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メディアグランプリ

私は自ら落とし穴に落ちたのだ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:山下直子(ライティング・ゼミ平日コース)

 
 
私はかれこれ10年近く、”自分の家”というものを持たなかった。24歳の秋を迎える頃、私はそれまで住んでいた神奈川のアパートを引き払い、持っていた家具も電化製品も全て処分。私の元に残ったのは、大きなスーツケース1つと数個のダンボールだけになった。
 
その日から私は、いつも誰かと一緒に暮らすようになった。そう、この日を境にシェアハウスを転々とする生活スタイルにしたのだ。最初は留学資金を貯めるため、という理由で家賃が安いシェアハウスに移動したが、たくさんの人と出会える面白さと、なんと言っても引越しのしやすさに、私は自分の家を持つ必要性を感じなくなっていった。
 
いつも好きな時に好きなところに行って生活をしたい。
留学をきっかけに世界を知り始めた私は、もっと地球の色んなところに住んでみたくなった。だから、ずっと身軽でいたかったのだ。
 
日本でのシェアハウス生活から10年。オーストラリア、カナダ、アメリカ、ニュージーランド、オランダと、自由に好きな街に可能な限り好きなだけ住んできた。そんな私も2年前に完全帰国。相変わらず家を持つつもりのなかった私は、ずっと憧れていた京都に住んでみることを思いついた。
 
「半年くらい住んで鎌倉に住もう。その後は沖縄に行ってみようかな」
 
そんなことを計画しながら、早速良さそうなシェアハウスを見つけて移動。その日から私の京都暮らしが始まった。
 
憧れでもあった京都生活は、自分が思っていた以上に肌に合っていて、どんどん京都の魅力に引き込めれていくのが分かった。ほどよい感じの都会感と自然との距離。そして何より私を虜にしたのは、京都のある地域の魅力だった。それが左京区。
 
 
京都の人でも、「あそこはちょっと違う」「あぁ、あそこね。見つけちゃったね」なんて言われるような地域。どういう意味か知りたくて何度も左京区に通う私は、ついにその意味が分かってしまう。
 
秋に左京区で行われたとあるイベントを訪れたとき、私の心は左京区にロックオンされた。そのきっかけは、お相撲さんの格好をしたアカペラシンガーがステージで熱唱し、その彼に手拍子で答えるお客さんを見たことにある。
 
きっと普通なら横目で見られるか、面白がられてしまいそうなパフォーマンスなんだろうけど、そのイベントに集まっていた人たちが彼を見る目はとても温かたった。子供からお年寄りまで、本当にその時間を楽しんでいたのだ。
 
「ここだ」
 
私はしばらく、彼のライブとその彼を囲むお客さんに見とれていた。
 
「個性が強いと言われている私でも、ここなら浮くことなく自分を出して生きて行けるかもしれない」
 
日本社会の”協調性の美学”に生きづらさを感じていた私は、そう思ったのだった。私がロックオンされてしまった左京区には、いわゆる個性的な人が多く集まって来ていて、そしてそのことを偏見の目で見たりする人たちが少ない場所だったのだ。
 
「京都に住もう!」
 
そう決めてからの私は早かった。家を持つつもりなんで全くなかった私は、その1週間後には新居の契約書にサイン。もちろん場所は左京区。『家を持つ=自由でなくなる』と思って10年もスナフキン生活をして私は、こんなにもあっさりと家を持つことになったのだ。
 
この時の私は、”自分で掘った落とし穴に自ら落ちた”といった感じであった。きっと、左京区という存在を知ったときから、私は少しづつ自分が落ちるための穴を掘り始めていたのだと思う。
 
本音をいうと、30歳を迎えた当たりから、拠点となる場所が日本に欲しいと思っていた私がいたのである。でも、簡単に移動出来るシェアハウス生活を10年もしていると、なかなか家を持つことには踏み切れなかった。だから、半ば強制的なきっかけが私には必要だったんだと思う。それが私にとって、自分で掘った落とし穴に落ちるということだった。
 
しばらく日本放浪でもしようと思っていた私は、京都の住みやすさにスコップを持ち、左京区を知ることで自らを落とし入れる穴を掘り始めた。どうしてもそこを通らない限り、次に進めないようにしたのだろう。私の心は、京都に住み始めた時点で決まっていたのだ。
 
“左京区”という落とし穴に落ちたことで、”家を持たない”という執着心から解放された気がする。それは自ら落とし穴に落ちたことで、たくさんの人に手を差し伸べてもらい、心の自由さを手に入れ始めたからだ。私は今、たくさんの仲間に囲まれてライター・エッセイストとして歩き出した。京都・左京区での出会いが、以前にも増して自由というもの与えてくれている。
 
私がここで落とし穴に落ちなければ、物理的な自由だけを追い求めていたかもしれない。自ら掘った落とし穴に落ちることで、心の自由さを知った。たまには思いっきり落とし穴にハマるのも悪くない。今の私は、身も心も自由さを感じている。

 
 
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2018-06-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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