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結婚11年、夫婦円満のために私が絶対に諦めなかったこと


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記事:鈴木ゆかこ(ライティングゼミ・朝コース)
 
 
「言わなきゃわからないの?」
結婚したばかりの時に、夫に言われて衝撃を受けた一言だ。
 
私たち夫婦は、両親に付き合っていた期間をうやむやにしたほど、芸能人並みのスピード婚だった。
 
付き合って二カ月のとき、大喧嘩の勢いでプロポーズされた。お互いのことをよく知ってから結婚について考えるものと思っていた私は「29歳の人に向かって、結婚なんて簡単に言わないでよ!」と返事をした。結局、人生最大の決断をするには、彼に関する情報が少なすぎたために、自由が丘のよく当たると評判の占い師に「運命の人かどうかは、分かりません。でも、あなたのことをこんなに愛してくれる人はなかなか現れませんよ」と言われたのが結婚の決め手となった。
 
 
スピード婚ということは、まだ慣れあっていない甘い時間も多いが、結婚生活を送りながらお互いのことを知るという苦労もある。おおむね順風満帆な結婚生活だったが、ただ一つ、私を悩ませることがあった。それは、夫とのコミュニケーションだ。
 
夫はとにかく自分の気持ちや考えを口にしない。不機嫌になると、ただただ黙っている。「言わなくてもわかってよ」という「察して星」の住人だったのだ。
 
一方の私は、思ったことや考えたことを何でも口にするタイプで、相手にもはっきりと言ってほしい。いや、言われないと分からない。そのため不機嫌さだけを醸し出した相手を目の前にして、何を考えているのか分からない、こちらの言葉に反応しないという状況に、手足を縛り付けられたような窮屈さを感じた。
 
結婚して間もないころ、たびたび起きた私を最高に不快にさせる出来事が、夫のだんまりからの引きこもりだ。
 
ある晩のこと、夕飯を食べながらおしゃべりをしていた最中に夫が突然不機嫌になった。なぜ不機嫌になったのか、皆目見当がつかない。「なんで怒ってるの?」と聞くと「言わなきゃわかんないの?」と冷たく言い放ち、食事もそこそこに、自分の部屋にこもってしまった。扉のこちら側からいくら声をかけても返事は返ってこない。私の前に立ちはだかる薄い扉一枚が、私と夫の心を大きく隔てているようだった。
 
そして翌朝、前日からの不機嫌さを引きずっていた夫が「口のきき方に気をつけなよ」と言い捨てて出勤していった。夕飯の時に冗談で「おかず食べろよなー!」と言ったのにカチンときたようだった。その種あかしに私はポカーンとするしかなかった。「その時に言ってくれなきゃわからないよ、冗談だったのに!」と。
 
終始こんな感じなので、喧嘩のたびにモヤモヤが残って悶絶した。そこで私が、この苦しみから脱するために試みたことは、夫の部屋をなくすこと、そして、しつこく食い下がって夫の口を割らせることだった。「鳴かぬなら鳴かせてみようホトトギス」である。
 
「私のことで怒ってるんでしょ?」
「嫌な思いさせたのは、ごめんね。でも理由が分からないと、また同じことしちゃうかもよ」
「私が〇〇って言ったのが嫌だったの?」
「今、何考えてるの?」
「誤解かもしれないじゃん」
そして最後には、大泣きしながら訴える。さすがの鳴かないホトトギスも嫁の涙には弱いのか、むすっとしながら鳴き始める。そんな風にして、毎回、何とか気持ちを聞き出して、お互いの気持ちを伝えあい和解に持ち込んだ。その時間が1時間以上に及ぶことはざらだった。
 
またある時は「鳴かぬなら、鳴くまで待とうホトトギス」で、夫のだんまりに合わせて、話し出すまで横でじーっと待ってみたこともある。しかし忍耐力のない私は、せいぜい5分程度しか待つことができず、最終的には、鳴かせてみようホトトギスで口を割らせることになったのだが。
 
夫が不機嫌になるたびに繰り返されるホトトギスコミュニケーションに、かなりのエネルギーを注いでいた。「鳴かぬなら、殺してしまえ」とはさすがに思わなかったものの、「鳴かぬなら、放っておきたい……」と思ったことは何度もあった。
 
けれど、夫とのコミュニケーションを絶対に諦めたくなかった。運命の人かは分からなくても、私をこんなに愛してくれる人は他にいないのだとしたら、コミュニケーションを諦めた時に、お互いの気持ちが遠くなってしまうのが怖かった。ずっと大好きでいたかった。そのためにも、これから何十年も同じ苦痛を抱き続けたくはなかったからだ。
 
 
結婚して4年ほど経った頃だったと思う。そんな貝のように口を割らせるのが難しかった鳴かないホトトギスが、徐々に小さな声で鳴き始めたのは。明らかに結婚当初よりも、簡単に鳴いてくれるようになったのだ。
 
年月とともに、だんだんと自分の気持ちを口にすることに抵抗がなくなってきた夫。今年で結婚11年になるが、今では鳴かせてみようとしなくても、鳴くまで待とうとしなくても、自ら鳴いてくれるようになった。
 
夫が自分の気持ちを話せるようになって起きた変化。それは、大喧嘩の回数。結婚当初は、大泣きするような喧嘩も多かったけれど、最近は私の怒りが爆発するような喧嘩は、年に数えるほどしかなくなった。以前なら大喧嘩に発展した事態も、まずお互いに気持ちや考えを伝えることで、喧嘩の手前で収まるようになったのだと思う。
 
我が家の夫婦円満の秘訣は、コミュニケーションを諦めなかったこと。年月はかかったけれど、ホトトギスが鳴くまで粘った自分を褒めたいと思う。

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2018-06-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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