メディアグランプリ

あなたは目薬を使いこなせているか


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【4月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:笹原智也(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「ほら、あそこに書いてるでしょ」
 
本屋さんで働いていた時、そう言って職場のKさんが少し遠くの壁に張られた紙を指さした。
そこにはどうやら今話していた小説の文庫版の発売日が書かれているらしい。らしいというのは僕がどれだけ目を細めても、その文字はピントがずれて、まるでいびつな四角形にしか見えなかったからである。
 
「え? 見えないの笹原くん」
「はあ、全く」
 
その後あらためて近くで見てみると文字はそれなりに大きかった。そしてたしかにその本の発売日が書かれている。
僕は腕を組み唸った。
 
「うーむ……。そろそろ考えないとかなぁ」
 
僕は裸眼であった。視力は確か最後に測ったので二年前。自動車免許を取った時で左0.7、右が0.9だった気がする。今はそれよりさらに落ちていることだろう。うむ。やはり眼鏡を作るべきではなかろうか。
となれば善は急げである。僕は休みの日直ちに眼科に向かった。一応その場で眼鏡等を作っても困らないように多めにお金を下ろして来た。
受付で「最近目が悪くなってきて、できれば眼鏡を作ってもらいたい」と伝えていたので、名前が呼ばれると、まず通されたのは視力検査の部屋だった。
よくあるCの形が様々な方向、大きさになる検査器具を用い、あっち、こっち、などと出来る限り答え、またも診察室で待機。その後すぐに診察室に呼ばれた。
先生がパラパラとカルテを見ている。
 
「はい。えー、笹原さんね」
「はい」
 
お金はあるし、さっさと作ってもらおう、というような気持ちでいたのだが、先生はカルテを見ながら頬をポリポリと掻いておっしゃった。
 
「んー。あなたまだ早いね」
「へ?」
 
まだ早い? まだ早いとは一体?
 
「まだ眼鏡作るには早いよ。ここに来るのちょっと早いね」
「はぁ……そうなんですか?」
 
まだ若造だぞ君は。そういうことなのだろうか。しかし、このまま視界不良が続くのも実際気持ちが悪いのだけどなあ。
ちなみに先ほど測った結果は、左が0.6、右が0.8だった。やはり少しずつ落ちているのだ。
そんなことを思っていると、先生は続けた。
 
「これね、要するに疲れ目なんだよ。スマホとか、PCとか、現代人はとにかく目を使うでしょう? だから、結構こういう人もいるんですよ」
「疲れ目……」
「そう。だからまずは目薬を出しますんで、これを毎日四回、忘れずにさしてもらいます。まずは今から一回目さすね」
 
め、目薬!? それでこの視界不良が治るとおっしゃるのか? そんな馬鹿な!
 
「はーい、失礼しまーす」
「は、はい」
 
看護師さんから目薬をさしてもらいながら「本当に治るのだろうか」と疑いを抱き続けた。だって今まで目薬で視力を回復したと実感したことなんて無い。あれは何というか、気休めのようなものだと内心思っていた。
とりあえず同じ種類のものを二つ処方してもらい帰宅した。正直何だか追い返された気がしてしまった。まあお金はかからなかったのでありがたいけど……。
とにもかくにもまずは一週間、この赤い目薬を毎日、日に四回さすのだ。24割ることの4。単純計算で六時間に一回。
 
半信半疑ではあるがさし続ける。すると、三日目を過ぎた辺りで変化に気づいた。
それは朝起きて、いつも通りソファに座り、テレビを点けたときのことだ。
普段なら目を細めてもぼんやりとしか見えなかった右上のテロップの文字が、なんと力を込めなくてもくっきりと見える。
 
「すげーっ」
 
僕は思わず笑ってしまった。
壁に掛かった時計の文字も見えるし、本棚の本の背の文字も見える。何より、以前より景色全体にしっかりとピントが合っている感じがする。さすがにずっと遠くはぼやけて見えるが、風邪と一緒で、体が本来こうあるべきである状態に戻った際に感じる解放感、なんというか、無敵感がある。
冒頭の職場の壁に掛かるポスターも発売日と、さらに小さかった作者の名前までハッキリ見える様になった。これはすごい。本当に眼鏡なんていらなかったのだ。
 
 
「うん。左0.9、右1.0。上がってますね」
「おおーっ」
 
改めて病院に行き、検査を受けると、僕の視力はそこまで回復していたことが判明した。感嘆の息が漏れる。
そして先生曰く。
 
「眼球って起きている間ずっと使うものなのに、結構みなさんケアをしないんですよ。本当に疲れた時に蒸気の出るアイマスクとか目薬とか。そうじゃなくて、大事なのは日ごろのメンテナンスです。目を動かすのだって筋肉なんですから、運動した後と同じように、しっかりケアしないと」
 
僕がなるほど、とうなずくと先生は続けた。
 
「そしてやっぱり、僕が一番続けてほしいのは目薬をこのようにさし続けること。結構皆さん目薬を使いこなせていないんです。しっかり使ってあげれば、目は今よりずっと楽になる」
 
そして先生は「もちろん、しっかり休ませてあげることも忘れずにね」と締めくくった。
うーむ。確かに目薬を見くびっていたようである。あの小さな容器に入った少しの液体が偉大なものに思えてきた。
 
皆様は目薬を使いこなせているだろうか?
もし最近目が……なんて方、また目薬は疲れた時だけさす、というような方がおられたら、一度定期的にさしてみてはいかがでしょう?
文字通り、見える世界が変わりますよ!

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2018-06-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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