メディアグランプリ

学ぶことは掃除機をかけること


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記事:かめ(ライティング・ゼミ平日コース)

 
 
「あっ! そんなに速く掃除機かけて! もっとゆっくり!」
母は言いました。
だって、ゆっくりとやるの、結構疲れるんですもん。
私は、掃除があまり得意ではありません。昨日も、本屋さんでせっかく薦めてもらった本を、
「枕元の山積みの本にうなされる!」
と、恐ろしく感じてしまい、購入を遠慮させてもらいました。
みなさん、どうやって掃除や片付けをされているのでしょうか。なんの自慢にもなりませんが、私の部屋は散らかっています。
ひとり暮らしを始めてまず困ったのは、ごみ出しでした。実家で何も気にせず暮らしていたのが申し訳なくなるくらい、ごみ問題がめんどうでした。
新聞、段ボール、生ごみ、苦手な物が増えました。まぁ、何かの閉め切り前には、無駄に片付けとかしちゃうんですけどね。
 
私の家には、本がたくさんありました。
父と母は、なぜ結婚したのだろう? と子ども心に思うほど仲が悪かったのですが、本と音楽が好きだということが共通点でした。
父は、本屋さんに勤めていました。
まず1社目、倒産。父は、社長からお金を貸してくれ、と言われ、母に内緒で倒産前に相当な金額のお金を貸していたようです。もちろん、そのお金は返ってきませんでした。幼い頃、母がよくぐちっていました。
2社目、営業不振? で、ほかの会社に移ることにしたようです。
そして、3社目、また倒産。
「会社、倒産してたんだって」
倒産は私が大学生の頃のことだったのですが、母が暗~い声で電話してきました。
「父(とう)さんなだけに、倒産(とうさん)……」
と、言いたかったけれど、言える空気ではありませんでした。父は、しばらくは会社に行っているふりをしていたけれど、黙っていられない状況になりしぶしぶ打ち明けてきたようです。
 
最近、天狼院書店に通うようになり書店業界が厳しい状況だったということを知るまで、私は父自身がちょっとだめな感じの人間なんだと思っていました。
母が父を頼りないと暗示をかける呪術師? のようなところがあったからでしょうか。
父に根気がないように見えたからでしょうか。
父におもしろみが感じられず、興味が持てなかったからでしょうか。
それでも少し、父を肯定することができました。
それと同時に、やっぱり本は楽しいですし、本が好きな人のことも好きなんだよな~と思います。
 
私の姉と仲がいいのですが、姉は、本がとにかく好きでした。
「なにがほしい?」
歯医者さんに行ったあと、風邪をひいて病院に行ったあと、母がごほうびにほしいものを聞くと、姉は必ず、
「本がほしい!」
と言ったそうです。
私は姉ほどではなく、姉からその本の内容を教えてもらうのが好きでした。
「いて座はね、おしりに矢があたってイテーッ! ってなって、いて座になったんだよ」
「へぇーっ!! そうなんだ!! すごいね!!」
という、うその話が半分以上。姉には、自分は本当の話を知っていながら、私には作り話をし、それを本気にしているところを見て楽しむという趣味がありました。けれど、なかなかの演技派で、それをあたかも本当のできごとのように話していたのです。おそるべし、姉です。
 
けれど、思うに、本自体をきっちり読み続けた人と、その内容を聞き続けた人では、本を読む速度が違います。
私は、本を読むのが遅いのです。
 
私の家には、漫画もたくさんありました。友だちから借りたものもあれば、父から買ってもらったもの、おこづかいで買ったものもありました。
「日曜日、来る?」
幼なじみが月1くらいで家に遊びに来て漫画を読む、ということをしていました。その間部屋で、2人は無言です。
「ここってさぁ……」
「そうそう、思った?」
そして、また無言。
そんな私の幼なじみ、れんこんちゃん(あだ名)は、漫画を読むのがとにかくゆっくりでした。姉が10分、私が20分で読む漫画を、40分くらいかけて読んでいました。
けれど、
「ここって、たしか3巻でのシーンが伏線になってるね!」
「えっ! ほんと!? 戻って読んでみるわ!!」
ていねいに読んでる!
と感じることがたくさんあり、一緒にいて発見も多かったのです。
 
これは、何かを学ぶときにも言えることなのかもしれません。
姉のように、短時間でいろんなものを吸収できるのもいいですが、ゆっくり考えて吸収できるというのもいい。
私自身少し、結果を急ぎすぎてしまうところがあるんですよね。せっかちなので。けれど、人それぞれのペースがある。そして、自分で決めた期日までに間に合いさえすれば、学びかたはゆっくりでもいいのだと思うのです。
 
疲れているときほど、楽して結果を得たくなります。他人と比べてしまいます。けれど私は、私よりゆっくり漫画を読んだ、れんこんちゃんの発見にはっとさせられたし、その発見は楽しそうに見えたし、もしかすると速く何かをできることで見過ごすことに気づけたりするのかもな、と思います。
1冊の本をゆっくり楽しむ。
それは、母の「もっとゆっくり!」という、掃除機をかける時の声を思い出させます。
ごみではないんですけどね。ゆっくり吸い込んで、その状況をじんわりと楽しむ、そんな心の余裕を持っていたいな、そう思います。

 
 
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2018-07-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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