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メディアグランプリ

黒歴史との向き合い方


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:Atsu(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「4月の君は舞い落ちる桜のように現れて、5月の君は生い茂る緑のように僕を覆いつくして・・・・・・」
慌ててノートを閉じる。ぞっとした。両腕に立った鳥肌をそっと撫でる。
どうやったらこんな文章書けるんだ。文章というかポエムか。末恐ろしい。
 
「日記をつけることは大人になってから大きな財産になりますよ」
中学の頃、定年間際の担任教師が言っていた。
「2行でも1行でも良いから、毎日その日に起こったことや感じたことを書き続け、いつか大人になった時に読み返してみてください」
当時、優等生だった私は先生の言葉通り毎日日記を書いた。誰に見せるわけでもなく、思いのままに文章にしたり、詩のように書いたり。書き慣れると次第に文量は増え、時には1ページ分も書いた。そうして、中学から大学までノート10数冊にわたる日記が残った。
 
〇7月13日 青春の日々よ(1冊目)
今日は期末テストの最終日。数学Bは崩壊した。できないって。ただもう勉強しなくていいとなると夏休みな気分。今年の夏は何しよう。毎年あれこれ考えているうちに終わっている。このままじゃ大人になった時にきっと後悔する。限りある青春の日々よ。ボーイズ・ビー・アンビシャス!
 
〇7月21日 試合と女子と(2冊目)
何が悲しくてこんなに勉強やら部活やらをしないといけないのだろう。今日も休日返上して試合だった。負けた。試合って普段見られない女子見ることくらいしか良いことない。でも審判やってくれた○○女子高の子、可愛かったなあ。共学行きたい。
 
思いの丈しか綴らない日記はやりたい放題だ。どのページを開いてもアホなことが書いてある。財産なわけない。むしろこれは・・・・・・
 
黒歴史という言葉はガンダムが発祥らしい。作中では太古の時代から繰り返された宇宙での長い戦争の歴史と解説されている。私の青春時代、長きにわたって繰り返された、恥ずべき言動や心の葛藤を綴ったこの日記も黒歴史と呼ぶべきだろう。過去の自分なんて遠い日の思い出として美化したり、忘れればよいものだ。それを自らの手で書き残すとは。
 
今現在、ブツ(日記)は実家の机に鍵をかけて入れてある。鍵は袖机の一番下の引き出しの中だ。親も30歳を過ぎた息子の日記なんて今更読みたくはないだろう。その点この秘本は一応誰の目にも触れない。
だが、人間いつ万が一のことがあるか分からない。かの有名なフランツ・カフカは死んだら未完の草稿を全部破棄してくれと友人に頼んでいた。だが友人は機転を利かせてしまい、世に出したくもない作品も全部死後に公表された。死人に口なし。
さすがに家族によって公表やSNSに晒されるということはないと思うが、親や兄弟に日記が読まれると考えるだけでも身の毛がよだつ。早急に破棄をせねばと思い立つ。
 
ゴミ袋まで用意したところで、ふと思う。最後に一読しよう。黒歴史を生きた過去の自分への弔いだ。1冊目から順番に閉じたくなる衝動を我慢しつつ、読み進める。
 
〇10月24日 そこはかとない悲しみ(3冊目)
今日は文化祭初日。昨日大忙しで調達した具材を朝から切った。何とか開店に間に合った。セーフ。焼きそばを女子高生に売りまくるぜ~、と思ったら隣のサッカー部のチュロス屋に女子高生の長蛇の列。一方、焼きそば屋には父兄が列をなす。このそこはかとない悲しみは何だ。このまま、もし大学生になっても青春来なかったらどうしよ。
 
〇6月22日 E判定は嫌だ(8冊目)
模試の結果が返って来た。案の定H大はE判定。はあ勉強したくない。でも国立大行かなきゃ。でも数学が。悶々と同じことを考え、時たま近くに座っている女子高生を眺めているうちに自習室での時間が過ぎた。分かっているよ、ボーイ。このままだと凡人だし落ちるよ、きっと。
 
〇3月27日 大学へ(10冊目)
浪人しないと決めた。というか母にめちゃ説得させられた。別に受かった大学が嫌なわけじゃないけど、行きたかった学部じゃないし。こうやって妥協を繰り返していく人生なのか。繰り返した先に後悔はしないのか。まあとりあえず入学前に髪染めようっと。
 
その後、大学から先の日記はサークルや飲み会の話がほとんどだった。ぼかして内容を転記しても末恐ろしい破壊力。この人物は中学2年生からあまり成長していないのではないかと思うほど、毎回同じことで悩んだり、そうかと思ったらお気楽に話を終わらせて、次の日には全く別の内容を書いている。
 
高校生までは良い日、悪い日と点数がつけられ、点数の高低により日記のタイトルに色が塗られていた。毎日勉強や部活、人間関係で一喜一憂している。テンションが上がり下がりするほど毎日が彼には新鮮だったのだろう。
 
黒歴史という闇をさらけ出す過去の自分。
やめてくれと言いたくなるほど幼稚な考えや愚かな行動を取る一方で、やはり自分であるからこそ共感できる発想や今でも同じ悩みを抱えていたりもする。
 
いま、日記書いたらどうなるのだろう。
最終巻の日記の続きに仕事や恋愛、友人関係について思いのままに書いてみる。毎日頭の中に浮かんでは消えていく一過性の気持ちをノートに記す。
 
翌朝、昨日の日記を読み返して悟った。これ10年後は黒歴史だ!
 
私たちは毎日精一杯生きているはずなのだが、失敗したり、後悔したりする。
変えられない過去を掘り返すといたたまれない気持ちにもなるが、同時に過去の自分がどんなことを考え、精一杯生きていたのかも分かる。中学の先生はそのことを財産になると伝えたかったのではないだろうか。
日記はゴミ袋から出して、再び机の引き出しに入れた。
 
 
 
 
***

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2021-05-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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