メディアグランプリ

門限が私に教えてくれたこと


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記事:北村涼子(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
「あほかー!!」
と父に一発くらう。
「門限が12時やからって毎日12時に帰ってくるやつがおるか!」と。
 
私は3人兄弟の末っ子長女である。
「涼子ちゃんは女の子ひとりやし大事にされてんなぁ」なんて幼いころから周囲によく言われてきた。
私の中では人並みに大切に育てられてはいるけれど、ただただ「父が厳しい」だけだ、と思っていた。
職人である父は「ざ・昭和のおやじ」状態で私は敬遠しながら毎日を過ごしていた。
極力直接話さないようにいつも母を介してやり取りをしていた。
家族5人で食卓を囲む時も恐ろしくて噛んだものを飲み込むのも難しいぐらい緊張をしていた覚えがある。
そんな絶対的な立場の父に「あほかー!!」と叱られた時の私のビビりようは半端ではない。
 
私には中学生の頃から門限があった。
中学生の頃は20時、高校生の頃は21時、大学生になってからは24時。
中学生の頃は地域のお祭りなどに遊びに行く程度であったが高校生になると交友関係も広がり、繁華街へも出たくなる。
でも、それも全部いつも「今から面白くなるのに!」というところで「はい、帰宅!」という時間になった。
「もっともっとみんなと楽しんでいたい」と思いつつも父の顔を思うと「こわ! 早よ帰ろ!」と律儀に門限を守っていた。
「こわ!」と思いながらも心の中では反発しまくっていた。
なんでうちだけ門限あるの? なんで友達は楽しくまだこの場にいれるの? と。
しかしそれは俗に言う「よそはよそ。うちはうち」で終わってしまうやつ。
 
大学に入学し、二十歳を超え、ようやく門限が「今日のうちに帰ってきなさい」になった。
大学は隣の県である大阪まで通っていたので飲み会なども大阪で行われる。そうなると自宅のある京都までの帰りの時間もしっかり計算に入れないといけない。
ぎりぎりに見積もっても22時半には大阪の飲み屋さんを出発する計算になる。
この時間も「今からさらに楽しくなる!」という時間であったが、もうそこまで贅沢言わずに素直に「今日中に帰ろう」と私の中で決まりとして置いていた。
 
そんなある時、飲み会が続いた。
そして私は何も考えずに午前0時、明日になる数分前に帰宅する、という日を三日間続けてしまった。
で、冒頭の言葉を父からくらうことになった。
ただその当時の私は「なんで怒られなあかんの?! ちゃんと門限守ってるやんか!」と疑問でいっぱいであった。
 
兄ふたりは好き勝手しているのにどうして私に対してだけ門限門限とうるさいのか。
いろいろ考えてみた。友達や母にも門限についてどう思うか聞いてみた。
 
尊敬していた高校時代の恩師にも成人された娘さんがいらっしゃったのでその方にも聞いてみた。
「うちに門限はない。門限を決めなくても常識範囲内にちゃんと帰ってくるから敢えて門限を作る必要がない」とおっしゃった。
それを聞いて二十歳そこらの私は「私は親に信用されてへんのかなぁ」と少し寂しく思った。
 
母はこんなことを言った。
「うちの周りは夜真っ暗になるやろ。そんな中ひとりであんたが帰ってくるとなると心配で仕方ない」と。
確かにうちは住宅地ではなく、工場地であり夜は真っ暗、そしてものすごく静かになる。
そこで何かあって「きゃー!!」と叫んだとしても誰もなんの反応もしない環境である。
 
友達は「あんたんとこ厳しすぎるんちゃうか」とさらり。
 
父には……恐ろしくて聞けるはずもない。
 
それからと言うものの「まだ外にいたい!」という気持ちと「あかん! 早よ帰らな!」という葛藤がたまらなかった。
 
それでも遊びたいざかりの私は決死の思いで門限を破るときがあった。
そらもう自宅の玄関を開ける瞬間のビビり方、ぬき足さし足しのび足の優れていること。
誠心誠意気付かれないようにそーっと自分の部屋に向かった。
もの音ひとつ立てないで、というのは自分だけが思っていることであって、間違いなくバレて一発叱られるんですが。
 
そんな私が結婚をして私の管理責任者が両親から夫に移管された瞬間にはまっていたタガがすっぽり外れた。「わーい! 時間気にせずみんなと飲んでいられる!」。
初めて「終電」にも乗った。これらの感動はなかなか感じることができないと思う。
「門限」がなくなった解放感にしばらく浸り続けた。だからといって午前様をすることもなく「常識範囲内」で帰宅をする。
 
そんな私が親になって思うこと。
それは自分の娘にもしっかり「門限」を決めることは間違いない、ということ。
「親に信用されてないのかな?」と思った時もあったが、親の思いはそんなレベルではない。当時、母が言っていたことそのままである。「心配で仕方がない」。
それが長い年月をかけて今ようやくわかった。
ただ、頭ごなしに「門限」を決めるのではなく「なぜ門限があるのか、親としての思いはどうなのか」をしっかり説明して娘も理解した上でルールとして決めたい。
夜道の女性のひとり歩き、酒に関わるトラブル、ちょっとしたことからも回避できるように、親が子を守る必要がある。
親になって初めて自分の親が私に課していた「門限」の意味を理解することができた。
「厳しい」だけと思っていた父はきっと心配で心配で仕方なくてそういうことでしか表すことができなかったのだろう。

 
 
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2018-06-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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