メディアグランプリ

部活やる奴ってバカだよね


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記事:ほしの(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
「部活に入るなんてバカのやることだ」と心底思っていた。特に運動部に対してそう思っていた。グラウンドをぐるぐる回ったりして「疲れたー」とか「しんどいー」とか言ってるのを見ると、その思いはさらに強くなった。
「なら、やめちゃえばいいのに」
サッカー部の彼には言わなかったけれど、心の底では「サッカーなんぞ辞めて、わたしと毎日遊びなよ」と思ってた。そんなしょうもない彼女は、すぐにフラれるわけだけど、それはそれ。
わたし自身は中学生から高校生までの6年間、帰宅部をつらぬいた。
 
一度だけ友達に誘われて体操部に仮入部してしまい、その翌日にはきっぱり辞めたことがある。若気の至り。顧問の野間先生はキレイな人だったけど、とっても怖い体育の先生だったので、それからの体育の授業は地獄だった。
 
少しばかり断っておくけれど、わたしは運動神経がものすごく悪いというわけではない。運動会の徒競走でビリになったことは一度もない。まぁ、逆にいえばリレーの選手に選ばれたことはないので運動神経がいいとは言い難いが、体育の成績は五段階評価で常に3だった。
 
「まぁ3なら悪くないんじゃない?」と、心の中では密かに思っていた。
全体の数から考えると、明らかに部活で走り回ったり飛んだり跳ねたりしている運動部員が多いにもかかわらず、体育の成績がわたしと同じ、もしくは下の人たちがいることになる。逆の立場だったら、運動していることがバカバカしくなるんじゃないだろうかと思っていた。
 
彼らが汗水流している間、わたしはそそくさと家に帰り、スナック菓子を片手に、大好きなテレビとレンタルビデオと、ときどき読書を楽しんだ。「13日の金曜日」をポテトチップ片手にニヤニヤしながら見ているような女子高生は、青春ドラマの主人公にはなれないが、それはそれで楽しかったので後悔はない。むしろ、大人になったつい最近まで、後悔どころか部活に入らなくてよかったと思っていた。運動なんて時間の無駄だから。
 
そんなわたしが今、まいにち汗をかいている。
三十代最後の夏、わたしはヨガに出会ってしまった。きっかけは些細なことだったと思う。近所の公民館的な場所でヨガサークルの人たちがこじんまりと活動をしていた。参加費も千円とお安く、身体の衰えを感じてきていたのでストレッチでもしようかなぁと思ったのがきっかけだったような? もともと運動をする習慣はないので、家で自主的にストレッチなんか続けられるわけもない。週に一回くらい、気が向いたときにやってみようか。
 
ところが参加してみると、ヨガはただのストレッチでも運動でもなかった。瞑想と謎の呪文のようなマントラ暗唱からはじまり、チャクラがどうだとか、自分の内面を見つめろとか言うのだ。はっきり言って、なんだか怪しい。インスタ映えを狙えるようなおしゃれヨガとも違っていた。そのことが「13日の金曜日」をはじめホラーとオカルトが大好きだったわたしの心には、むしろ心地よく広がっていったのだ。
 
そしてなによりヨガの先生は美しかった。美人というわけではないけれど、そこに彼女がいるだけで周りの空気は優しく、同時に強いなにかがあふれているように見える。
(あれ? 思えば高校時代に体操部に仮入部したのって、友達に誘われたからだけじゃなかった! 学校帰りに、野間先生の美しい開脚を見たからだ!) 
ヨガの先生の開脚を見て、忘れかけていた古い記憶が飛び出してきた。
「こんなにも人間の身体は美しく折れ曲がるのか」
高校時代と同じ気持ちで、ヨガの先生のとるポーズに見入ってしまった。
わたしもこんな風になりたい。なれるだろうか。
 
硬い身体をギシギシいわせながらもレッスンが終われば、心も身体も軽やか、かつ穏やかに整う。その気持ち良さはわたしが今まで経験したことのないものだった。そのうち、週に一度ではもの足りなくなり、別のヨガスタジオの会員となり毎日のようにヨガのレッスンに通った。
最近は、スタジオが休みの日は身体が重たいようにすら感じる。大好きな先生も増え、先生の話を聞くのも楽しみのひとつになった。
 
もしかしたら部活をしていた同級生たちも、こんな気持ちだったのではないだろうか。ヨガは他人と比較するものではない。運動部は勝ち負けあってのことが多いけれど、日々の筋トレなどの練習には、他人ではなく自分と向き合う瞬間があったはずだ。
「疲れたー」と言いながら、グラウンドに倒れこんでいたみんなは、わたしの知らなかった気持ち良さを味わっていたのだ。帰宅部のやつの体育の成績なんてちっぽけなこと、気にする人なんていなかっただろう。
グラウンドには校舎の窓から見下ろす者には見えない、爽快感や達成感があったにちがいない。
 
「部活をする奴はバカだ」と思っていたわたしは「部活をする楽しさを知らず、それを知ろうともしない大バカ」だった。
 
ヨガをはじめて今年で6年。中高帰宅部だったその時間と同じ6年だ。
ヨガが楽しいと言いつつも、なかなか上達しないポーズをもどかしく感じたり、雨の日にヨガマットを抱えて家を出るのが億劫に感じることもある。それでも心の底からヨガが好きだ。やめられない。
今のわたしを誰かが見て「そんなにヨガにはまっちゃってバカだなぁ」と思ってくれたら最高だなぁと思う。それってたぶん、今更だけどちゃんと青春してるってことだから。

 
 
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2018-06-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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