メディアグランプリ

11年かけて見つけた「魔法の4時間」


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【8月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:射手座右聴き(ライティング・ゼミ朝コース)

 
 
「あの夜がなかったら、友だちこんなにできませんでした」
そんな風に言われることがある。
 
オールナイトのイベントに、81人。北海道から、大阪から、四国から、沖縄から。初めて主催したイベントにSNSを見てこれだけの人が集まってくれた。80年代に活躍した某バンドの楽曲オンリーのDJイベント。懐かしさを感じてくれたファンが全国から集結、という感じだった。今から11年前、SNS黎明期の話である。その告知パワーは並大抵ではなかった。「いままで友達と濃い話ができなかった」「同じバンドを好きな人が周りにいなかった」「解散してからずっと話ができなかった」などという人たちが一気に集まって大騒ぎになった。朝まで大きな音で楽曲を聴きながら踊り、歌った。終わってからの2次会は、朝8時くらいまで続いた。
 
さらに神風が吹いた。イベント開催を決めた直後。バンドの再結成が決まったのだ。なんといくつかの夏フェスにでるという。僕たちは、もう一人ではなかった。
SNSを駆使して、チケットを確保し、連絡を取り合い、みんなで出かけた。どこのライブに行っても、必ず友だちがいる。同じバンドのことを好きな仲間がいる。しかも、地元在住のファンもいる。ライブが終われば、みんなでオススメの店でごはん。そのあとはバンドの曲をカラオケで歌った。男女のツインボーカルだったので、みんなが歌えるという楽しみがあった。「あの夜のおかげで」と、みんなから感謝された。イベントの主催者としてこの上ない喜びだったが、
僕はそれが、ビギナーズラックであることにまだ気づいていなかった。
 
やがて、参加者から直接メッセージをもらうことがでてきた。「男性にしつこくされている」「誰々と合わない」などといったネガティブなものだった。一方でカップルができたり、離れたりもした。イベントを重ねるごとに参加者は少しずつ減っていった。特別な1日だったはずのイベントが、少しずつ日常の一コマになりつつあったのだ。少しずつ飽きられていることも感じていた。
「どうしたら、また来てもらえるんだろう」
始めたメンバーで何度も話し合った。解決策はなかなか思いつかなかった。
 
ファンのコミュニティに所属していても、来ない人はたくさんいた。
「大音量で好きなバンドの曲を聴く」ということの魅力をイメージできなかったのだ。来なければわからない。この壁は大きかった。一方で嬉しいニュースも入ってきた。
 
結婚式に呼んでもらったのだ。
「お二人は音楽イベントで知り合い……」
披露宴の司会の人が出会いのことを紹介したとき、なんだかグッときた。
 
でも、参加者は減り続けた。ライフステージが変わり始めたのだ。結婚、出産、引越し、オールナイトのイベントに参加することは難しい年代になった。さらに、僕はほかのイベントに呼ばれるようになり、このイベントのことが少しおろそかになってしまった。みんなに言われた。「他のイベントばかり頑張ってるんじゃないの?」みんな厳しいなあ。でも、頑張らないわけにはいかなかった。
 
考えて考えて出した結論は、ずばり、昼飲みだった。
 
昼から踊れるイベントにしたのだ。さらに、予定を組みやすいように、告知を3ヶ月前からにした。お子さんのいる方、遠くに引っ越した方、みんなが少しでもきやすいようにした。
 
だんだんと人が戻ってきた。さらに、初参加の人も増えてきた。
マンネリ化しつつあったイベントに新しい流れができはじめた。
 
それでも、以前のような賑わいまでは至らなかった。バンドのご本人たちも
ソロ活動に専念しはじめた。みんなが盛り上がるようなニュースがなかった。「もう限界かな」そんな風に思った時、一緒にやっている仲間の言葉がしみた。
 
「本人たちが活動していないときこそ、イベントの役割があるんじゃないかな。活動してる時は、ライブに行けばいいんだから」
 
たとえ、人が多くなくても、「あのバンドの曲が聴きたい」と思う人のためにイベントをすればいいのだ。人数ではない。忙しい世代の人たちが、年に1回でも楽しみにしてもらえるようなイベントにしよう。人数にこだわりすぎた自分の視点が少し変わった。
 
もうひとつ。自分がひいた。仲間に託すことを増やした。すると、みんなも積極的になってくれたのだ。託したら、何も言わないようにした。それぞれのSNSの告知文が変わってきた。「この曲が好き」「この歌詞が好き」等々、想いの入った文章が並んだ。
 
そして迎えた11年目の夏。スタート前からお客さんが並んでいた。「10年気になってたけど、子育て終わって、やっと来られるようになりました」「ずっと一人で聴いてたんですけど、ファンが集まるの楽しいです」初めての人、5年ぶり、10年ぶりの人、いろんな顔が並んだ。若者のイベントのような大きな動員はない。でも、時間の融通がきかない大人にとっての「魔法の4時間」を作る、というの新しい役割を担えたら。そしてバンドのことを伝えていけたら。頑張ろう。
 
 
***

この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

http://tenro-in.com/zemi/54525

天狼院書店「東京天狼院」
〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
東京天狼院への行き方詳細はこちら

天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階

天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5

【天狼院書店へのお問い合わせ】

【天狼院公式Facebookページ】
天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。



2018-07-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事