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手相は未来を語る


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:卯月そら(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
この人にはもうすぐ転機がくる。
きっと、この会社を辞めて違う道に進むに違いない。
 
私の前に両手のひらを差し出したその人の手相には、今とは全然違う未来が描かれていた。
人の人生なのだが、こんな手相をみるとワクワクする。
この人は、これから全然違う世界に飛び込んでゆくのだ。きっと。
「何か他にやりたいことがありますよね。きっと、今の仕事とは全然違うこと」
その人は何も言わずに黙っている。多分、上司もいるこの場では肯定も否定もできないのだろう。
 
「もしも、そのやりたいことにチャレンジしようと思っているなら、お分かりだと思いますがチャンスは1回です。周りのメンバーに迷惑をかけるとか、仕事の整理がつかないとか、きっといろいろあると思います。でも、時期を逃さないでくださいね。年齢からいっても最後のチャンスです」 とだけ、伝えた。
その人は何も言わずに深くうなずいた。
 
ある日の昼時、別の部署の上司から声をかけられた。
「いやー、最近T君元気ないんだよ。何か悩みでもあるみたいだから、手相、みてあげてよ」 と。そして、上司とTさんと私の3人でお昼に行くことになったのだ。
私は、Tさんとはほとんど面識がなかった。仕事も一緒にしたことはなかったし、プライベートなことを話したこともなかった。ただ、とても忙しい部署で、精力的に働いている姿をよく目にしていた。だからてっきりこの仕事が好きなのだと勝手に思っていた。
ある意味、私の中にはTさんに関する情報はほとんどなかった。
 
私は、手相を見る。
すっと前に行ったシンガポールで、手相を見てくれた人が言ったのだ。
「手相は占いじゃない、学問だ。統計学っていう学問なんだ。だから勉強すれば誰でも見られる」 と。実際その人の職業は、占い師ではなく保険の営業だった。
 
私はそのとき、深く納得した。そうか、学問なのかと。
占いというと、どうしてもうさんくさい感じがぬぐえない。でも、学問なら規則性も法則も存在するはずだ。占いの代表、星占いだって西洋占星術という学問なのだ。
 
異国その人は、初対面で外国人の私のことについて、恐ろしくいろいろなことを言い当てた。さらに、ずっと後にわかったことだが、近い将来のこともズバリ言い当てていた。
 
その時から、私はその人個人にしか現れない人生の道しるべ、手相に興味を持った。
手のひらにその人の人生が書き込まれているなんて、なんてすごいことなんだろう。
私は、自分の手相だけでは飽き足らず、いろんな人の手相をみた。そしてその人の人生をウオッチした。
ウオッチしながら、私は思った。
たしかに、手のひらにはいろんなことが記されていると。
その人の挫折や転機や成功が。
 
ただし、人生は自分のものだ。変えることはいくらでもできる。
 
手相の通りに人生が動いていくわけではない。自分が思うように手相が描かれていくのだ。
実際、手相は変わる。
最初は、つるりとした手のひらでも、その人が実績を積み上げ、はっきりした意志をもつと強い線が描かれていく。そして、さらにその続きの人生が描かれていくのだ。
 
私は、これから先の線がくっきり描かれている手相をみるとうれしくなる。
この人は、これから未来にチャレンジしていくのだ。そのチャンスが見えているのだ。
長いチャレンジになる人もそうでない人もいる。成功しないかもしれない。それでも、何かを選び取っていくチャンスが、もしくは役目が与えられているのだ。
 
さて、何か月かたったある日、朝礼で突然Tさんが退職のあいさつに立った。
「あれ、こんなに早かったっけ」
私は驚いて、Tさんのところに向かった。
「もう、辞めちゃうんですか?」 と。
もの静かなTさんらしく、淡々と語ってくれた。
私が手相を見たとき、すでに別の道に行こうと思っていたこと。でもそれが正しい判断なのか迷っていたこと。大変な仕事から自分が抜けて残される仲間へのすまない気持ち。そして誰かに背中を押してほしかったこと。人を助ける仕事がしたかったこと。
 
ああ、私はTさんの転機に背中を押してしまったんだな……。
でも、彼の手相にはくっきりと別の道が記されていたのだ。今の仕事を続ける選択肢はなかったと思う。きっと私が手相を見ていなくても、別の道を進んだはずだ。
彼は、自分でこの道を選んだのだ。
何の道に進むかは聞かなかった。きっといつか、誰からかきけるはずだから。
 
あれから3年ほどたったある日。社内のTさんの後輩だった子に尋ねた。
「Tさんは、今どうしてるの。ちゃんと新しい仕事してるかな」
「いやー、Tさんのフェイスブック時々見てるんですが、充実してるみたいですよ。
あれは、ホントに仕事辞めて、新しい仕事について正解です。羨ましいですよ」
Tさんは、あれから若い子に混じって学校に2年通って、医学療法士になった。
そして、今は多くの人を助けているはずだ。
 
私は、心のどこかでホッとした。
彼が自分で選んだ人生とはいえ、少なからず背中を押してしまったのだ。
彼の手相が語っていた未来を、実現できて本当によかった。
 
彼の手のひらに描かれたこれから先の人生は、もう私がみることはないけれど、これからもずっとずっと続いていくのだ。

 
 
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2018-07-18 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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