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宿題をやる本当の理由


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記事:濱田 綾(ライティング・ゼミ平日コース)

 
 
「たかが約束でしょ!」
相手は開き直ったように言った。さすがに私も、頭に血が上っていくのが分かった。
「学童クラブで宿題をやって帰ってくるというのは、約束として決めたよね。何でか分かる? 家に帰ってきてから寝るまでの時間は少ない。その時間で宿題をやれる? 学童クラブで遊ぶのは楽しい。でも宿題をやってから遊ぶというのは、約束として決めた。あなたにとっては、たかが約束かもしれない。でもお母さんにとっては大事な約束!」
「やろうとは思っていたけど、遊んでしまうからしょうがない」
堂々巡りだ。こども相手に何を熱くなっているのかと思うが、止められない。
 
息子は小学3年生。共働きのため、放課後は学童クラブに通っている。
帰宅後は夕飯を食べて、お風呂に入るだけであっという間に寝る時間になってしまう。
そもそも寝る時間というのも、親が寝かせたい時間なのかもしれないが。
ただ、時間を考えると、宿題が終わっていないということは私にとっては大問題なのだ。
 
「宿題をしている人はあんまりいない。みんな遊んでいる。だから遊んでしまう」
「みんなやっているからいいのか!」とヒートアップしそうになる。
のび太やジャイアンのお母さんのような、よくある光景。
とりあえずは、ぐぐっと飲み込む。頭から角が生えてきそうだ。
 
書きかけのノートを見ると、問題の番号だけは記載されている。
走り書きされた①の文字。宿題に取り掛かろうとはしたんだろう。
気持ちはわからないでもない。
 
宿題の量自体は多くはない。漢字練習や計算程度だ。
ただ、私自身が幼かった頃とは違い、宿題の丸付けは各家庭の担当になっている。
帰宅してからの2大イベントは夕食づくりとお風呂だ。
その合間をみて、宿題の丸付けをして、音読練習にも付き合う。
余裕わずかの2時間タイムレースのようだ。
 
息子は、ザ・長男だ。繊細だが、素直な性格だと思う。
低学年のうちは習ったばかりの字を力強く、丁寧に書いていた。
中学年になると、ミミズのような読解不能な文字が出てきたが、それでも課題は仕上げていた。
私も字が丁寧でないのは目をつぶっていたつもりだった。
宿題は学力のためというよりも、仕事でいう契約だと思っていた。
提出期限を守るということが大事だと。そう思っていた。
 
ある日、兄弟の体調不良でいつもよりも早めに帰宅した。漫画を手に持ち、ランドセルを隠す息子の姿があった。慌てぶりから、宿題をやっていないことはすぐに分かった。
いつも親の帰宅時間が遅いから、その時間で何とかごまかしてきたんだろう。
「どういうこと?」
聞くと返ってきたのが「たかが約束」だった。
 
そのあとは散々だった。
腹が立って、そしてがっかりした気持ちでいっぱいになった。
一度頭に集中してしまった血の流れは、そう簡単には戻ってはこない。
走り書きされた番号も免罪符にはならない。
むしろ言い訳がましいと見るのも嫌になっていた。
 
じゃあ、遊ぶことがわるいの?
戦線離脱した自分に問いかけてみる。
いや、そうではないだろう。
友達がいることや学童生活を楽しく過ごしてくれることはむしろありがたい。
友達がいるのかなと心配していた時期にくらべれば贅沢な悩みなのか。
 
宿題をやらなかったことがわるいの?
それもどうだろう。
確かに宿題をやってこなかった事で、帰宅後のスケジュールはかなりタイトになる。
つまり、親の予定通りに進まないことが気にくわないのか。
両親ともに帰宅が遅く、寄り添う時間がすくないのか。
少し後ろめたさもある反面で、親は親の人生、仕方ないという思いもある。
そもそも宿題をやらないという選択肢だってあるかもしれない。
結局は誰かのためにやるものではないのだから。
 
色々と考えていると、結局「たかが約束」という言葉に戻ってくる。
「たかが」
これがどうしても許せなかったのだ。
約束をまもるということは、そんなに簡単なことではない。
大人になった今も、どうしても守れなかったり、忘れてしまうことさえ、ある。
でも、結果はどうであれ、心もちは大事ではないのか。
「たかが」と考えている人のまわりには、誰も集まってこない。
今だからこそわかる。
大人になると、約束の連続で日々は回っていく。
 
宿題は、その約束をまもるための準備運動なのではないか。
毎日毎日、学校との、先生との約束の積み重ねだ。
自分自身で考え、動くことの準備だ。
正直、漢字の練習をしなくても音読練習をしなくても、すぐに困るレベルにはならないだろう。
けれどその効果は、日々積み重なっていく。大きなケガをしないように、体を支えていく。
そして、当たり前に行うようになったとき、最高のパフォーマンスを発揮できる。
 
「約束をまもり、自分に責任をもてる人になってほしい。宿題は、そのための未来への準備運動だと思う」
後日息子にそう話した。
息子に届いたかどうかはわからないが、大きく頷いてはいた。
 
自分が幼いころは、深く考えもしなかった宿題。やらされている感じが強かった。
ただ宿題とはありがたいものだなと、今だからこそ、わかる。
そして、息子の宿題を丸付けするたびに問いかけられているようだ。
「あなたは約束を守れていますか」と。
 
 
 
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2018-07-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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