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メディアグランプリ

心に握りしめた1万円札


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:ひまわり(ライティング・ゼミ集中コース)
 
 
「10分後に試合を始めます。選手は会場にお集まりください」
場内アナウンスが流れた。
まもなく中学最後の夏の大会「中体連 地区大会」が始まろうとしている。
 
2年前―
中学1年生になった私は、小学3年生のときから習っている剣道部に入部した。
剣道部員は、男女合わせて25人ほどいたが、女子は私を合わせて8人だった。
3年生が4人、1年生が4人のチーム。
団体戦を行うときは、ほとんどの大会が5人1組のチーム戦を行うため、先輩が4人しかいない私のチームは、必然的に1年生の誰かがレギュラーに選ばれることになる。
夏の全国大会につながる大会、「中体連 地区大会」が間近にあるため、入部して早々にレギュラー争いが始まった。
レギュラーの発表は、地区大会の1週間前。
レギュラーの座は、あっさり別の子に奪われた。
悔しかった。
悔しくて、悔しくてレギュラーに選ばれたメンバーが変更されることがないとわかっていても、その子より気合をいれて稽古に打ち込んだ。
 
地区予選大会の前日に顧問の先生からアドバイスを受けた。
「構える時に、左のこぶしをもうこぶし2個分上にあげて構えなさい。勝てるから」
と。
勝てると言われたら大会前日だろうが直すしかない。
しかし、構えは剣道の基本だ。いきなりベースを変えたので試合前日なのに違和感を残したまま稽古を終えてしまった。
 
翌日、初めて経験する夏の大会「中体連 地区大会」が始まった。
大会は、団体戦と個人戦がある。
団体戦は、先輩方の活躍で「当然」のごとく優勝した。私のチームは強いのだ。(私は補欠だったが)
 
そして、個人戦が始まった。
試合中でも昨日先生から指導頂いた構えのことを意識した。
はたから見たら正しい構えになっていたとしても、私には違和感しかない。
しかし、勝てるという言葉を胸に勝負に挑んだ。
私は、先生に魔法をかけられたのかもしれない。
なんと、あれよあれよと勝ち進み、決勝戦だ。
決勝の相手は、なんとレギュラーの座を奪ったあの子だ。
同じチームの仲間だが、負けるわけにはいかない。
 
試合時間3分で勝負がつかず、延長戦にまでもつれ込んだ。
長丁場の戦いは、最後お互いに同じタイミングで打った面で勝負が決まった。
私の竹刀がほんのわずかに早く相手の面に届き、この試合は私の面一本勝ちで幕を閉じた。
 
先生の魔法……いや、ご指導と負けず嫌いの性格が功を奏し、勝つことができたのだろう。
 
しかし何故、構えた時のこぶしの位置を変えただけで勝つことができたのかが気になり、自分なりに答えを探してみた。
答えは簡単だった。
構えた時のこぶしの位置が下がることで、腕の関節が伸び切った状態になってしまう。
しかし、こぶしの位置を上にあげることで腕の関節が曲がり腕に余裕ができる。腕を伸ばすだけで面があたる。余裕を持つことでスピードが上がるのだ。
 
できなかったことができるようになる。
疑問に思ったことが解決する。
先生からの指導も「なぜ直すといいのか」と理屈を探すようになり、発見できる楽しさや負けても自分の弱点がわかること、「考える」ということが楽しくなってきた。
そして、自分の中の難題を攻略できた時の喜びがもっと稽古したい、稽古すれば勝てるというエネルギーになっていた。
 
月日が流れ三年生になった。
まもなく「中体連 地区大会」だ。
 
試合前日、あの時私に構えを直すよう指導してくれた先生が言った。
「あなたたちは沢山練習した。辛い稽古も乗り切った。だから明日の試合は自信をもって挑むように」
と。
 
いろいろ考える癖がついてしまった私は、この言葉を聞いてふと千円札を持って買い物に行った時のことを思い出した。
可愛い文房具が欲しくて買い物に行ったが、どれもこれも可愛いのだ。
千円じゃ足りないな…せめて一万円くらいあったら余裕をもって選ぶことができて買えるのになと……
 
この千円や一万円は、剣道でいえば稽古をしてきた努力や自信と同じだろう。
コツコツと積み重ねてきたものが多ければ多いほど自信という名の余裕が生まれ、自分の技をここぞというタイミングで出すことができるのだ。
体も心も余裕があることで、本領が発揮できると感じた。
 
そう思うと怖いものなんて何もない。
なんて言っても魔法使いの先生のお墨つきだ。
私は、二年前のあの大会から地区で開催される大会では、1回を除き負けなしだ。
もちろん団体戦もレギュラーだ!
私のチームはずっと強い!
目標は、「全国大会出場」
 
全国大会へ行く切符を掴むための初戦がまもなく始まる。
ずっと勝ち続けていても、絶対また勝てる保証なんてどこにもない。
緊張で心臓が高鳴っている。
でも、大丈夫。
心に握り占めた1万円札をもって、最後の夏の大会に勝負を挑む。
「お願いします!」
 
 
 
 
***

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2021-05-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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