メディアグランプリ

自分に嘘をついた志望大学選びの果てと「未来」


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記事:えんどうみき(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「決めなきゃ、ヤバい……でも、どうしよう」
思考がぐるぐる。頭の中での独り言が止まらない。分かっている。夕方のホームルームまでに、この進路希望用紙を担任まで渡さなくてはいけないことは……。でも、決まらない。決められない。
 
高校3年生6月の進路希望調査。同級生は早々に志望校を書き切り、担任に用紙を提出している。そんな最中、私は考えるほどにドツボにハマり、書き始めたら修正不可であるボールペンを手に取ってから早30分、一切手を動かせずにいた。
 
書いたほうがいい大学は、きっと地元の国立のG大学だろうと思った。実家から電車で通えるし、国立で学費も抑えられる。地元から近い国立大学に進学できれば親の鼻も高いだろう。周りのクラスメイトの多くも志望しているし、悪くない選択である。今の成績を維持したら、受かる可能性も高い。親が喜ぶのを想像できたことと同時に、周りと似た選択に安心感も持てる気がした。
 
「よし、書くか」
 
意を決して、用紙に「G大学」と書こうとすると書くのをためらう自分に一瞬気づいた。なぜ自分が一瞬のためらいを覚えたか? その理由は明白だった。しかし私は、その一瞬のためらいに気づかないフリをして、志望校欄に「G大学」と書いた。
 
書いて提出したあと、自らの意思で志望校を決めているように見えるクラスメイトが羨ましく思えた。「いいな」と声が漏れた。なぜならば、私は自分の気持ちに嘘をついていたからである。私は、「親をはじめとする家族や、周りが喜びそう」という理由で志望校を選択していたからである。
 
G大学が嫌なわけではなかった。ただ、他の大学ではなく「G大学がいい」言い切れるものを私は持ち合わせていなかった。そんな中途半端な気持ちで書いた志望校調査。自分の意思で決めているクラスメートと、「とりあえず」で決める自分。それらを比較しては、自分に嫌気がさした。「自分は誰の人生を生きているのだろう?」と自分を残念に思った。
 
本当は、私は奈良女子大学を志望したかった。
古都、奈良にある女子大学である。私が住む街から電車を乗り継いで3時間。鹿があたり前に道路を歩く街、奈良市にある大学である。
 
さかのぼること1年前。高校2年生の夏休みにした、関西にある大学のオープンキャンパスめぐり。そのめぐった大学のひとつが奈良女子大学、通称「奈良女」であった。正直に言うと、その時に大学に一目惚れをした。大学の正門から見える薄い緑と白を基調としたレトロな建物。「なんて可愛い建物なのだろう」とときめいた。そして、ドンピシャで学びたい学問と出会った。ここで大学の4年間を過ごせたら、どんなに幸せなのだろうと思った。
 
なぜ、志望校として選べなかったかというと、怖かったのである。
 
まず親の反応。
高校3年生の今まで、親の提案から大きく逸れた提案をしたことがなかった。きっとG大学に進学してほしい親。自分の行きたい大学、しかも女子大。どんな反応をするのかを想像すると怖くなった。
 
次にクラスメイトの反応。
「奈良女? どこそれ?」
旧帝大や有名大学を志望校とする同級生がほとんどの中で、奈良女を選ぶことは絶対に少数派になる。そう思うと、少数派を選ぶことへの恐れが出てきた。
 
最後に自分への不安。
仮に奈良女を志望大学として言えたとする。しかし、その次に待つのは、合格できるかどうかである。多くの同級生が選ばない選択を自ら選んだのに、不合格になったらどうしよう……。そう考えると不安になった。
 
高校3年生の夏。最後の正念場と呼ばれる夏休み。
「G大学は違う気がする。でも奈良女も選べない」
どうすればいいのか? 頭の中がぐるぐる。ぐるぐる。
考え続けるとすべてが嫌になり、私は勉強がまったく手につかなくなった。
鬱に近い状態だった気がする。逃げたくて仕方がなかった。
 
選びたいのに選ぶのが怖い。
八方塞がり状態が、自分の身も心もボロボロにしていた。
 
それから7ヶ月後、2014年3月8日。
私は奈良女子大学に合格した。泣きながら、親と喜びあっていた。
同じく志望大学に受かったクラスメイトとガッツポーズをしていた。
 
この7ヶ月に何があったのか。
 
それは、ある達人との出会いがあったからだった。
その人はノートの達人であった。
達人は毎朝「今日1日がどんな1日だったら最高か?」を自分に問いかけることと、夜寝る前に、「今日1日の反省と改善点」を書くことを提案してくれた。
 
「受験と関係あるのか?」と思いつつも、とにかく勉強が手に付かないため、とりあえず毎日ノートに言われたことを書くことを続けた。すると不思議なことに書くことで、1日に自分が何を考え、どうしていきたいのかを知る機会となった。今の自分を客観的にみられるようになった。
 
書き始めて1ヶ月後、「奈良女にいく!」と自分で決意し、親をはじめとした周りに伝えている自分がいた。ノートに自分の言葉を書き続けることで、自分の気持ちを大事にしたい思いが生まれた。そして、周りにも伝える覚悟が決まったのである。
 
また、1ヶ月間言葉を書き続けたことで、継続が習慣となり、苦手な教科に関しても根気よく毎日勉強する耐性がすぐについた。逃げない自分になっていた。そこから、勉強できていなかった時期をカバーするくらいの勉強ができるようになり、成績も右肩上がりとなった。
 
ここまで来ると面白い。
ノートを続けるほどにメンタルが安定し、試験当日も「どんな結果でも受け入れる」と自分に対して自信と信頼を持つ状態になっていた。解けない問題が出た時に、最後まで自分のやれることはやりきると決めて、取り組み切れる自分がいた。不合格が怖い自分は、もうそこにはいなかった。
 
心で願う選択を言えない私を変えてくれたのは、自分の思いをノートに書くことがきっかけだった。たった1ヶ月。されど1ヶ月。書き続けたことで、願いを形にするための大きな一歩、人に公言することまで、自分を自然と持っていけるようになった。
 
周りの反応が怖い時、自分に嘘をつく選択をしてしまおうと思った時。
まずノートに自分の思いを書くといいかもしれない。
自分に嘘つかずに言葉をノートに吐き出してみてほしい。
あなたが自分に嘘つかずに、周りと共に喜べる成果を出す強い味方になるかもしれないから。
 
ps.奈良女には最低点の0.3点上の得点で合格しました。執念ですね(笑)
 
 
 
 
***

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2021-05-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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