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しょうもない6年の恋愛の末、泣き叫んでたどり着いた先


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:ニシモトユキ(ライティング・ゼミ朝コース)

 
 
大学を卒業したくらいの頃。
人から「ひどい」と思われるような恋愛をしていたときがあった。
その人とは、6年間、付き合った。
それまでの人生で一番長く付き合った恋愛だった。
穏やかで幸せ、というよりは、とにかく激しくエネルギーを使う時間だった。
 
彼は、プロのパフォーマーで、六本木や四ツ谷にあるバーでショーに出ていた。
当時は、テレビの2時間番組で特集を組まれて出演することもある、そんな人だった。
その仕事だけで生計をたてていける人なんて、ひと握り。
そんな世界で成功している人だった。
 
2人でいるときは、よく怒られた。
連絡が遅い、気が利かない、頭悪いんじゃないのか。
まさに、キレている、というような激しさだった。
年上で、パフォーマーとしての彼に憧れ、尊敬もしていた私は、言い返すことができなかった。
理不尽と思えることで怒られても、飲み込んでいた。
 
あるとき、仕事終わりの彼に、いつものバーに呼び出されて行ってみたら、地方からショーを見に来た、というファンの女の子をタクシーまで送っていくところに、うっかり鉢合わせてしまったこともある。
何も言えず、ただ、泣くしかなかった。
嫉妬からくる執着か、純粋に彼を好きな気持ちなのか、判別がつかなくなっていた。
 
そんなふうに、もつれて絡まった恋愛だったから、別れるのもまた、ひと苦労だった。
別れを決意してから別れるまでに1年以上かかったのだ。
切り出したのは、私のほうだった。
少しずつ、自分のペースを取り戻しつつあり、自分の道を進み始めていた私への、彼の束縛が厳しくなっていったからだった。
通っていた専門職の学校を辞めろ、と言われたり、一生仕事しなくていい、と言われたりしていた。
言われるたび、羽をもがれるような気がした。
さすがに限界だ、と感じて、意を決して切り出した。
 
一筋縄ではいかなかった。
一緒にいてくれ、と懇願された。
彼の一転した態度に、驚くより辟易した。
もう理不尽なことで怒ったりしないから。
お前の生活も仕事も尊重するようにするから。
そんなことを言われ、突っぱね続けるのも面倒になって、元に戻った。
でも、それも長くは続かなかった。
離れ始めた心は、止まらなかった。
連絡がきても、返事をしないでいたら、手紙やはがきが届くようになった。
彼の家で一緒に飼っていた猫の写真が同封されたりしていた。
客観的に見れば、ストーカーじみた行為だ、とも思ったけれど、私たちの付き合いは、それまでだって普通じゃなかったから、騒ぐ気にもならなかった。
そのころには、猫の写真に気持ちが揺らいでも、彼の手紙に揺らぐことはなくなっていた。
 
これで綺麗さっぱり、次に進める。
今度こそ、自分の道をいきいきと進んでいく。
そう、そのはずだった。
なのに、私に訪れたのは、感情のない世界だった。
何をしていても楽しくない。
何を言われても腹が立たない。
ただ、淡々と毎日をこなしているだけ。
それ以上でも、以下でもない。
そして、お酒を飲んだとき、家に帰ってから、無性にポテトチップスが食べたくなった。
コンビニで買って、一袋を一気に食べる。
何かを紛らわせるように。
何かを解消するように。
自分の中では、彼のことはもう終わったこと、と捉えていて、そのときの自分の状態とは関係ないと思っていた。
 
1年ほどして、仕事のトレーニングの一環で、カウンセリングを受ける機会を得た。
その先生は、Emotion Focused Therapyという、感情を核とする心理療法を使う人だった。
彼の話だけではなく、いろんな話を聞いてもらっていたけれど、ある日、先生からの提案で、彼がそこにいるとイメージして、会話をしてみることになった。
自分でも、口からどんな言葉が出てくるのか予想がつかなかった。
最初は、彼に文句を言っていた。
大事な時間を無駄にした、とか、もっと早く別れればよかった、とか。
けれど、先生から「そのまま彼の前に留まって」と言われてから、スイッチが入ったように、何かが変わっていった。
猛烈に、彼への怒りが湧いてきたのだ。
ただ、彼の言いなりになっていた自分でもない。
理論的に冷静に彼に反論して問い詰めていた自分でもない。
ただ、怒りでいっぱいの自分がいた。
そして気づくと、こう泣き叫んでいた。
 
「ちゃんと愛してほしかった! 私は愛してた!」
 
何度も、何度も、繰り返し叫んで、涙でぐちゃぐちゃになった。
全身が熱くて、何かでいっぱいで、でも、嫌な感じではなかった。
少し落ち着いてくると、身体いっぱいが温かいお湯で満たされたような、そんな感覚になった。
 
言葉で説明しきれないくらい、変化は劇的だった。
好きなことを楽しめるようになった。
心から笑えるようになった。
腹を立てられるようになった。
飲んだ後のポテトチップスはいらなくなった。
 
私たちは、どうしてこうも、複雑に絡まって考えようとするのだろう。
相手が自分をどう思っているか。
相手の周りにどんな人がいるのか。
周りから自分がどう見えているのか。
世間体。
将来性。
世の中的に、幸せなのか。
でも、そんなことじゃなかった。
私が次に進むために必要だったのは、たったふたつ。
自分がどう感じているか。
そして、どうしてほしいか。
それをしっかり認めて、口に出す。
それだけだった。
 
もう、忘れない。
私が、私でいるために。
 
 
***

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2018-07-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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