親子でくらった中学の洗礼
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:赤羽かなえ(ライティング・ゼミ超通信コース)
「宿題だったのを、やってなかった……」
「え……と、これ全部?」
いつもは小学生の名残りがぬけず、おちゃらけている息子も、中学の洗礼を浴びていることにようやく気付いたのか、シュンとうつむいた。
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たった2か月で溜め込んだ息子の未提出の宿題の量に、思わず天を仰いだ。
笑うしかない、途方にくれたら乾いた笑いしか出ないものだ。
中1になった息子の初めての定期試験が近づいている。範囲が発表になって、膨大な量の範囲に指定された問題集は白紙だった。問いただすと宿題だったのにやっていなかったらしい。
中間試験まであと10日。入学当初に、「もう中学生になったのだから、自分でコツコツとやりなさい」と手渡して2か月余りが過ぎようとしていた。
息を吸っては、悪態しか出てこないところをぐっとこらえて息を吐く。
口を開いて出てきそうなのは、今更言っても仕方がないガラクタのような言葉だけだった。
自分が中学生や高校生の頃は、親が羨ましかったものだ。いいよね、勉強せずに、もらってきた成績だけ見てああでもない、こうでもないって言うだけで、と思っていた。
けれども……。
こんなパンチくらうくらいなら、自分が勉強した方がよっぽどマシだわ。
確かに、小学生の頃から提出物を出したり、プリントをまとめたりするのが苦手な子だった。でも、プリントや提出物の始末なんてそのうち自分でやるようになると気にも留めなかった。
中学校に入ってゴールデンウィークも過ぎた頃に、担任の先生から学校への提出物が一切出ていないということを知らされた。確かに、家への連絡のプリントもほとんどもらうことがなかった。
先生曰く、プリントの整理ができない子供は勉強以前の問題なのだとか。必要なプリントを探している時点で勉強へのモチベーションが消えてしまい、勉強に取り掛かることができずに遅れていくのだという。
本人が自覚しないと埒があかないので、急遽面談をすることになった。
「プリントはね、カバンの中で地層のように積み重ねてしまったら、まず探すところからになるよね。すぐにファイルに綴じるのが難しいならやり方を考えないといけないよね」
みんなで話し合って、とりあえず、プリントを分類するファイルを作ることにした。文房具店などで売っているアコーディオン型に開いて仕切られているファイルに、科目ごとにプリントをいれていくというシンプルなところから始めた。少し怪しいなと思うことはあるけど、以前よりはプリントが出てこなくて困ることは減った。
でも、一難去ってまた一難だ。課題の宿題を聞いてこないのでは、こちらとしてもお手上げだ。そうは言っても、それなりに宿題には取り組んでいたし、それでも毎日机に向かっているように見えていた。
中学生の勉強ってそんなに大変なのか。
今度は、息子の勉強時間を一緒に見直すことにした。
どうやら、親の目を盗んで家庭学習用のipadで電子書籍や動画を見ているのをごまかしていたようだ。勉強をしているようで無駄な時間も多いことがわかった。
そこで、プリントに取り組んでいる時には、ipadなどを親に預けること、電子辞書なども見始めると横道にそれるので、課題に取り組んでいる間は使わずにチェックを入れてあとでまとめて調べるようにした。
チェックを入れておけば、テスト前の復習の時に見直せるので効率も良くなる。
それから、課題を見開き1ページこなすためにストップウォッチを導入した。
いくら問題の答えがわかっても時間の制約で書けなかったらもったいない。ストップウォッチで時間を区切ることで、集中力と瞬発力をつけようと提案した。
今回は、親発信の提案を押し付ける形になってしまったが、この土日は割り振った課題をなんとかこなすことができた。
途中でくじけそうになる息子と小競り合いを繰り返していると、自分もくじけそうになる。
別にここまでやらなくてもいいんじゃない? 今更、宿題出したところで仕方ないよね。でも、テスト範囲なんだからやらないと追いつけないかも。
無理やり詰め込んだらますますヤル気をなくしちゃうのでは? でもここで許してしまったらこれから先もやらなくなるかも。
正解とも不正解とも言えない考えがぐるぐると頭の中をめぐって闇雲に時間が過ぎていく。
「やらなきゃいけないから、頑張る」
不意に息子が、自分に言い聞かせるように言ったのを聞いてハッとした。親がなんでもかんでも決めたらよくない。彼の人生なのだから。
そして、月曜日。学校の授業がみっちり入った後も踏ん張って勉強をしている。このまま続くかは正直分からない。けれど、頑張ると自分で決めたら、やるようになるものなんだな、まだ小学生と間違われる幼い顔が少しキリッとしたように見えて頼もしく見えた。
「中学校受験は親の受験、高校受験は親と子の受験、大学受験は子の受験って言う言葉があるんですが、中学生はちょうど親と子供が一緒に乗り越えるときなんです。その中で少しずつ子供の比重を増やしていくようにしていくのが難しい。特に、高校に入ったときに自分で自主的に勉強できるように中学生のうちに少しずつ手放していくことが重要なんです」
担任が言っていたのを改めて思い出した。
今はもう少し手助けが必要なのかな。少しだけ手を貸しながら、本人のペースがつかめるのを手伝って、できれば上手に手を抜く方法も覚えながら自立していくといいな。
本人が「これを頑張る」と自分が思えるものを少しずつ積み重ねていけるようにサポートしていこう。
その日、息子は、学校の振り返りシートに、「もう、宿題を溜め込まないように頑張ります」と記入していた。よしよし、少しは成長したかな。
「こんなこと書いたけど、テスト終わったら忘れちゃうんだろうなあ~!」
大量の課題をこなして、少し達成感を感じることができたのか、息子らしいおちゃらけた笑顔が戻った……ってコラーッ! 忘れないでちゃんと反省は活かしなさーい!!
やれやれ、まだしばらくの間はやきもきすることになりそうです。
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