どうにかして練習しないでできる方法を知りたいと、運動の本を眺めてはいるが、そんな美味しい話があるわけがない。
 
学校から配られたプリントで私はなわとび大会が2学期にあると知った。そこで、夏休みに練習することを提案した。
すると、今日はお腹が痛い。今日は手の動きがおかしい。今日は縄跳びの気分じゃない。
あらゆる言葉を駆使して縄跳びをしようとはしない。
 
「練習しないと、なわとび大会でビリになっちゃうかもよ。」
そんな言葉も彼には届かない。
このまま頑張らないとどうなるのか体験する良い機会と捉えそれ以上、無理強いはしなかった。
 
結果は想像にお任せしよう。
さらに縄跳びが嫌いになったのは言うまでもない。
 
こんなふうにできない事は頑張らない! 言葉を駆使して逃げる!
 
子どもがそうなってしまったのはきっと性格だから仕方がない。そう諦めることにしたが
「いつかはでこれを改善しないと将来困るだろうな。どうしたらいいものか。」と頭を悩ませていた。
 
過去に参加した育児講座で
「褒めると子供はどんどん伸びる。
自信がついて、なんでも挑戦するたくましい子に育つ!」
 
そう習った。
ぜひともそんな子になってほしいと思っていたのでチャンスを見つけてはどんどん褒めてきた。
 
「すごいね!」
「できたね!」
「さすがだね!」
 
それなのに自信のあることにばかり挑戦し、できないことから逃げる天才になってしまった。
真逆ではないか! 育児講座の教科書と違う。
 
なぜこんなことになってしまったのかもう一度教科書を見渡しても答えはなかった。
 
ふと目に止まった家族の本棚にあった一冊を手に取った。
「人はプロセスを通じて成長する。」育児とは無関係のビジネス書の一説だった。
 
この言葉にピンと来た私はその日からプロセスを重視して子どもと関わることにし始めた。
「今日も頑張ってるね」
「いいアイディアだね」
「こんな工夫を考えたんだね」
 
しばらくすると彼の行動が変わり始めた。
学校から帰宅して遊びに出る時に、玄関にかけてある縄跳びを自分から手に持つようになったのだ。
「やってみようかな!」と恥ずかしそうな顔をしながら言った。
 
相変わらず上手とは言えないものの、できなくても努力するようになった。
「頑張ってるでしょ?」時には自慢げにアピールすることもある。
 
さらに
「がんばっていれば何でもできるようになるんだよ!」
と自信に満ちた表情で弟にも声をかけるようになった。
 
確かに初めは3回しか跳べなかった縄跳びが、今では10回を超えて飛べるようになった。
少し前の「できないことを頑張らないための努力」の数々を知っている私は彼の思考が180度転換した事に驚いた。
 
そして練習するうちに1回もできなかった後ろ跳びができるようになり、交差とびもできるようになっていった。
 
こうして、できないことがどんどんできるようになっていく喜びも体験できた。
すると縄跳びに限らず、新しいことにチャレンジする事が楽しくなってきたようだ。
 
「スケボーをやりたい!」力強く彼が言った。
突然の申し出に驚いたがスケボーも始めることにした。最初はただ立つことすら難しい。あっという間に挫折して終わりかと思って眺めていたら、お尻を突き出し、いかにも初心者とわかる姿勢で2時間も頑張り続けた。
 
できないことは頑張らない!そんなヘタレな彼が全く立つことさえもできないスケボーにまでチャレンジし続けたのは目を見張る変化だ。
 
参考にさせていただいたビジネス書に
「結果ばかりを褒めていると主体性がなくなる、チャレンジできない気質が出来上がる」
とも書いてあった。
 
親の関わりが全てではないとはいえ、子どもの気質にはある程度、親を含む周囲の声かけや環境が関係してくる。
 
実際、性格だから仕方がないと諦めていた「できない事から逃げる困った気質」も半年でここまで変わった。
そして新しい楽しさを見つけることができた。
せっかく生まれたからには人生を楽しんでほしい。
 
これからもきっと困ったことが出て来るだろう。その時は育児に限らず視野を広げて情報を活用していきたいと思う。
 
 
 
 
***
 
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2021-04-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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