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人気よりも、本気で選べ!


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記事:伊藤千織(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「あなたの授業ではなく、別の先生の方がいいのでそちらを選びました」
 
自分の教え子にこんな言葉を言われたら、どう思うだろう。
 
成績が下がってしまったのだろうか。
自分の授業がそんなに悪かったのか。
他の先生の方がそんなに面白いのか。
 
間違いなく気分は良くないと思う。
そんな失礼な言葉を、私は高校生の頃、実際に言ってしまった。
 
高校生の頃、私は大学受験のために予備校に通っていた。高校2年生の頃から通い出し、受講していたのは現代文、古文、英語の3教科だった。
 
高校3年生になり、受講科目やクラスの数が増えた。自分で授業を選択できるのだが、ちょうどすべての教科のクラスを選択し終えた4月頃、予備校の教室へ向かう途中の廊下で、高校2年生の頃に現代文を教わっていたA先生に偶然会った。
 
「おお! 久しぶり!」
 
A先生は、笑顔で私に話しかけてくれた。授業中もA先生はずっと笑顔なのだが、いつも目が笑っておらず、無理やりに表情を作っていることが簡単に分かった。
 
「お久しぶりです」
 
「現代文はどのクラスにしたの?」
 
「S先生の現代文の授業を受けることにしました」
 
「そっかそっか。あの先生人気だもんね」
 
A先生の表情は全く変わらなかった。いつものように仮面を被ったような笑顔だった。
その時は何も分からなかった。私は本心で言っていたから。
 
私が3年生になってA先生ではなくS先生を選んだ理由は、A先生の授業が良くなかったわけではない。
むしろA先生のおかげで現代文が得意になった。
 
A先生の授業は独自の読解方法で文章を読み解いていく論理的なスタイルだった。
私は普段本を読まなかったため、心情を読み解くことが苦手だったのだが、A先生の授業で徹底的に読解方法を勉強したおかげで、現代文の模試の成績が20点以上伸びた。
 
また、授業中生徒が飽きないよう、A先生は笑顔で時々うんちくや自身のエピソードを披露してくれた。さすが現代文の先生なだけあって、話し方がうまく惹きつけられた。毎回楽しく能動的に授業を受けていた。
 
 
それにも関わらず、私が受験のための大事な1年間に、成績を上げてくれたA先生ではなくS先生を選んだ理由は、A先生よりもS先生の方が人気だったから。それだけだった。
 
S先生は3年生の授業しか受け持っていなかったのだが、2年生の頃からS先生の噂はよく耳にしていた。
イケメンだとか、授業が厳しいだとか、他の予備校でも講師をやっているだとか、様々なものだった。そして、3年生のほとんどがS先生の授業を選択していた。
2年生の頃から同じクラスで勉強してきた友人も、3年生ではS先生の授業を選択した。
 
ほとんどの人が受講していて、そんなに有名で噂になるくらいなのだから、きっといい授業に違いない。そう思い、私も友人と同様に3年生からS先生の授業を選択した。
 
結果からいうと、私の現代文の成績は打ち止めだった。
 
一生懸命授業を聞いてS先生のペースに食らいついたが、S先生のやり方はあまり頭に浸透しなかった。
模試の結果も伸びず、受験本番でも、納得のいく回答ができた大学はなかった。
 
S先生は確かに他の先生よりも若く、ギラギラとしていた。しかし噂ほどイケメンでもなかったし、嘘でもA先生のような笑顔は授業中一度も見せてくれなかった。
 
はっきり言ってしまえば、つまらなかった。
 
私はS先生に、何を期待していたのだろうか。
今考えてみると、当時の私はとても浅はかだったと思う。
受験を迎える大事な授業で、A先生のことも、自分自身のことも信じていなかった。
予備校の費用もバカにならないのに、ミーハー心だけで物事を選択していた。
 
今はもうこんな無駄な選択はしないが、私が別の先生を選んだことを知った時のA先生の心境を思うといたたまれない。
生徒の希望する未来を願っているのに、自ら気持ちとは真逆に突き進んでしまったのだから。
 
周りに流され、多数決で判断するのではなく、自分のためになるかどうかで物事を判断しなければならない。それに気づいたのはあの頃から10年経ってからだが、これにもっと早くから気づいていたら、私の目の前の光景は変わっていただろう。
 
自分の人生は目先のものだけではなく、何十年も続いていく。それを是非、今の学生には気づいて欲しいと思うし、大人は是非教えてあげてほしい。
少しでも自分自身を信じて、自分の人生に本気になって前を向くことができる学生が増えてほしいと願う。

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2018-07-04 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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