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メディアグランプリ

「君の『文体』に恋してる」


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:田口靖幸(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
皆さんは、異性の書いた「文体」に「ソワソワ」することってないだろうか?
 
「え? 本とか雑誌とかにそんな反応するの?」
 
いやいや。そういう不特定多数に向けた文ではなく、「異性から自分に向けられて書かれた文」に限っての話である。
 
eメール、LINE、果ては「ポストイット」に書かれた伝言メモにいたるまで、僕の場合は女性が自分に向けて書いてくる文。
その文体に、相手の表に出てこない一面を見いだすことがある。そんな文体に「ソワソワ」することがあるのだ。
 
では僕の場合、どんな文体が「ソワソワ」するのか。
 
その人の言葉の選び方?
それとも言葉のセンス?
そういうのもあるかもしれない。
この感覚にカタチを与えるのは難しいのだけれど、
「あ、この人ともっと仲良くなりたいな」という気にさせられる文体、なのかもしれない。
 
念のためここで断っておくが、「文の内容」に対してこの感覚が働くことはない。
文の内容は見たまんま、読んだまんまで、それで終わり。そこにイマジネーションが介在する余地はなく、味もそっけもない。
 
「文章」とも違う気がする。文章は偽ったり嘘をつく。
 
やはり、「文体」としか言いようがない。隠そうとしてもにじみ出てしまう嘘がつけないのが「文体」。
 
実際、僕は結婚相手を「文体」で選んだのだ。
 
「新婚さん、いらっしゃい」に僕が出演したなら、司会の桂文枝から、
 
「旦那さんは、嫁はんのどんなところがええなぁ、と思ったの?」
 
「彼女の文体が気になり始めて、あ、この人いいなぁと思いました」
 
文枝さん枝はゆっくりと椅子からひっくり返って見せるかもしれない。
いや、文枝さんがそのリアクションを取るときは「下ネタ」に限ってだったか。
 
嫁さんと出会ってからもう10年以上になる。
僕は、ある地域新聞の編集部に出入りしていた。
 
地域紙の編集製作だけでなく、地域活性化のためにイベントもよく開催していた。その活動にも興味があって、僕はときどきその地域紙主催のイベントに参加するようになっていた。
 
嫁さんはその編集部で働いていた。当時、嫁さんはまだ20代半ばくらいだったろうか、年齢のわりに、そこの女性編集長とツーカーの仲で、上司と部下というよりは友達とか、親子、姉妹のようだった。
 
元々、その女性編集長と知り合いで、ウマが合っていた僕は、嫁さんとも自然と顔を合わせるようになっていった。でも、この頃はお互いに意識することはなかった。
 
だいたい嫁さんは僕より9も歳下で、しっかりしていた印象はあったものの、まだ学生みたいな雰囲気もあった。向こうから見ても僕は30過ぎのオッサンだし、お互い恋愛とかそういうのは全くなかったと思う。
 
そんなある日、あるイベント参加者向けのインターネットの掲示板が立ち上がった。僕と嫁さんもそのメンバーになって、ネット上でのやり取りをしているうちに、じわじわ来はじめたのだ。「ソワソワ」が!
 
掲示板で交わされたやり取りの中で、嫁さんが僕に向けてカキコした文からは、「この人と仲良くなりたい」と思わせる何かがあった。
 
具体的にどんな文体だったのか、そんなのいちいち覚えていない。
いや、嘘だ。
書くのが恥ずかしかったので誤魔化そうとしていただけだ。
 
書きます。
 
えー、あるとき、「ふふふ」から始まる一文があって、そのへんから「ソワソワ」来はじめて、そうこうしているうちに、僕が立てたふざけたスレッドで、「お馬鹿さん」というタイトルのレスを投下してきたのを見て、「あ、この人ともっと仲良くなりたいな」と、思うに至ったのである。
 
まぁ、実際はこんな風にしょーもない、たわいもないものだった。
でも、その人の本質のような物が、彼女の文の言葉のあいだから、にじみ出ていたのは確かだった。
 
そこからカセットコンロみたいに「ぼっ」と点火したのをスタートに、つき合い始めて結婚し、今に至る。こうして僕は結婚相手を「文体」で選んだことになる。
 
今どきの若い人たちの恋愛は、中心はLINEである。
若いカップルは、相手と会話せず、ずっとスマホをいじっているようにも見える。
それは、デート中、目の前にいる相手ともLINEで会話しているようにも見える。
 
こんな若い人たちの姿を見て、僕らオッサンたちは眉をしかめる。
 
「今時の若い奴らはLINEばっかりやって! せっかく会っているんだからスマホから顔を上げて話をしないのはけしからん!」
 
などと、波平さんばりに説教垂れる輩がいる。
 
しかし、本当にそうだろうか。
本当に相手を目の前にして口頭で話をすることだけが恋愛においてはベストなのだろうか。
 
どぶねずみの美しさは決して写真には写らない、とブルー・ハーツは歌った。
 
LINEであなたに向かって送られてきた文体には、写真や見た目だけではわからない、相手の何かが秘められていることだってある。
 
LINEとて、多くは、あなたにとってただの「文章」や「内容」で終わる。
でもいつかあなたのLINEに送られてくる文章や内容が「ソワソワ」する「文体」を纏って現れたなら、その送り手を簡単に離してはいけない。
そんなふうにして選んだパートナーは、案外、一生ものになるかもしれないからだ。
***

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2018-07-04 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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