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メディアグランプリ

うつ病の入り口は「○○」を失った世界ではなかろうか?


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:牟田貞治(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
ブーッブブ。感じ慣れた振動がジーパンのポケットを揺らす。
LINEメッセージが到着したらしい。可愛い女の子からだったらどんなにいいだろう……
そんな訳はないことは分かりきってはいるものの、携帯電話を手に取ってみた。
 
「小野(仮名)さんは今日、会社に来ていますか?」
 
会社の上司からのメッセージだった。悲しいくらいの現実である。
小野さんとは、自分の部署の部員で、仕事と私生活のバランスを崩して一度うつ状態になってしまった社員の1人だ。
数か月の休職を経て、会社復帰はしたものの出勤率が悪く、週に1度面接を行っている。
その毎週の面接を通して、ふと気が付いたことがあった。
 
それは小野さんには「○○」を占める心の中の割合が明らかに少ないということである。
 
「今週は2日休んでしまいましたね、やはり状態的にはあまり良くないのでしょうか」
決まり文句のような質問から、いつもの面談は始まる。
「自分では、そこまで悪いとは感じていないのですが、どうしても朝に頭痛と悪寒が重なることが多くて……」
こんなやり取りが毎週の面接の大体の中身である。私は専門的な医学の知識を持っている訳では当然ないので、出来ること言えば話をよく聞く事と現状把握くらいなのである。それでも何かの助けになればと続けている。
 
ある時、週に2、3日休むことが続いてしまったので、いつもより掘り下げて聞いてみることにした。
「最近、やはり出勤率がよくありません。何でもよいです、支離滅裂でも構いません、今感じていることを色々と聞かせてください」
普段の面接では仕事の単調さや、今の仕事の問題点、タイトなスケジュールが引き起こす会社全体の疲労感など、割と現在の問題点が上がってくることが多い。ところがこの日は全然違ったのです。
 
「普段、作業をしていてふと頭をよぎることがよくあります。それは昨年のプロジェクトでの失敗で……」
この失敗とは、もう既に1年以上経っているプロジェクトのことで、今更気にしてもしょうがないことであった。
しかし小野さんの中では、まるでつい最近のことのように語られていく。
「あの時、自分の中では理想となる仕様がまとまっていました、でも他の人の意見もあって全体的にまとめることも出来ず……もし自分がちゃんとしていたら、プロジェクトが失敗し、途中でなくなることはなかったのではと思うと、悔しくて……」さらに話は続く。
「自分の理想では○○だったんですよ、あの時もっとしっかりと発言していれば、ちゃんと伝えることが出来ていたら……」
 
あの時、もし、あの時、もし、あの時……
だた、ひたすらに過去の事や、「もし」や「たら」いわゆる過ぎ去った分岐点での「IF」の話、その「IF」から続く未来と、全く「現在」と「現実から続く未来」が全く語られることはなかったのである。
 
このとき私は気が付きました、小野さんには「現在(いま)」が殆どないのだという事に。
 
私も過去を悔んだり、もしあの時など「IF」の世界を全く想像しないかというと、そんなことは当然ない。
しかしながら、いざ仕事や勉強等に集中し始めると「現在」とその先の「近未来」のことで頭がいっぱいになる場合が多く、過去のことはほんの一部で、改善すべく未来のためにある「振り返るべく過去」くらいなものである。
 
試しに失敗した過去と、その先の「IF」で頭をいっぱいにしてみた。
……ハア、ハア、ハア……無理だ。
 
過去、現在、未来、IF、これらの占める割合にひょっとしたら改善策があるのではと思った。
そうすると、にわかながらも本やネット、テレビなどで知識を得たうつ病に関して、何かパズルのように繋がっていくのを感じた。共通のテーマは「現在(いま)」だと思った。
 
例えばアメリカなどでは、うつ病患者への対処としてカウンセリングや動物セラピーなど、いわゆる大量の薬の処方治療からは遠ざかる治療が増えてきているらしい。セラピーの中には、木につかまってみて肌の感触を感想として書き出させるなど、ユニークなものもあった。最初テレビで観たときは「ホントかよ」と思ったものだ。でもこのセラピーも動物セラピーも肌を通して「現在」の割合を少しずつ増やしているのではと今は思う。
 
もちろん、今私が書いていることは素人の推測に過ぎないので、何か心に異常を感じたら専門医に必ず行くことをお勧めする。
しかし、その手前で色々な壁にぶち当たって精神的に辛くなった時は、「現在(いま)」に意識を向けてみてはと私は思う。
 
朝起きてカーテンを開け眩しいと感じる朝日
窓を開けて感じる清々しい風と小鳥のさえずり
朝食での味噌汁の優しい香り
中には不快かもしれないが、近所を通るけたたましい電車の音
家を出たときのムワッとする夏の熱気
 
何でも良いのである。
 
悲しみ、辛さ、収まらない怒り、これらの負の感情が心に多発すると、いつの間にか「過去」と「IF」で頭がいっぱいになる危険性がある。これは非常に危ない状態だ。
そんな時、少しでも「現在(いま)」に意識を向けてみてはいかがだろうか。
針の穴ほどの光でも、打開策が見つかるかもしれない。
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2018-07-18 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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