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子供は怒らないで育てるという呪い


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記事:maika(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
子供が産まれてまだ間もない頃、初めての子育ては不安ばかりで、よく育児書を読んでいました。世の中には育児・教育関連の本に溢れていて、子供全員を東大に入れたお母さんの本やモンテッソーリ流、シュタイナー教育、子育ての声かけ、0-3歳までにしておかないといけないあれこれ! など、子育てをしていると思わず手を伸ばしたくなる本ばかりです。
 
その中でも、
子供は怒らないで育てる。という内容をよく目にしました。
怒らないで子育てをすると、イライラが減り、子供がどんどんやる子に育つというのです。
子供が乳幼児の時は自我もあまりなく、
「そうか、子供が言うことを聞かなくても、怒らず、叱らず話を聞いてやるのがいいんだな」と軽く思っていました。
しかし、子供が成長して自我も芽生えてくると、これが至極困難なことに気がつきます。
 
もちろん子供のことを怒らず、叱らず済んだら良いですよね。
どんなときも怒りをコントールして、子供の立場になって考え、意見を尊重する。
相手の立場に立ち、いつも笑顔でいられる…そんな本に書いてあるような母親になりたかったのです。
しかしそう上手くはいきません。
 
急いでいる朝に限って、着替えたくないとダラダラしている。
おもちゃはいつまでも出しっぱなし。
夕飯の支度が差し迫った公園で、「17時までね」と約束したのに帰りたくないと泣き叫ぶ。
 
そんな時、私はいつも念仏のようにこれを唱えていました。
怒らない。怒らない。
まずは子供の言い分を聞いて、寄り添って、笑顔を忘れずに……と。
まるで呪いのようにその言葉に縛られて、いつのまにか
怒ること=ダメなこと
だとインプットされていました。
そして気がつけば、子供が良くないことをしても上手く叱ることができなくなってしまったのです。
私は勘違いしていました。
「怒らない」とは、自分の怒りの感情に蓋をすることだと。
 
ある日、スーパーのお菓子売り場で子供がお菓子を買いたいと言いました。
私は「一つだけね」と子供にお菓子を選ばせたのですが、なかなか一つに決められません。
買い物はまだ途中だし、早く帰って夕飯の支度をしなければなりません。
散々迷った挙句に子供は二つお菓子を買いたいとぐずります。
私はイライラを押し殺して、笑顔だけど静かな声で言いました。
「一つだけど言ったでしょ」と。
その時子供は、私が笑顔でも確実に怒っていることを察知していました。
 
その時ふと思い出したのです。
以前働いていた会社の先輩のことを。
 
彼女は仕事が早く、いわゆる「よく出来る人」でした。
リーダーからの信頼も厚く、お客さんの無理な要望にも、不出来な後輩の後処理も、いつも笑顔で対応していました。
けれど私はいつも先輩のことを
「何考えているかわからないな」と思っていたのです。笑顔でいても、本心で笑っているのかな?と思ったことが何度もあったのです。
結局、何年も同じプロジェクトをやっていたのに、表面上の付き合いだけであまり仲良くなれずに終わってしまいました。
 
そしてもう1人、とても仲良くなれた先輩のことも思い出しました。
彼女は言いたいことをはっきり言い、仕事がすごくできるタイプではなかったけれど、困った時はいつも彼女なりに助けてくれました。
彼女には不条理に怒られたりもしましたが、なにか相談事があると私はいつも彼女に相談していた、大好きな先輩でした。
 
どちらが良い悪いではありませんが、私は子供とどんな関係を築きたいのか?と考えた時、いつでも相談してもらえるような関係にありたいと思ったのです。
 
それから私はイライラした感情を隠すのをやめました。
お母さんはイライラしているよ。
怒っているよ。とそのまま伝えます。
その理由が親の都合だとしても、子供の理由だとしてもです。
感情的にはならないように注意していますが、それでも感情的になってしまう時もあります。そんな時は、落ち着いてから素直に子供に謝ります。そんな風に怒られた後でも子供は許してくれるのです。子供の方がよっぽど大人だな、と感じたりします。
 
育児本やコラムを読むと、どうしてもその内容のすべてが正解のような気がしてしまいます。
そこに書いてあることが、頭ではわかっているのに出来なくて、自分はダメだなぁと思っていませんか?
私がまさにそうでした。
どれだけ育児本を読んでも、うわべだけ理解しているつもりになって結局できずに落ち込む…そんなことの繰り返しでした。
 
でも完璧にやる必要なんて全くない、と今は思います。
怒っても叱っても、大好きという気持ちは変わらないのです。
私が大好きだったあの先輩のように。
 
 
 
 
***

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2021-05-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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