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「工場鑑賞にハマって、気づいたこと」

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:青天目 起江(ライティング・ゼミ超通信コース)
 
 
「あのさびれ具合がいい!」
コロナ禍で遠方への外出を控えるようになってしまった。
必要に駆られてでもあるが、私は、身近な場所で、自分の心がくすぐられる場所を探してみようと思った。
お勧めは、「工場」だ。
 
コロナ禍前は、美術番組で、興味が湧いた遠方の美術展に泊りがけで見に行くのが私の趣味だった。
それができなくなって、寂しい限りである。
近隣の美術館も訪れたりしているが、少し物足りなさを感じてしまう。
 
だから何で工場なの? それって楽しいの? と思われるかもしれない。
当たり前の風景の中にあるものが、見方を変えると、とても価値のあるものに見えてくるのだ。
 
私も工場にそれほど思い入れがあるわけではなかった。
むしろ、社会科で習った「公害病」の影響のせいか、「工場」に良いイメージを持っていなかった。
人工的、灰色、無機質、というのが、私が持っていたイメージだった。
 
工場へのマイナスイメージが変わったのは、コロナ禍前である。
きっかけは、京浜工業地帯の工場の夜景クルーズについて知ったことと、学生の時に得た単なる知識だけで物を考えるのではなく、社会人になって働いた経験を通して物事を見るようになったのが大きかったと思う。
 
まず、工場の夜景ツアーだが、夜に輝く工場の姿に魅了された。
ツアーを紹介する映像の中で、日中はただ何てことはない、ただの建物が、夜になると取り付けられた無数のライトが灯り、工場が輝いていた。
街の、観光のためのイルミネーションとは違う。
闇に輝く工場の姿は、どこか近未来的で、SF映画のような、非日常的な空間にいるのではないかと、錯覚してしまった。
 
行ってみたいが、休みが取れない。
近くにも工場が集まった地域はあるけれど、クルーズなんてやっていないし。
そこで思ったのだ。船じゃなくても、自分の車で見に行けばいいと。
さっそく仕事帰りに、いつもと違う、工場がよく見えるルートに変更したら、
思った通り、そこには、光の工場があった。
生でみると、昼間はただの灰色の建物なのに、夜になると煌めく工場の姿に、
心は持っていかれた。
 
そして不思議なことに、仕事から疲れて帰る道すがら、無数のライトに照らし出される工場を見ると、なぜか元気が出てくるのだ。
それは工場がただ、光輝いて美しいだけではない。
元気がもらえるのは、社会に出て普通に働くことがいかに難しいかがわかったからだ。
仕事で出会う顧客の中には、工場の3交代制など、夜勤で働く人もいた。
昼間帰って寝ようとしても、なかなか寝られない、とこぼす笑顔が忘れられない。
自分はもう帰るのに、夜も稼働している工場やその中で働いている人もいる。
そう思うとたまらなかった。
自分が休んでいる間に、働いている人がいるという小さな現実。
世が明ければまた社会は動き出す。しかしそれは、その小さな現実のおかげで支えられているのかもしれない。
そんな風に思うと、工場がただの製品を作っているのではなく、明日への希望も作っているように、私には思えた。
 
夜の工場が好きになると、日中の姿も好きになっていった。
張り巡らされた鉄のパイプは、まるで人体を流れる血液のようで、いったいどれほどの綿密な設計図なのだろう、と考えてしまう。
工場を、人工的なものと捉えていたのに、生き生きと命が宿った生命体に
見えてきたのだ。
 
昼間に、工場を眺めると、それは、デザイン的にも優れているのがわかる。
例えば工場の敷地内にある、大型のタンクの形だ。
円柱のものや、球体のもの。
それが、一つだけではなく、三つ四つと並んでいると、これも不可思議な光景で、気分が高揚し、とてもおもしろい。
 
中でも、最近そそられてしまうのは、「錆」だ。
錆なんて、古さの象徴と思うかもしれない。
でも人間だって、年を経るからこそ出る魅力、わかる魅力がある。
(世の中には渋いオジさんが好みという、おじ専という言葉もある)
工場の錆が良いと感じたのは、コロナの騒ぎが始まった後だ。
転職して平日が休みになる日もあって、日中の工場の姿が見れるようになった。
夜では錆には気づかない。
太陽が、ギラギラと銀色の金属を照らす中に、減価償却された、橙色茶色の錆が映える。
いい味、出してるなと思う。
錆に注目すると、ただの工場が、時を重ねてできた近所の「産業資産」に見えてくる。
 
評価が確立している絵画を見ることも学びの一つだが、身の回りの普通のものに魅力を見つけるのも学びの一つだと思う。
今は外出制限で、特に遠方には出かけられないからこそ、近い場所で、自分の町の「資産」を見つけるのも良いのではないだろうか。
きっとそれは、コロナの騒ぎが終わった後の、訪れる旅行先の、自分特有の町の楽しみ方にもなるはずだ。
 
 
 
 
***

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2021-05-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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