メディアグランプリ

18年ぶりのリアル君の名は。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:かなこ(ライティング・ゼミ平日コース)

「それ、うちのねーちゃんっす」
一瞬何が起きたかわからなかった。
君の名はのクライマックスくらいに心臓のドキドキが止まらなかった。
それは18年目にさかのぼる。
私には小学校を卒業すると同時に転校してしまった友達がいた。
私は山形県に住んでいたので、友達が東京に転校してしまうのは、とっても遠くへ行っていまう気がして寂しかった。
当時は携帯を持っていなかったので、メールすらできなかった。LINEなんて存在していなかった。唯一繋いでいたのは、手紙だった。1カ月に1回くらいのペースで手紙のやり取りをしていた。最初の半年くらいは、お互い楽しくて返信がすぐ来るようなやり取りだった。
転校先の学校のこと、髪を染めてる子がいること、個性的な先生がいること、部活動のこと、恋の話とか色々書いて教えてくれた。
当時の私は、東京にはディズニーランドでしか行ったことがなかったから、東京の生活がわからなかった。東京では中学生で髪を染めてる子がいるのかとすごく驚いた。
当時はプリクラを交換するのが流行っていたから、お互い交換した。
手紙に入っていたプリクラを見たときは、別人のように美人になっていて、私が知っている友達ではなくなってしまったように感じた。友達の隣にいる子は髪が茶色かった。
中学2年になる頃には、お互いそれぞれの学生生活や部活動が忙しくなってしまい、手紙のやり取りが途絶えてしまった。
友達がくれた最後の手紙には、メールアドレスが書かれていた。
友達は携帯電話を買ってもらったとうれしそうな文面で手紙に書かれていた。
でも私は、携帯もパソコンも持っていなかったから、メールする手段がなかった。
もう少しして買ってもらったらメールを送ろうと思って手紙を机の中に大切にしまっておいた。
しばらくして、高校生に入学するときに念願の携帯を買ってもらった。
東京にいる友達にメールしようと思って手紙を探したが、見つからない。
今までやり取りした手紙はあるのに、そのメールアドレスが書いてある手紙だけが見つからなかった。
とても悔しかった。もう友達と連絡を取る手段はなくなってしまったと思って、しばらく落ち込んでいた。
ある日、小学校を卒業するときに友達がくれた名刺を見つけた。そこに電話番号が書いてあったのだ。勇気を出してかけてみることにした。もしも電話番号が変わっていたら……とも思ったが、方法が1つしかなかったから、手を震わせながら電話をかけた。結果は、誰も出なかった。留守電になったけれど、怖くてメッセージを残せなかった。
私は高校卒業後、東京の大学に行くことになった。もしかしたら、どこかで会えるかも、なんて淡い期待を抱いていた。上京してその期待は裏切られた。
「人が多すぎる」毎日が地元のお祭りくらい人がいてびっくりした。
東京は地元では見たことないものばかりで、毎日楽しかった。今なら、友達からの手紙が途絶えてしまった理由がわかる気がした。東京には、手紙より楽しいこと、刺激的なものがたくさんある。
それでもやっぱり、友達に会いたいなーと思うときはあった。ふとした瞬間に「そういえばどうしてるかな?」と気になることがあるのだ。同じ小学校の同級生に聞いても、連絡先はわからなかった。
「いつか会えたらいいなー」と思っていた矢先、会社の取引先との飲み会があった。
そういう飲み会は普段はないんだけど、そのときはなぜがあった。そして参加しようと思った。いつもならそんな飲み会は断るのに、どういう訳か、行くぞ! という気持ちになっていた。その飲み会は参加者のほとんどが初対面だった。飲み会が始まり、自己紹介をした後、出身地の話になった。
1人の男性が、小学生の頃山形に住んでいたと話した。そんなことは良くある話だろうと、同じ出身地かぁくらいで聞き流していた。住んでいた町は、私と同じ小学校の学区だった。懐かしい地名だなーなんて顔を緩ませて聞いていた。男性が言った小学校の名前を聞いたときに、えっ!? と思った。私と同じ小学校だった。その男性に年齢を聞くと、私の3つ下だった。3つ下なら知ってる人はいないなー。ごめん。なんて話をしたら、男性が驚く発言をしたのだ。
「3つ上ならねーちゃんと同い年っすね」
え!? お姉ちゃんいるの?この子の苗字なんだっけ? さっき自己紹介で聞いたのに抜けてしまっていた。もう一度聞き直すと、私が探していた友達と同じ苗字だったのだ。
友達と同じ苗字、私と同級生のお姉ちゃん。
まさか!
と思った。聞くのが怖くなって躊躇したけど、言葉が先に出てしまっていた。
「もしかして、お姉ちゃんってYちゃん?」
弟である男性は驚いていた。飲み会をしている部屋の時間が一瞬止まった。
私は信じられなかった。まさか、こんな所で繋がるなんて。
私自身、すごく感動しているんだけど、涙も出ないし、顔も真顔のまま呆然としていた。
しかも、友達と私が住んでいる最寄り駅は一緒だったのだ。もしかしたら、どこかですれ違っていたかもしれない。ただお互い気づかなかっただけで。
その後、弟くんが電話で友達と話させてくれた。18年ぶりに聞いた友達の声は変わっていなかった。優しい声であの頃と同じ声だった。1週間後に友達と食事に行く約束をした。
願えばいつか叶うなんて迷信だと思っていた。でも今回のことで、確信に変わった。
願い続けるのって大事だなーと思いながら、指折り友達に会える日を数えている。
***

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2018-08-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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