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メディアグランプリ

大将軍の自覚をもて


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:仲 弥生(ライティング・ゼミ集中コース)
 
 
私は虫が大嫌いだ。黒いものがススっと動くだけで飛び上がってしまう。
それはまだ5歳くらいの頃、機嫌よくお風呂に入っていた時のことだった。揺れるお湯に乗って何かがコツンコツンと背中にあたったのだ。ふり返ると、ノックの犯人は湯舟に浮かんだ超ヘビー級の「例のあの虫」だった。それ以来、「例のあの虫」は完全に私のトラウマとなっていて、その単語の片鱗をもここに書くことができない。それ程なので、私は以後この虫のことをVと呼ぶことにする。(これはハリーポッターの中の例のあの人である「ヴォルデモート」から頭文字Vを拝借している)
 
私は祖母が亡くなってロス症候群になった20歳の頃に、お寺によく通った。それは菩提寺だったり、総本山だったりで、とにかくご僧侶の法話をたくさん聞いて、この世の真実に近づきたかった。結局、ロス症候群が直ってからは通常の生活に戻っているのだが、その頃聞いた法話の中に「どんな生き物も殺してはいけない」というものがあった。
 
その頃、死というものに敏感になっていた私は、法話を聞いてから小さい虫を殺すにも虫の立場に自分を置き換えて、人間と遭遇したばっかりに一瞬で殺されてしまう悲惨さを想像しては、その痛みに悶絶した。
そう、今思えばギャグでしかない。だけど当時の私は大真面目だった。
それから、私は生き物をむやみに殺さないように徹底した。虫を部屋で見かけたら、そっとティッシュでくるみ外に逃がすようにしたのだった。
 
しかし、そこには絶対に生かしてはおけない「例のあの虫」問題が立ちはだかるのである。Vまでいかなくとも、蚊やハエだって見たら反射的に殺してしまう。やむなく殺生をしてしまった私は、その度に心の中で「ごめんね」といっては、その虫が成仏するように祈った。
 
― 生き物を殺してはいけないけど、殺さずにはいられない —
 
この矛盾は長年私の中で解決できない課題で、答えがずっと出せずにいた。
 
そもそもだ。その法話を聞いた直後に、そのお寺に置いてあった「Vホイホイ」が私を惑わせた。
「あれ……、殺してはいけないって言っていたのに」
私は何が正しいのか混乱した。「Vホイホイ」といえばVにとっての殺戮兵器。完全に殺すことを目的とした商品ではないか。殺生はしてはいけないと言っていた聖人が本当は生き物を陰で殺している。私は見てはいけない現場を見たようで、その時は何も見なかったことにすることにした。
 
それから20年、私は課題の答えをずっと探し続けていた。
そして40歳を過ぎた何でもないある日の夕方、あらためて私は深く考察した。
 
私たちが動物や植物を殺すのは、食べていただく為であり、自分たちの命をつなぐ為に必要だからに他ならない。しかし、虫は食べられない。(今は昆虫食というものがあるが)虫の場合は、直接命をつなぐために殺しているわけではないのだ。
 
ところが、虫をまったく殺さないことを想像してみると、私たちの生活が成立しないことがわかる。
 
例えば、私たちがVを見つけても、殺さない、ホイホイを置かない、ホウ酸ダンゴも置かないとどうなるか? あらゆる場所でどんどん繁殖して、不衛生で人は病気になるかもしれない。Vには人がかじられてしまうこともあるという。まさに人類存続の脅威である。
 
また、もう一つの例として農作物に対する虫の駆除をやめたことを想像してみよう。たとえ無農薬だって害虫の駆除はしているのであり、それをしなかったら、ほとんどの野菜が虫に食われてしまう。人類が食べる物は格段に少なくなるだろう。物価は跳ね上がり、経済や世界情勢にまで影響がでる。
 
結局、私たちは動物と植物だけでなく、虫も殺さずには生きてゆけないのだ。
それは自分たちの命を守り、つないでいく為であり、いつだって無駄に殺しているわけではない。
 
しかしそうやって考えると、私たちが生きていく上において、死んでいく命があまりにも多いことを知らされる。私たちは何気なく、食べ物を食べ、虫を駆除しながら生きている。しかし多くの人が牛や豚が大量に殺されていることも、野菜を作るのに大量に虫が殺されていることも、まったく意識せずに生きているのではないだろうか。
 
そこまで考察した時、漫画「キングダム」の王騎将軍のこの名言を思い出した。
「命の火と共に消えた彼らの思いが 全て この双肩に重く宿っているのですよ」
 
そうだ、王騎将軍と同様、私たちの双肩にはすさまじい数の生き物の思いが宿っているのだ。そして、その者たちが浮かばれるかどうかは、私たちがどう生きるかにかかっている。私たちが自分の命や、生きる目的を粗末にしたその瞬間、その者たちが無駄死にしたことになる。
 
そう、私たちは誰だって一人ひとりがそれだけ重みがある命を生きているのであり、大将軍さながらなのである。
 
私は、長年の答えがようやく出せたその瞬間に、王騎将軍の様に自分も強く自分らしく生きて、多くの命に報いていこうと決心したのだった。
 
 
 
 
***

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2021-05-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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